240613_今さら聞けない資機材の使い方_127_今さら聞けないを見える化する 幡多中央消防組合消防本部四万十消防署 岡田拓也

 
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基本手技

近代消防 2022/11/11 (2023/12月号) 



今さら聞けない資機材の使い方

今さら聞けないを見える化する

目次

1.はじめに

 私は、救急救命士として主に救急活動に従事していますが、当直日(当消防組合では、消防隊、救助隊及び救急隊を兼任として運営しており)によっては、救助隊や消防隊としても出動することもあります。そのような勤務体制の消防組織も多いのではないでしょうか。救急救命士は、医療従事者として、医学的根拠をもとにした「医学」を傷病者に「医療」として提供できるよう、日々学習や訓練に励み、医学的知識・技術を研鑽する責務があります。また、救急活動だけでなく、消防活動や救助活動に関しても、地域の実情に応じ、医学的根拠と同様、アップデートをする必要があります。【今さら聞けないを見える化する】ために、私がどのような工夫を行っているのかを紹介したいと思います。

2.座学

座学は、【隙間時間を使用して学習できる】をコンセプトにYouTubeを使用し、動画の公開範囲を限定公開として動画をアップしています。動画の時間もなるだけ短くし、飽きないよう視覚にアプローチすることを心掛けています。

001はDNAR(Do Not Attempt Resusucitation, 蘇生を行わないこと)の説明をしている動画の様子です。高齢化が進み、介護老人保健施設からの心肺停止事案が増加傾向になっていることに加えて、介護老人保健施設の職員や当消防組合の職員の間で、DNARという言葉が独り歩きしている傾向があったため、DNARを理解することを主眼として、動画を作成しました。

002は、多数傷病者の活動について説明をしている動画の様子です。当管轄内には、高知市を起点に愛媛県まで続いている国道56号線があり、所々で自動車専用道路が並走しているため、多重事故の発生頻度が少なくありません。災害等による傷病者の搬送を適切に行うための知識の標準化を図るということを主眼として動画を作成しました。

003は、急流救助による浅瀬横断の手法について説明している様子です。当消防組合の管轄内には、【日本最後の清流】として有名である四万十川が流れています。夏になると観光客も多く、観光客の増加にともない、水難救助事案も発生します。水難救助訓練は、夏季を中心に実施することが多いですが、シーズンオフの期間でも、各手法について復習することができる。ということを主眼として動画を作成しました。

3.実技

JPTECによる車外救出の訓練動画も作成しています。訓練を行う前には、あらかじめ用意している座学の動画を閲覧し、知識をしっかりアウトプットできるように準備を行い、訓練に望んでもらいます。004は、動画を閲覧して訓練に望む隊員に対してレディネスの確認(学習の前提となる知識、経験及び環境などを確認すること)を行っている様子です。005は、実際に訓練を行っている様子です。実際の訓練を撮影し、他の隊員や、自分自身の活動を客観的に確認することで、新たな気づきや発見があると思います。その後、再度座学動画を閲覧することで、学習の効果は高まると考えます。

006は、NCPR(新生児蘇生法)の想定訓練を行っている様子です。座学に加え細かい手技の動画を閲覧することで、個人が隙間時間で自己研鑽が可能となり、想定訓練でも隊員同士がフォローをしながら活動ができます。

004

レディネスの確認

005

実際に訓練を行っている様子

006

新生児蘇生法の想定訓練

4.今さら聞けないを見える化

最後は、【今さら聞けないを見える化】です。アップしているYouTube動画の概要欄にテストを行うことができるURLを張り付けて、テストを行えるようにしています。Googleform(グーグルフォーム)というアプリを使用して、テストを作成し、概要欄から作成したページにべるようにしています。

007は、DNARの確認テストにおける、ある設問です。このように作成者は正答数が確認することができ、テスト受験者においても、受験後、正答と誤答をすぐにその場で確認することができます。見える化することで、次回の訓練や座学を行うための指標にもなります。

008は、アンケートの設問です。話は少し変わりますが、私は消防団事務全般を行っています。消防団員向けの動画配信や訓練の企画も行っているので、ニーズ調査を行うために、同アプリを使用して、調査を行っています。

5.おわりに

紹介できていない動画もありますが、今回紹介したものは、令和4年度に作成した種類の動画です。当直中は、事務処理を行う時間の確保も必要であり、現場活動に対する知識と技術の研鑽に費やせる時間は多くありません。また、当消防組合は、2交代制で勤務していることから、隊全員に座学を行うとなると3、4回ほど同様の座学を行わなくてはなりません。ドイツの心理学者であるエビングハウスの忘却曲線で表されるように、人は学んだことを案外忘れやすいものです。また、1度学んだことは、分かっているつもりでも実際にやってみると、上手くできなかったり、その都度疑問に思うことは多いと思います。学習と訓練を繰り返し、トライ&エラーをすることで自信が付き、決断するための覚悟が身につくと私は思っています。

 
名前:岡田拓也(おかだたくや)
所属:幡多中央消防組合・四万十消防署
出身地:高知県高知市
消防士拝命年:平成20年4月1日
救命士合格年:平成30年
趣味:読書、サーフィン、カヌー

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