220706今さら聞けない資機材の使い方 (104)ライフスレッド 秋田県 男鹿地区消防一部事務組合 消防本部 荒木廣太

 
  • 566読まれた回数:
基本手技

 近代消防2021/12/10  2022年1月号 p78-80

●今さら聞けない資機材の使い方 104
ライフスレッド

秋田県
男鹿地区消防一部事務組合 消防本部

荒木廣太

目次

著者

 

 

名前:荒木廣太(あらきこうだい)

所属:男鹿地区消防一部事務組合消防本部救急課主査

出身地:秋田県男鹿市

消防士拝命:平成21年4月

救急救命士合格:平成29年

趣味:スプラトゥーン2、爬虫類飼育

1はじめに

はじめまして、今回「今さら聞けない資機材の使い方」を執筆させていただきます、秋田県男鹿地区消防一部事務組合消防本部の荒木廣太と申します。

私が勤務する男鹿地区消防一部事務組合消防本部は、秋田県の西側に位置し、男鹿市、潟上市(旧天王町)、大潟村の2市1村で構成され、管轄人口は約5万人、職員数は149名、1本部、1署、6分署で組織されています。(写真1)

『来訪神:仮面、仮装の神々』としてユネスコの無形文化遺産に登録された『なまはげ』で有名な男鹿市を管轄とする当消防本部の特徴として、管内に国定公園の男鹿半島を有していることが上げられます。中心には山稜が東西に並び、北西と南面はそれぞれ段丘地となって海岸線に達し、特に西部海岸は山地がそのまま海に迫る雄大な海岸美を見ることができます。お越しの際は、ぜひ立ち寄ってみてください。(写真2)(写真3)

男鹿市には1年を通じて多くの観光客やマリンレジャーを楽しむ人が訪れます。また、かつては日本で2番目の広さを誇った湖、八郎潟(現在は八郎潟調整池)も有していることから、水難事故が多いところです。そのため平成6年に水難救助隊が発足(隊員15名)。潜水、PWC(Personal Water Craft, 水上バイク)や救助艇等による救助活動を行っています。

今回私が紹介する資機材はPWCレスキュー等で活用している「ライフスレッド」についてです。

 

001

男鹿地区消防一部事務組合消防本部の位置

002

ユネスコの無形文化遺産に登録された『なまはげ』

003

国定公園の男鹿半島

2「ライフスレッド」とは?

ライフスレッドとはPWCの船尾部デッキ部分に接続し使用する硬質発泡スチロール製の救助イカダです。海等でのPWCレスキュー時、ライフスレッドは溺者と同水面上にあり、機動性と耐久性にも優れているため、溺者へ安全且つ迅速にアプローチし、救助することが可能です。

当消防本部では、「ワフー社製ライフスレッド」を使用しています。(写真4)(写真5)

・サイズ:約1580×920×120(縦×横×厚)約15kg

・三点固定によるコントロール性を重視した接続システム

・先端部のダメージを防ぐガード付き

・水上活動時にも滑りにくいデッキ構造、転落防止のため両サイドロープ付

(ワフー社製ライフスレッド取り扱い説明書より引用)

004

ライフスレッド表面とPWCとの接続用ロープ

005

ライフスレッド裏面

3ライフスレッドの取り扱いについて

ライフスレッドは、PWCの後部にカラビナやロープ等で三点固定して使用します。PWC後部にある牽引用フックにライフスレッドのセンターロープを取り付けます。次にPWC両サイドのアイフックとライフスレッドのバンジーコードをロープで結着し、ライフスレッドの取り付け完了です。(写真6)(写真7)

<注意点>左右を固定するロープの結着がゆるいと、旋回時に左右への動きが大きくなり安定性が悪くなるため注意が必要です。

006

ライフスレッドをPWCに取り付けた状態。後ろから

007

横から

4ライフスレッドを使用した救助活動について

当消防本部では水難救助隊2名でPWCレスキューを行います。1名がPWCを操作し、もう1名が要救助者の救助にあたります。救助者が要救助者を確保した後、PWC後方から要救助者をライフスレッドへ上げます。この際、PWC操縦者も前方に気を付けながら救助者のサポートをします。救助者がライフスレッド上で要救助者をしっかりと確保した後、搬出を開始します。(写真8)

冬期間、八郎潟調整池に氷が張ると、ワカサギ釣り等での水難事故救助を想定し、氷上でライフスレッドを活用した訓練も行います。ライフスレッドの両バンジーコードにロープを結着し、救助者2名、補助者数名で救助活動を行います。救助者2名がライフスレッドを抱え要救助者に接近し、ライフスレッドに要救助者を上げます。救助者1名は上から覆いかぶさるように要救助者を確保し、もう1名の救助者は補助に入ります。補助者数名は陸地からロープを引き、要救助者を確保します。搬出中に氷が割れてしまった場合でも、ライフスレッドを活用することで落水の危険を防ぐことができます。

(写真9) (写真10) (写真11)

008

救助者が要救助者を確保した後、PWC後方から要救助者をライフスレッドへ上げる

009

氷上での訓練。要救助者に接近

010

ライフスレッドに要救助者を上げる

011

陸地からロープを引き要救助者を確保

5おわりに

今回は、「ライフスレッド」をテーマに執筆させていただき、私自身とても貴重な経験となりました。今後も「ライフスレッド」を活用することで、これまで以上にPWCレスキューの幅が広がり、迅速かつ効果的な救助活動が期待できます。

また、当消防本部では、救助資機材以外にも救急資機材や火災防御戦術等の研究を日々行い、多様化する災害に備えています。

今回紹介させていただいた資機材が、皆様の現場活動や訓練の参考になれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました