月刊消防 2025/02/01, 47(02)通巻548号 p61
幸福ホルモン
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『ドーパミンとコルチゾール』
お子さんがいらっしゃる方はこんな経験はないだろうか?我が子に勉強を教えている時、「なんでこんなことがわからないの?」、「これだけ言ってどうして気が付かないの?」とお思いになったことはないだろうか?
頭脳明晰ではなくとも、こどもが「うん、うん」と素直に聞き入れ理解しようとしてくれようものなら、親としても教え甲斐のあることなのだが、残念ながら我が家はそうではなく、「嫌々聞いている感」、「やらされている感」が言葉にせずとも表情やその態度からヒシヒシと伝わってくる。
大人になりきれない親父(私)は次第にイライラが募り、自制心が崩壊した途端、そのイライラをぶつけ、「ピー」が入ってしまいそうな言葉を浴びせては、こどもも不貞腐れる悪循環のスパイラルに突入する。こんな調子では、こどもは学習に対して前向きな気持ちになるどころか、きっと余計に嫌気が差し、学習効果としても薄れてしまう。そんな我が子とのやりとりの中で、以前読んだことのある本に書かれていたことを思い出した。
人は「楽しい」と感じると記憶力とモチベーションが上がり、「嫌々やる」と記憶力とモチベーションは大幅に低下する。ある大学の研究によると、所定の単語を記憶してもらう実験をしたところ、記憶すべき単語が「ポジティブな言葉」の再生率は高く、反対に「ネガティブな言葉」の再生率は低くなり、気分がポジティブかネガティブかによって、記憶力に差が出るというものであった。「楽しい」と、幸せ物質と呼ばれる脳内物質、ドーパミンが放出され、集中力、モチベーション、学習能力を高める作用に働く。反対に「嫌々やる」とストレスホルモンのコルチゾールが放出され、記憶力を低下させ、このホルモンの高値が続くと、記憶を司る海馬の容積が小さくなると書かれていた。
「楽しい」と感じるとモチベーションに影響することは容易に想像がつくが、記憶力にも影響を及ぼすことが科学的に証明されていることは知らなかった。こどもの学習に対して「楽しい」と感じさせることができれば、効果はテキメンなのだろう。おそらく、こどもの場合は、おもちゃをプレゼントされ歓喜に湧いているあの瞬間の顔がドーパミンMAXの状態なのだろう。
では、これを大人=仕事に置き換えてみた時はどうだろうか。仕事に対して、「楽しい」と「嫌々」のどちらが勝っているだろうか?「仕事は楽しい」とキッパリ言い切れる人は羨ましいし、とても幸せ者だと思う。この世の中、どちらかというとそんな人はごく一部の少数なのではないだろうか。
私は、救急救命士として運用を開始して今年で10年目を迎えた。近年の出動の増加に伴う労働負荷の高まりと、経験を重ねるうちに次第に「楽しい」と思えることが少なくなり、同時にモチベーションを維持することが難しいと感じていた時期があった。そのような心理状態であると、新たな発想も湧いてこず、仕事が作業化してしまっているような感覚さえあった。
この先も「楽しい」と思えることは以前よりも少ないのかもしれないが、少なくともポジティブな思考をもって仕事に臨めているかどうかはとても重要であると考えている。ポジティブシンキング(積極思考)によりプロセスが変わり、プロセスが変われば、その結果も大きく変わってくるのではないかと。
そんなことを漠然と考えながら、親父は今日もまた仕事に向かう。
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