161024意識障害だけではない糖尿病の恐さ

 
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161024意識障害だけではない糖尿病の恐さ

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 去年から健康診断で検尿をすると尿糖が出るようになった。ヘモグロビンA1Cは正常である。調べると尿糖が出る時は血糖も高いので、血糖の上昇にインスリン分泌が付いていっていないようだ。このまま加齢していけば私も糖尿病になるかも知れない。ちなみに私のBMI(body mass index)は20.0である。

 糖尿病の症状は何か。思いつくのは救急隊がブドウ糖を投与する低血糖発作か、意識障害を呈する高血糖性昏睡(糖尿病昏睡)であろう。その他には3大合併症である「網膜症」「腎症(腎不全)」「神経症」が有名だが、糖尿病の合併症はこれだけに留まらない。今回は日本内科学会雑誌から糖尿病の合併症についてピックアップして報告する。なお、断りがない限り以下に挙げる「糖尿病」とは2型(成人型。太った人がなりやすい)であり、1型(小児型)は結論が出ていない。

1.認知症

 住民全員を対象としたコフォート研究によると、糖尿病の検査(経口糖負荷試験)で陽性と判断された人を15年間追跡した結果、陰性と判断された人より血管型認知症は1.82倍、アルツハイマー型認知症は2.05倍という高率で発症したことが分かった。糖尿病の本態は小さな血管が増えたり潰れたりする病気なので血管型認知症が増えるのは分かるが、アルツハイマー型認知症も増えるのはなぜか。この疑問に対しては、アルツハイマー型認知症であっても微小血管の変性が起こっていること、脳神経におけるインスリン作用の低下が脳内の老人斑を増加させ、これが認知症の原因となるとしている。

2.うつ

 筆者はもう中高年なので、身の回りや知り合いでうつのため自殺した人が複数いる。うつは突然なるという話も聞くので人ごとではないなと感じている。

 糖尿病とうつは密接な関係がある。うつ症状が思いほど糖尿病の発症リスクが高くなり、糖尿病患者ほどうつになる可能性が高くなる。この原因は分かっていない。抗うつ剤には食欲増進作用があるのでうつ→糖尿病は薬が怪しい。その逆の糖尿病→うつについては、糖尿病に対して血糖と体重をコントロールをするとうつが良くなるので、糖尿病による生活制限がうつの発症原因になっている可能性が指摘されている。

3.がん

 がんにもなるんだぁとがっかりした人もいることだろう。具体的に数値を挙げると、発癌リスクについては糖尿病患者は健常人に比べ肝臓癌2.5倍、子宮体癌2.1倍、膵臓癌1.8倍、大腸癌1.3倍である。糖尿病は感染症になりやすくストレス耐性が低下するため、死亡リスクは男性で1.1倍、女性で1.24倍となっている。

 糖尿病患者では血糖を下げるために大量のインスリンが分泌される。このインスリンがIGF-1という受容体に結合することでがんを誘発すると考えられている。また癌細胞の増殖や転移は血糖が高くなると促進される。糖尿病治療薬であるメトホルミン(商品名メトグルコ・グリコラン)には発癌抑制作用があり、研究によればこの薬を服用すると発癌リスクは0.67倍に、眼視は0.66倍に低下する。

4.骨粗鬆症

 糖尿病患者では骨折リスクが増加する。これは1型糖尿病患者にも当てはまり、1型では6-7倍、2型では1.4-1.7倍とされる。これはインスリンが骨の生成に関与しているためである

 骨は骨芽細胞が作る。この細胞は自分の周りに骨の成分を吐き出し、最後にはその成分に埋もれて死んでしまうものである。インスリンは骨芽細胞の形成とその機能を調整しており、インスリン不足で骨量は低下する。また高血糖自体も骨芽細胞の増殖と機能を低下させる。

5.男性更年期障害

 精巣から分泌される男性ホルモンは筋肉の量と強度を保たせ、内臓脂肪を減らし、造血作用を亢進させる。性欲を起こすのも男性ホルモンである。さらに集中力を高めやリスクを取る行動を促す。加齢に伴い男性ホルモンの分泌が低下すると筋力低下や性機能低下、性欲低下をもたらし、また不安、イライラ、不眠、集中力の低下、火照り、頭痛、めまいなどの、女性の更年期障害と共通する症状を呈する。この障害は、早朝勃起現象の消失、勃起不全、性欲低下といった分かりやすい減少で把握することができる。

 男性更年期障害は糖尿病患者とメタボリック症候群患者で高頻度に見られる。さらに20代から40代で男性ホルモンが低値である人は糖尿病やメタボリック症候群になる可能性が高い。原因として、脂肪組織が出すホルモンが脳に働き男性ホルモン分泌を減少させることが考えられている。糖尿病患者で男性ホルモンが低値の場合には、男性ホルモン補充療法で糖尿病は有意に改善する。

基本は食事療法

 長生きの大敵糖尿病から脱する、もしくは糖尿病を軽くするには、食事療法が基本である。血糖は朝最初に食べた食事で急激に上昇するが、それ以降は同じ量を食べてもそれほど血糖は上昇しない。これはsecond meal phenomenon(2回目の食事の現象)と呼ばれている。糖尿病患者では朝食を摂らず朝昼兼用と夜遅い夕食をそれぞれ大量に摂ることが多いのでsecond meal phenomenon が利かず、昼食後に血糖が異常に上昇し、それが合併症を加速させるとされている。このことからも3食規則正しく摂ることが薦められている。

 では私の場合は何をすれば良いのだろう。体重をこれ以上減らしても良いことなさそうだし、朝食はしっかり摂っているし、睡眠は最低でも8時間は確保している。酒を止めれば良いのだろうか。

文献
日本内科学会雑誌 102(4), 2013


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16.10.24/8:27 AM

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