250820救助の基本+α(100)トレンチレスキュー_駿東伊豆消防本部_岩田一希

基本手技


月刊消防 2024/12/01, vol 46(12), 通巻546, p28-32

トレンチレスキュー

目次

1 はじめに

  この度、月刊消防「救助の基本+α」の掲載記事を担当させていただくことになりました駿東伊豆消防本部沼津北消防署救助係の岩田と申します。

 今回、私が選んだテーマは「トレンチレスキュー」です。静岡県消防学校消防職員専科教育救助科第40期において、教育支援隊として実施した内容となります。実施後の学生アンケートで多くの好評をいただきましたので紹介します。

各消防本部で、様々な救助方法があるかと思いますが、レスキューサポートは高価であり、各消防本部で保有数に限りがあります。一方、木材及び単管パイプは安価で入手しやすく、レスキューサポート同様の固定ができます。よって、3つの固定方法を紹介します。1つの方法として参考にしていただけると幸いです。

2 消防本部について(写真2)

   本組合は、平成28年4月に発足し、沼津市、伊東市、伊豆市、伊豆の国市、東伊豆町、函南町及び清水町の4市3町で構成された一部事務組合であり、静岡県東部伊豆半島北側を管轄しており、首都から100kmの圏内に位置しています。

北部地域は、平坦な市街地が連続し、沼津駅を中心とする市街地が形成され、比較的人口密度が高い都市的要素を有しています。

南部地域は、中山間地が多く、山地が海岸線まで迫る急峻な地形を形成している地域が多く市街地が点在化しています。

管内の東は相模灘、西は駿河湾に面しており、伊豆半島中央の天城山を源に持つ狩野川が縦断し、世界遺産の韮山反射炉や日本屈指の温泉地を数多く持つ豊かな自然環境と温暖な気候に恵まれている地域です。

管轄面積は921.22㎢、海岸線は約130km、管轄人口は約41万人、消防職員定数609人、1本部8署3分署7出張所体制の消防組織となっています。

災害発生時の指揮命令系統を明確化するために方面体制を組織しており、管轄を第1方面から第3方面に分け、各種災害に対応しています。

  写真2 駿東伊豆消防本部の位置

3 トレンチレスキューとは

 トレンチレスキューとは、掘削等による崩落事故や土砂崩れにより生き埋めになった要救助者を、トレンチ周囲が崩れないように処置を行い、二次災害を防止しながら行う救助活動です。

4 使用資機材

 当消防本部では、土留め板の固定に救助用支柱器具(以下「レスキューサポート」という。)、4×4材及び単管パイプを使用した3つの方法を実施しています。

また、ロープを大量に使用するので必要に応じて色分けすると見分けやすくなります。今回の要領では、自己確保ロープは赤、資機材確保ロープは青、土留め板確保ロープは白、としています。

  土留め板は、24mmのコンパネを使用することで強度もあり、安定性も向上します。

  2×4材は、ウィークサイド(クラック等が有り、崩壊危険のある側)がある場合に使用します。ウィークサイドは、最小限の人員で活動するため、ストロングサイド(クラック等が無く、地盤が安定している側)から土留め板を挿入する時に、ガイドレールとして設定します。

写真3

トレンチ周囲で使用する資機材

写真4

レスキューサポートの設定で使用する資機材

写真5

4×4材の設定で使用する資機材

写真6

単管パイプの設定で使用する資機材

写真7

土留め板の挿入時にガイドレールとして使用する2×4材

5 ストレートウォールトレンチ実施要領

 (1) 共通認識

  ア 土留め板は3対設定

(1対目レスキューサポート、2対目4×4材、3対目単管パイプ)

  イ 左壁面にクラックが確認できるためウィークサイドとし、リップ(トレンチの縁)

付近での活動は最少限の人員で実施

  ウ 右壁面をストロングサイドとする。

 (2) トレンチ周囲での活動

  ア 自己確保ロープは、トレンチの深さ以上の距離を取り設定します。写真8

  イ 周囲の環境測定を実施します。環境測定と同時にリップ付近の崩落危険箇所やク

ラックの確認を実施します。写真9

ウ トレンチ周囲に進入する際は、自己確保の設定及びグランドパットの設定を徹底します。写真10

  エ グランドパット及び進入口パネルを設定します。グランドパットは、ロープや資機材がリップに当たり、崩壊を誘発する可能性があるため、リップから少し出すように設定します。グランドパットによってリップが目視できなくなるので、グランドパット上で作業する場合は、リップの位置を意識して活動します。写真11

 (3) 各土留め板の設定

ア 1対目の土留め板を、設定します。

・ストロングサイドから2×4材のガイドレールを挿入し、それに沿わせて土留め板を挿入します。写真12

    ・挿入後、ウィークサイドの隊員に確保ロープを渡し、結着します。写真13

    ・ストロングサイドは、そのままパネルを挿入します。この時、パネルがしっかりと正対していることを確認します。写真14

  イ 補強板にレスキューサポートを設定します。

・レスキューサポートは、ストロングサイドに伸長側を設定します。

・レスキューサポートを設定する際に確保ロープを取り付けますが、「I字型」と「L字型」があります。今回の手技では、「I字型」で実施します。

写真8

自己確保ロープは、トレンチの深さ以上の距離を取り設定します

写真9

周囲の環境測定を実施します

写真10

自己確保の設定及びグランドパットの設定を徹底します

写真11

グランドパット及び進入口パネルを設定します

写真12

一対目の土留め板の設定。ストロングサイドから2×4材のガイドレールを挿入後、土留め板を挿入します。

写真13

ウィークサイドの隊員に確保ロープを渡し、結着します

写真14

ストロングサイドは、そのままパネルを挿入します

写真15 I字型

写真16 L字型

    ・1本目のレスキューサポートは、土圧が一番高いトレンチの深さの下から約1/3の位置に、左右のバランスを見ながら設定します。0.5MPaで仮設定し、位置が良ければ0.8MPaで本設定します。その後、確保ロープを結着します。写真17

・2本目は、一番崩落の危険が高いトレンチの上部から約1/3の位置に設定します。設定方法は1本目と同様です。写真18

  ウ 2対目の土留め板を、設定します。

・2対目の土留め板も1対目と同様の方法で挿入します。注意することは、クリート(2×4材)の付いている土留め板をウィークサイドに設定し、シム(4×4材)の付いている土留め板はストロングサイドに設定します。写真19

  エ 進入口に、かぎ付きはしごを設定します。PPEの確認及びハンドツール(金槌、

釘、ウェッジ、距離計)を携行しトレンチ内に進入します。

  オ レスキューサポートの設定状況を確認します。触って動かなければ、更にレスキューサポートと補強板を釘で固定します。この時、抜け防止のため、釘の頭はL字に曲げ、4か所ある穴のうち少なくとも2か所以上に打ち込みます。写真20

  カ 2対目のホリゾンタルショア(4×4材)の設定を行います。距離計を使用し土留め板間の距離を測定します。写真21

    ・地上にいる隊員で、4×4材のカットを行いストラット(トレンチの幅に加工した4×4材)を作成します。写真22

    ・カットしたストラットを設定します。シム側にウェッジを差し込み、両側及び上部から金槌で打ち込み仮固定します。写真23

・その後、釘を打ち込み本設定完了となります。写真24

  キ 3対目の土留め板を、単管パイプを使用し設定します。

    ・3対目の土留め板も、これまでと同様の方法で設定します。写真25

    ・進入した隊員が、距離計で土留め板間を計測し、地上にいる隊員で単管パイプをカットします。写真26

    ・カットした単管パイプを土留め板に設定するために、ストロングサイド側をジャッキベースにします。

    ・ジャッキベースを伸長させ、固定完了となります。ジャッキベースに釘が打てる穴があれば、レスキューサポート同様に釘で固定を実施すればより安定します。写真27

  以上が、ストレートウォールトレンチ実施要領となります。写真28

写真17

1本目のレスキューサポートを設定します

写真18

2本目のレスキューサポートを設定します

写真19

2対目の土留め板も1対目と同様の方法で挿入します

写真20

レスキューサポートと補強板を釘で固定します

写真21

2対目のホリゾンタルショア(4×4材)の設定を行います

写真22

地上にいる隊員で4×4材のカットを行いストラット(トレンチの幅に加工した4×4材を作成します

写真23

カットしたストラットを設定します

写真24

釘を打ち込み本設定完了となります

写真25

3対目の土留め板も、これまでと同様の方法で設定します

写真26

進入した隊員が距離計で土留め板間を計測し、地上にいる隊員で単管パイプをカットします

写真27

ジャッキベースを伸長させ、固定完了となります

写真28

完成図

6 最後に

  トレンチレスキューには、ストレートウォールトレンチ、ディープトレンチ、L型トレンチ等があります。今回は、当消防本部で実施しているストレートウォールトレンチの基本的な手技を紹介しました。

  現場活動も多種多様化し、人命救助活動は困難の一途を辿っています。この様な時代の変化に対応するには、現場に即した状況で、様々な訓練を行い高度な専門的知識や技術の向上を図る必要があると考えます。
今回の記事が、全国の消防職員の皆様の救助活動の一助となれば幸いです。

氏名  岩田 一希(いわた いつき)
所属  駿東伊豆消防本部 沼津北消防署 救助係
出身地 静岡県駿東郡小山町
拝命年 平成26年
趣味  ランニング、サッカー
基本手技
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