「コケた方が面白い」

 
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救急隊員日誌

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「コケた方が面白い」

2018年2月25日日曜日

 症例検討会で傍観者が異常に増えてきた。会場に50人はいるのに、手を上げて発言する人はいつも同じ人。一方、帰りの車の中では全く違った光景が繰り広げられる。「あの活動おかしいよね」「あの処置必要だったと思う?」「先生の解説、この部分わかりにくくなかった?」仲のいいもの同士、批判されることもないので自由に発言。あの場で発言できたら、みんな勉強になるのに。

 運動会での校長先生のお話。「今日一日、怪我のないように十分気をつけて頑張ってください。と昨年はお話しましたが、今年は違います。怪我の一つや二つなど恐れずに、骨の一本や二本折れても大したことはありません。治る怪我はたくさんしましょう。傷だらけの学校生活もまた、素晴らしい思い出になるでしょう。」きれいに並んでいる小学生達、カメラを構えるお父さんやお母さん。どこからかクスクス笑い声が聞こえる。これは面白い発想だなあと思った。手元の運動会パンフレットを見ると、「みなさまも傷だらけの人生を」byジェームズ・スキナーと書かれていた。ここの小学校の校長先生は、こうやって保護者に考えさせるアプローチを仕掛けてくるから面白い。早速、携帯でジェームズ・スキナーを調べて見ると、経営戦略家のようでエピソードが紹介されていた。スペインに「牛追い祭り」というかなり危険な祭りがある。日本の旅行会社が企画するのはそれを見学するツアーだが、スキナーさんは「参加ツアー」を企画する。「怪我をしたらどうするんですか?」と質問されると、「大丈夫、すぐに病院に連れて行きます。」と答える。スキナーさんの言う「傷だけの人生を」と言うのは、「事なかれ主義なんてつまらない。傍観者の人生にサヨナラを」ということである。最近は、心が傷つくのが怖くて恋愛をしようとしない若者が多いそうだ。でも、「あのとき、自分は全てを失って死のうと思ったけど、そこから立ち上がってまた恋をしたんだ」、そんな人生の方が味がある、とスキナーさん。

 大玉ころがし競争。息子が大コケして、それをきっかけにみんなコケてしまった。大玉は大きくコースアウトしレースはもうめちゃくちゃだ。弁当の時間、凹んで帰ってくるかな?と思っていたら、「ちょー面白かった」と同級生達と大笑いしながら帰ってきた。みんな体操服は泥だらけ。同級生や、今まで話したこともない上級生から「お前すごかったな」とたくさん声をかけられたらしい。キラキラの笑顔で息子は私にこう言い放った。「父さん!俺、コケてよかったわ!」

 年を取ったとき、孫からこう聞かれるかもしれない。「おじいちゃんの人生はどうだったの?」そしたら背中の傷をみせ、「この傷はな、あの時の・・・」って語れる。「おじいちゃんはこうやって生きてきたんだ」と。その逆はどうか。「おじいちゃんの人生はどうだったの?」「うん、別に何もなかったよ」「ふーん、つまんないね」

ま、何もないのも幸せの一つの形とは思うけど、あえて自分の可能性を信じて、挑戦的な人生を送ってくる方が後生に語れるものを残せるということだ。

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