雑誌 健康教室 2022年6月号
応急処置アップデート Q and A
#3『眉毛の外側の打撲』
目次
Q
椅子から落ちて教室の床で転んで、眉毛のあたりを打撲したという生徒が来ました。意識障害や脳震盪の様子は、ありませんでした。
眉毛のあたりは視神経が通っているので、外傷性視神経症のことが頭をよぎりました。こんなときはどのような対応をしたらよいのでしょうか?
高等学校の先生からの質問
A
見えるか、見えるなら視野狭窄はないか調べます。症状は受傷直後が最も重くそれから回復してきますので、ここで異常がないのならそのまま経過観察で構いません、異常がある場合は救急車で眼科へ搬送します。
解説
(1)解剖
視神経は眼球後方から出て視神経管を通り頭蓋内へ達します。視神経管は直径3.5mm, 長さ10mmの骨の管で、外側から脳硬膜、蜘蛛膜、軟膜があり、その内側に視神経と眼動脈が走っています(001)。
視神経は視神経間の眼球側入り口で靭帯によりきつく固定されています。眼球が急激に振れることでこの固定部位に損傷が起き視力障害が起きます(002)。
(2)検査
視力障害は打撲した側の目で起きるのですが、必ず両方の目を検査するようにします。
(1)眼球の出血・異物・変形・動きを観察します(003)
少しでも変だと思えば眼科を受診させます。
(2)見えるか・ハッキリ見えるか確認します(004)
片目を塞ぎ、見える方の目で指や文字を示します。もともと眼鏡をしている生徒なら眼鏡をかけさせ、打撲前と見えかたが同じか聞きます。
(3)対光反射を確認します(005)
片目に光を当てると、両側の瞳孔が収縮します。片目が見えないと両側の瞳孔とも収縮しません。
(4)視野欠損がないか確認します(006)
片目を塞ぎ、見える方の視線を壁の構造物や先生の鼻先など一点に固定させます。養護教諭は人差し指を芋虫のように動かし、それを生徒の目の上下左右で、生徒の後方から前方へ移動させます。どの地点で指の動きが見えるか教えてもらいます。
あらかじめ自分でやってみて、正常の視野(007)や対光反射による瞳孔収縮の速度を確認しておきましょう。
こんなことがありました
目の周りの打撲、外傷は学校生活で意外と多く、対応は慎重にしています。
清掃時間となり、掃除用具箱を開けたらモップの柄が目に直撃した、友達がふざけてからんできて机にぶつけた、ドッジボールのボールがメガネにあたり、フレームで瞼が切れ出血、廊下の慣れない雑巾がけで目周囲の擦過傷などです。
挫創にしても目の周囲の受診は、すべて眼科でよいかと思い、保護者に連絡をとっています。眼球に傷や異常が無いか検査をした上で、傷の縫合も丁寧にしていただきました。
傷=外科と思っている保護者も多いです。養護教諭の立場から眼科受診をおすすめし、受診してくれたのですが、その児童が縫うのは怖い…と病院で拒否、テープ止めをしていました。完治後も瞼に傷跡がわかるぐらいに残っているのをみましたが、治療については最後は本人と保護者の選択と思っています。
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