251031応急処置アップデート Q and A 35 熱性けいれんへの対処は

救急の周辺

健康教室2025/01/10(2025/2月号)p64-7

応急処置アップデートQ and A

熱生けいれんへの対処は

目次

Q

昨年、本校では熱性けいれんによる救急搬送が2件ありました。どちらも初発で低学年の児童です。熱性けいれんは乳幼児に多いと捉えていたのですが、小学生でもある程度の頻度はあるのでしょうか。また、けいれん時の対応として、時間計測の他にやるべき処置方法がありましたら教えてください。

小学校の先生からのQ

A

熱性痙攣は小学校でも発症しますが非常にまれなため、発症後はてんかんを疑い精密検査を行います。通常のけいれんと異なり発熱がありますので保温もしくは冷却で体温をコントロールします。

解説

熱性痙攣とは、38度以上に発熱するときに起こる発作性疾患です。通常はバタンバタンと体を動かす痙攣を起こしますが、脱力発作や強直性発作(ひきつけ)など痙攣を起こさないタイプも存在します。髄膜炎や脳炎など他の疾患を除外した上で診断されます。

1.好発年齢(001)

生後6ヶ月から5歳までの小児に初発する発作性痙攣性疾患で、そのほとんどは生後12ヶ月から18ヶ月に初発します。多くの患児で家族内発症を認めます。

年齢は重要で、これ以外の年齢で初発の痙攣発作が起きた場合には、発熱があったとしてもてんかんなどの別の疾患を考えて精密検査を行います。質問者の2症例については、担当医師がどのような判断で熱性痙攣と診断したのか疑問が残ります。

2.症状(002)

多くはバタンバタンと体を伸ばしたり縮めたりする動きをします。数は少ないのですが脱力発作や強直性発作(ひきつけ)など痙攣を起こさないタイプも存在します。痙攣は通常5分以内に収まり、数分後には意識が回復します。またその後24時間の再発はありません。

痙攣発作が30分以上続いたり痙攣が左右対称ではない場合には、別の疾患が隠れていないか精密検査を行います。

3.対処(003)

学校で行うことは、一般的な痙攣の対処と体温管理です。痙攣の対処としては、安全なところに寝かせる、始まりと終わりの時間と痙攣のパターンを記録する、初めての痙攣なら救急車を呼ぶ、などです。体温管理は寒くて震えている場合には湯たんぽなどで加温する、全身が赤くて暑がるようなら冷却します。

4.再発率とてんかんへの移行

再発率は35%ですので1/3の患児は発熱するとまた熱性痙攣を起こします。

家族にとって最も心配なことは、熱性痙攣を起こした我が子がてんかんになるかどうかです。通常の熱性痙攣ならば、てんかんの発症リスクは2%と通常とほとんど変わらないことがわかっています。痙攣の形が通常と異なる場合や精神遅滞のある場合は10%とされています。

養護の先生が経験した症例

1.中学3年生女子。夏休み明け頃、登校中に倒れ、通行人が救急車を要請、病院に運ばれたが、特に異常なしということで、その日のうちに帰宅。その後、学校で倒れる事例が継続して起こりました。「てんかん」が疑われたため、何度も保護者に病院受診を勧めた後に、「実は『てんかん』との診断を以前受けていたと知らされました。病院に行きたくないという思いから、継続した服薬等の治療を受けていないとのことだったので、養護教諭だけではなく、学級担任、学年主任、教頭、校長からも保護者へ説諭し、改めて病院を受診していただけることとなりました。

2.中1男子。授業中に教室で虚ろな目をしてふらっと立ち上がった後に倒れ、担架で保健室に運ばれてきました。呼びかけても応答なし、口からよだれが出て、失禁もありました。顔と体を横向きに寝かせて、救急車を呼びました。病院到着直後に保護者も到着。そこで初めて彼がてんかんで薬を服用していることがわかりました。

3.特別支援学校。高2男子。ストレスから過換気を起こしやすい。授業中突然脱力し椅子から転倒。教員がとっさに身体を支え、そのまま床に寝かせました。呼吸が荒くて足を震わせて首を左右に振る動作あり。養護教諭が駆けつけた時には呼びかけで目が合うようになっていました。深呼吸で10分ほどで落ち着きました。病院の脳波検査では異常なしでした。

引用文献

MSDマニュアルプロフェッショナル版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/19:小児科/小児における神経疾患/熱性痙攣

 

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