250816最新救急事情(258)AEDに関する最近の論文

最新救急事情

月刊消防 2024/11/01号 通巻545号 p66-7

AEDに関する最近の論文

今回は、AEDについての論文を紹介する。

目次

CellAED(R)

持ち運ぶ機器は企業努力によって小型化される。携帯電話が良い例だ。AEDも持ち運ぶ機器の一つなのでどんどん小さく使いやすくなってきた。

CellAED(R)は世界初の使い捨てAEDである。Cellとは生物学では「細胞」を意味するが、本来は壁に囲まれた四角い空間のことである。スマートフォンが出現する前の携帯電話はcell phoneと呼ばれていた。で、そのCellAED(R)はポッキー(R)を一回り大きくしたようなサイズと形をしている。重さは300g。電池が入っているため有効期限があるが、期限内かどうかは表面に付いているLEDの光で確認できる。

放電が必要な時にはCellAED(R)を真ん中で折る。すると二つに分かれ、底面の粘着面が露出するとともにガイドアナウンスが始まる。バイスタンダーはアナウンスに従い、分かれた部品を患者の胸に貼り付けると、あとはCellAED(R)が勝手に解析と放電をしてくれる。値段は749ドル(約11万円)。通常のAEDが20万円以上するのでその半額である。

この製品はオーストラリアで開発されたもので、隣国のニュージーランドとの共同研究が行われている1)。両国では病院外心停止患者に対して登録されたボランティアがスマホの位置情報を利用してその場に駆けつけ心肺蘇生をする制度がある。今までは手ぶらで現場に行っていたのだが、この安くて小さくて軽いCellAED(R)なら携帯して行ける。そうすると今までよりずっと早く除細動できるので生存率向上に繋がるだろう、という研究である。データ収集は2024年11月まで行われる。結果が出たらこの連載で報告したい。

女性は不利

病院外心停止では女性は不利である。バイスタンダーにとっては触ることも脱がすことも躊躇するし、ぴっちりとした下着をしていたら脱がせるのに時間もかかる。ただ統計をとるといつの時代のでも女性患者は男性患者の半数なので、その点はありがたい。

2024年8月にアメリカから出た論文2)では、研究対象とした病院外心停止患者は3049例であり、そのうち女性は1011例(33.2%)であった。また、救急隊が除細動を行なった場合では、男性に比べて女性は現着から最初の除細動放電までの時間が0.81分長いとされている。

AEDをドローンで飛ばす

バイスタンダーが現場でAEDを探すより、AEDをドローンで現場に運んだ方が確実だし時間の短縮にもなる。ドローンでAEDを運ぶ、もしくはそれ自体がAEDであるドローンの開発はすでにできているので、その運用法を検討する段階になっている。

アメリカ・ノースカロライナからの論文3)では、すべての通信司令室にAEDドローンを配備することによって、覚知からAED到着までの時間は現在の8分から7分に短縮されるとしている。また到着までの時間が5分未満である割合は現在は16.5% であるがドローン配備により22.3%へ上昇する。さらに48郡全てで5分以内にAEDを届けるためにはドローンが326台必要であり、配備された後には目撃のある病院外心停止患者の生存率が34%上昇することが計算によって明らかとなった。

スウエーデンではAEDドローンの派遣を決めるのは救急コールセンターに勤める看護師になるらしい。その看護師たちにインタビューを行った結果が報告4)されている。明らかとなった重要な問題点は問題点は2つある。一つ目はドローン派遣の判断がばらつくことで、これはプロトコルを決めてトレーニングを行うことと経験が必要となる。もう一つの方が重要で、ドローンが着陸もしくはAEDを投下しても誰かがAEDを取りに行く必要があり、これによって心肺蘇生が中断される可能性があること。ピンポイント患者の脇にAEDを落とす施術が必要である。

バスにAEDを積む

AEDは公民館やコンビニなどに備え付けられている(固定AED)。だがAEDは持ち運べる。ならば路線バスに積めば、必要な時は連絡すればすぐ現場にAEDが届くようになって良いだろう、と数学的に配置モデルを計算した論文5)がある。中国からの論文で、中国のほぼ中央に位置する西安市をモデルとしている。それによると、利用可能なAEDの数が決まっている場合、ある一定数をバス積んだほうが需要ポイントを広く賄うことができる。そこからAEDの数を減らして計算すると、バスAEDの比率を高くしたほうが良いこともわかった。欠点は夜中などバスが運行していない時間はバスAEDが使えないことであり、これはダイヤ改正でバスの本数が減らされた時も同様である。

文献

1)Resusc Plus 2023 Dec; 16:100466

2)Prehosp Emerg Care 2024 Aug 27:1-10

3)JACC Adv 2024 Jun 25;3(7):101033

4)Scand J Trauma Resusc Emerg Med 2024 Aug 21;32(1):74

コメント

タイトルとURLをコピーしました