雑誌 健康教室 2023年8月号(2023/7/10発行号)p62−3
応急処置Q and A
目次
Q
養護教諭はもちろんのこと、一般教諭の方でも実践できるような、出血時の処置の基本的事項を教えていただきたいです。
A(001)
どんな職種の教員・事務員であってもやらなければならないことは以下の通りです。校内研修などで教えてください。
・心肺蘇生、特に心臓マッサージ
・AED
・止血
・窒息解除
・エピペン
解説
学校でもさまざまな疾患が発生します。ですがほとんどは症状を聞いたり様子を観察するなど、時間をかけても大丈夫なものです。質問の内容を、超緊急の処置と理解してそのコツを解説します。
1.最初に人を呼ぶ(002)
大声を出す、周りの子どもたちに誰か呼んでくるように命じる、職員室に電話するなど、人を集めることが最初の仕事です。
校外活動で、周りに全く人がいない、電話も通じないという場合は患児を安全な場所に移して自分で助けを呼びに行きます。
2.心肺蘇生(003)
患児の意識がない、息もしていないようなら心臓マッサージを行います。中学生以下なら人工呼吸もします。
コツは
・迷ったら心臓マッサージをする:息をしているかどうかわからないときは心臓マッサージをします。
・強く速く押す:講習では毎分100回5cmと習いますが、目の前に人が倒れていたらそんな数字は飛んでしまいます。なので、「強く速く」だけ考えてください。
・人工呼吸は幼稚園と小中学校では必要:高校大学は不要です。
3.AED
最も重要なのは、AEDの存在を思い出すことです。その場に人がたくさんいれば、誰かは思い出してくれます。思い出しさえすれば、あとは誰かが使ってくれます。
4,止血(004)
圧迫止血だけ教えます。血が出続けていても、とにかく押さえ続けます。四肢損傷では医者や救急隊は傷口の上流を紐で縛ることもあります。
5.窒息解除(005)
全く息のできない完全窒息なら全力で解除しなければ死んでしまいます。教科書では背中を叩く・腹部を築き上げる、の二つの方法だけ書かれていますが、思いつく全ての方法を試すこと。
6.エピペン
これも思い出すことが大切です。思い出しさえすれば救命に近づきます。患児が拒否しても押さえつけて打つこと。
養護の先生が体験した症例
私が考える養護教諭不在時の心配なこととして、「アレルギー発生時の対応」が一番に思い浮かんだ。
近年ではアレルギー持ちの児童数も増え、アレルギーの原因となる食べ物も多岐に渡る。食物アレルギーによるアナフィラキシーは生命に関わる重大なものである。そんな中、養護教諭不在の緊急時に、他教職員が適切な対応ができるのかという懸念と共に、私自身が対応したとしても適切な対応をすることができるのかという不安にも見舞われた。
それらを解消するため、まず緊急時のアレルギー対応マニュアルの作成が必要だと考えた。各アレルギー症状に応じての緊急度を記載し、その症状に応じてフローチャート形式でどのような対応が必要なのかを記載する。そうすれば、医療の知識が少ない教職員でも、児童の状態と照らし合わせて判断・対応をすることが可能となる。加えて、私自身もマニュアルに沿って判断をすることで、発症から最短の時間で対応をすることができるという効果も期待できる。学校で起きる可能性のある悲しい事故を減らすためにも、今できることを考えて実践していきたい。
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