051004現場についたらまずCPR

 
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 ガイドライン2005(G2005)特集の2回目は、「現場についたらまずCPR」について紹介する。
 G2000では早期除細動が救命の鍵であるとして、現場についたら「まず除細動」、だめならCPRなしで3階連続としている。しかしこの「まずCPR」、実はこの最新救急事情で1999年10月号ですでに取り上げており、さらに2003年8月号にも詳しく書いた。つまりだいぶ前から知られていたことなのである。
 この原稿の執筆時点では、G2005で「現着○分以上でまずCPR」となるか、一律に「まずCPR」となるかは分からない。G2005の勧告待ちであることをお断りしておく。

「まずCPR」

 「まずCPR」が注目されたのは、1999年4月にJAMAに発表された論文がきっかけであった。アメリカ・シアトル市では、最初に到着した救命士が「まず除細動」するよう15年前からマニュアルを変更したが、生存率は逆に悪化してきた。除細動をする前にCPRを数分行うほうが転帰がいいという動物実験から、人間でも除細動の前に必ず90秒間CPRを行うことにした。その結果、生存率と神経学的転帰が向上した。特に覚知から現着まで4分以上かかった症例で顕著であった。
 2003年3月にJAMAに発表された以下の論文が今回G2005の決定に最も影響を及ぼしたようだ。病院外心室細動を起こした患者200名を、救急隊到着後ただちに除細動する除細動群96名と、最初に救急隊員が3分間のCPRを行ってから除細動を施行するCPR群に分けた。最初の除細動が成功しなかった場合には除細動群では1分間の、CPR群では3分間のCPRを行ってから再度除細動を行った。またそれぞれの群にサブグループを作成し覚知から現着まで5分以下と5分超で結果を比較した。その結果、退院まで生存した患者は除細動群で15%、CPR群では22%で有意差はなかった。入院時に自発循環が回復した割合も差はなかったし、1年生存率も差はなかった。サブグループの比較では、覚知から現着まで5分以下では上記の項目に両群で差はなかったが、5分超ではCPR群の方が除細動群より自発循環が回復しやすく、さらに退院までの生存率も高く1年生存率も高かった。また筆者らは、除細動群では覚知から現着までの時間が延びると生存率が急激に低下するのに対し、CPR群では現着の時間が延びでも生存率があまり変わらないこと、覚知から現着まで4分までは除細動群で生存率が優れているが4分を超えるとCPR群の方が生存率が高くなることを示した。
 他の研究の結果を羅列すると、通報から5分以上たった患者では、「まずCPR」が蘇生率を53%上昇させた。また生存退院率も1年生存率も改善させた。通報から4分の研究でも同様であった。逆に、通報から9分の研究では差はなかった。

動物実験でも「まずCPR」

 いまから25年前の実験では大量エピネフリンの蘇生時に「まずCPR」で心拍再開率の高いことが認められていた。それからリドカインなど蘇生薬のカクテル投与で「まずCPR」の有効性が報告され、さらに2002年には通常使用量のエピネフリンに大しても「まずCPR」が有用であると報告されるようになった。しかしながら動物実験では生存率の改善や神経学的予後の改善は見られなかった。これらの結果は、「まずCPR」によって循環血管作動薬の作用が増強されるためと考えられた。
 心室細動を起こしている心筋は正常に動いているときと同等の酸素を要求する。ところが心室細動になると循環が停止するため、重大なエネルギー枯渇がわずか数分で進行する。このエネルギー枯渇によりナトリウムやカルシウムのバランスが崩れ心筋の膜電位が乱れるため、虚血性心筋障害はさらに進行する。除細動前のCPRによって心筋に酸素を供給するとともにそれら代謝産物を洗い流し、心筋代謝に好ましい環境をつくることができる。これは動物実験の心室細動でCPR前後で心電図波形が変化することからも分かる。もっと研究が進めば、この波形の変化を「除細動準備完了」と読み取れるようになるかもしれない。

「まず除細動」と「まずCPR」の分岐点

 右に挙げた二つの論文では、覚知から4分未満に放電できれば「まず除細動」、放電まで5分かかるようなら「まずCRP」が蘇生率に優れるとしている。しかしながら、卒倒から通報までもっと長い時間を要した場合やバイスタンダーCPRがなかった場合などでは、4分で現着してもとっくに「まず除細動」の時期は過ぎているだろうし、CPRを先にやって悪い状況はほとんどないと思われる。
 「まずCPR」といってもどれくらいの時間CPRを行うべきかは明らかではない。一つの論文は1.5分、一つは3分行っている。1.5分や3分の根拠も「これくらいだといいかと思った」というレベルの話である。ラットでは10分のVFのあとで6分のCPRをしてからショックをかけている。

「まず除細動」大合唱のウラ

 「まず除細動」が大きな力を持ったのが、1995年アメリカ心臓学会が出した一般市民に対するAED使用の声明であり、1998年から始まった警察官のAED使用である。当時はAEDとそれに続くPAD(一般人が行う除細動)の驚くべき効果に世界中が湧いていた時期であり、何でもかんでも除細動、それでだめならCPRという風潮だったし、ガイドライン2000も当然その流れに乗って編集されている(「まずCPR」の論文は1999年に出ているのだが、間に合わなかったというべきか)。
 この結果を受けて他の地区でもAEDの効果を検証する論文が多く出たが、それらでシアトルに蘇生率の及ぶものはなかった。なぜシアトルだけが特別かというと、第一にシアトルは街がとても小さくまとまっていて、通報から短時間で現着できるらしい。他の論文ではシアトルより長時間かかって現着している。第二にバイスタンダーの蘇生率がとても高い。このシアトルのような環境はアメリカでも特殊であることがワークシートから読み取れる。日本でも通報から4分で救急隊が放電できるのはよほど幸運な症例だろう。

参考文献
C2005 evidence evaluation worksheets
日本蘇生協議会ガイドライン2005ダラス会議


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