060201新しい応急処置

 
  • 129読まれた回数:



060201新しい応急処置

OPSホーム>最新救急事情目次> 060201新しい応急処置

060201新しい応急処置


手技

速報+日本版 アルゴリズム 気道確保と人工呼吸 心臓マッサージと除細動 小児・乳児 応急処置 訓練・口頭指導・一般への普及

最新救急事情

心マ:呼吸=30:2 現場についたらまずCPR 心マなくして蘇生なし 変わる救命講習 新しい応急処置 日本版救急蘇生ガイドライン


 ガイドラインには日赤と共同で応急処置の勧告もある。今回はガイドライン2005特集の最終回として、応急処置で主立った変更点をお伝えする。応急処置では「危険なことはしない」のが最も大切なことである。


酸素投与は根拠なし

「応急処置で酸素を勧めるエビデンスはない。また酸素投与は他の処置を遅らせる」

 酸素の話はたった4行しかない。これだけ書けば十分な説得力があるのだろう。インターネットを見ると応急処置で積極的に酸素を投与する団体があるらしく、それを念頭に書いたとも考えられるが、はっきりしたことは分からない。日本でもJPTECでは高エネルギー事故すべてで酸素を投与するように教えている(と私は感じている)。酸素は医薬品である。しっかり観察し症例を選んで投与すべきである。


止血はガーセを重ねる

 「止血の要点は出血点に圧力を確実に長時間加えることである。手で押さえる場合には出血源にガーゼを当てる。ガーゼが血でびしょびしょになったらその上からさらにガーゼを当てて強く押さえる。ゴムバンド(エスマルヒ包帯か自転車タイアのチューブ)があればガーゼの上からぐるぐる巻きにする。駆血帯や緊縛法は四肢の筋肉と神経に障害を与えるため危険であり、特殊な状態でのみ使用が認められる。止血点の圧迫もエビデンスがない」

 拙書「救助隊員のための外傷アプローチ」とはまるで違う勧告になった。ガーゼを剥ぐことでそこにできつつあった血餅(血の固まり)も取り去ることになる。そのため一度当てたガーゼは二度と剥がさないようにするのだと思う。また、小さな出血でも多少知識のある人はすぐ中枢側を縛って外来にやってくる。それより出血源の上からゴムバンドできっちり押さえたほうが止血は容易となるし組織への悪影響も少ない。覚えておくべき方法と思われる。


傷は水道水で洗う

「汚染された傷は水道水で5分以上洗う。そのあとは抗生剤入りクリームを塗る」

 泥などで汚れた傷ならたくさんの生理食塩水とイソジンで洗いたくなるのだが、そうではないらしい。細菌の残留数は水量に反比例すると聞いたことがあるので、心おきなく大量に使える水道水が最も感染防御効果があることになる。問題は傷口に水がしみることだろう。その場合は病院ならキシロカインで表面麻酔をすればいいのだが、現場では使えないし。勧告では抗生剤クリームは三種類の抗生剤が入ったものが感染防止に優れるとしている。この点はしかし、抗生剤の耐性菌の発生を促さないか不安なところである。


火傷は冷水で冷やす

「火傷はすぐ冷水で痛みがなくなるまで冷やす。氷水は短時間なら良いが長時間は害が大きくなるので10分を限度とする」

ガイドラインには書いてはいないものの、その前段階のガイドラインワークシートには15度程度の水が組織障害も少なく推奨されていた。井戸水か春秋の水道水の温度である。また火傷に伴う水泡はそのまま清潔なもので覆うように勧告している。


感電は電源を切る

「感電している患者には触らない。まず電源を切る。電源はヒューズボックスの近くにある。街頭の電線では119番が最初。高圧電線では近づいてはいけない。電力会社を待つ」

 こう文章にすれば当たり前ながら、実際にはなかなかできないことだからガイドラインとして載っているのだろう。ある勉強会で「初めに何をするか」と質問した時も「電気を切る」と答えた人は多くはなかった。


頸部固定は手で

「頚髄損傷が疑われる症例には、頭から背骨まで一直線になるように手で頭を押さえる。(ネックカラーなどの)脊椎固定器具は使ってはいけない」

 頸椎保護をするべき症例はJPTECで教えているのと同じである。脊椎固定器具は応急処置段階では有効性が証明されていないだけではなく時に患者に害を与えるため用いてはいけない。


歯が抜けたときは牛乳に漬ける

「歯が脱臼した場合には牛乳に漬けて歯科医へ持っていく」

折れたのではなく、根本から抜けた場合の話である。歯は歯根に薄い膜を持っており、それが生きている限りは高い確率で顎骨に生着する。そのためその膜を守ることが大切である。具体的には、抜けた歯の根部は絶対触らないこと、短時間なら洗ってもいいがこすってはいけないこと、牛乳に漬けて乾燥を防ぐことが求められる。水に漬けるのは浸透圧が低く膜が破壊されるため、また濡れガーゼで包むのは膜がガーゼに擦れて傷つくため禁忌である。牛乳に漬けるのは浸透圧が血液に近く、どの家庭にでもあって比較的清潔なためである。歯科医に聞くと、最もいいのはコンタクトレンズの保存液らしい。


ヘビに噛まれたら包帯をぐるぐる

「噛まれたら毒素が広がらないように患肢を包帯でぐるぐる巻きにしたあと動かさないようにする」

 毒ヘビに噛まれたら傷口を吸うという話は間違い。包帯の固さは指が一本入るくらいにする。そうすると静脈の流れだけが止まって、毒素が広がりづらくなる。


服毒には水も牛乳もダメ

「中毒センターに電話をして指示をもらうまで何もしてはいけない」

 牛乳や水をのませて中和を図るのは動物実験では有効とされるが、ヒトでは研究がなく、さらに誤嚥で症状を悪化させることもあるので避けるべきである。活性炭で吸着させることも応急処置では行ってはならない。吐根剤ではかせることも危険なので禁止としている。


参考文献
C2005 evidence evaluation worksheets
日本蘇生協議会ガイドライン2005ダラス会議


手技

速報+日本版 アルゴリズム 気道確保と人工呼吸 心臓マッサージと除細動 小児・乳児 応急処置 訓練・口頭指導・一般への普及

最新救急事情

心マ:呼吸=30:2 現場についたらまずCPR 心マなくして蘇生なし 変わる救命講習 新しい応急処置 日本版救急蘇生ガイドライン


OPSホーム>最新救急事情目次>060201新しい応急処置


https://ops.tama.blue/

]]>

コメント

タイトルとURLをコピーしました