月刊消防 2023/11/01, p79
月刊消防「VOICE」
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VOICE 2023/11/01
さらに質の高いドクターヘリとの連携へ
高知県におけるドクターヘリの運航開始から12年が経過した。高知県の三次医療圏から遠く離れている当消防組合(救急車で約2時間)は、運航開始当初からドクターヘリとの連携訓練を行い、救急現場での連携活動を積極的に積み重ねてきた。この積み重ねによって得られた、次なるステージへの課題をお伝えしたい。
私は運航開始から何年もの間、とにかく高度医療の早期介入を目指し、ドクターヘリとの連携活動を続けていた。つまり、緊急度や重症度が高い傷病者に、「ドクターヘリの医師をいち早く接触させることが全て」と思っていた。それを実現させるため、他隊による医師の送込みはもちろん、救急隊の現状やドクターヘリの飛行位置によって、その都度ランデブーポイントを変更するといった連携活動を行ってきた。
しかし、救急救命士として連携活動を積み重ねるうちに、あることに気づいた。それは、ドクターヘリの医師接触を優先させることで、傷病者にとって最も必要であった原因治療の開始が、遅れていた事案が存在していたことだ。例えば脳梗塞の事案、ドクターヘリをキャンセルし、隣町の二次医療機関に救急車で搬送していれば、5分も早く脳血栓溶解剤投与に至れていた。「ドクターヘリの医師をいち早く接触させることが全て」という認識は、傷病者の予後改善にブレーキをかける可能性があった。
「ドクターヘリの医師を接触させることだけを考える活動」に比べ、おのずと活動の難易度は高くなるため、救急救命士なら誰でも熟すことができるというレベルではなくなるが、これができれば傷病者の予後改善に繋がることは明白である。
当消防本部においても、救急救命士の経験や認識の違いによって活動の差が生まれているのが現状である。業務過多が囁かれる一方で、救急救命士の質の向上や認識の共有化は、口で言うほど簡単なことではないが、傷病者の予後改善にはこれを放棄するわけにはいかない。
私は今年度の指導救命士育成研修を修了し、まもなく指導救命士として認定される。今後は、より質の高いドクターヘリとの連携活動の構築に向け、その責務を全うしたい。
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