060329三日間の格闘

 
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060329三日間の格闘

作)コーヒー大好き

 日頃、消防・救急・救助活動の情報を手に入れるため、何冊かの雑誌を読んでいる。でも、雑誌への投稿は、都会の大きな消防の人間が書くもので、自分のような田舎の小さな消防に勤務している奴が投稿しても取り上げられることはないだろうという固定観念を持っていた。

 そんななか、近隣の消防の方、それもうちの町とさほど変わらない規模の消防の方の投稿が雑誌に掲載された。自分がイメージしていた固定観念はあっさり覆された。
 掲載された文章を書いた人と会う機会があったので、そのことを話してみると、
「文章を書くのは苦手だったけど、書いてみると意外と面白いよ。チャンスがあったらだめもとで書いてみるといいよ。」
とのことだった。この話を聞いて、何となく自分も書いてみたいなと感じてきた。でも、雑誌へ投稿するチャンスなんて自分には、まず回ってこないだろうと、あきらめムードであった。

 しかし、雑誌への投稿のチャンスが突然自分のところへやってきた。それは、研修会でたまたま知り合った医師からの突然の電話。
「救急の○□誌の投稿依頼が自分のところに来たんだけど、書いてみないかい?」
よっしゃ、こんなチャンスなんて中々ないと思い
「やります」
と即答。
「それで内容は△○のことについてで、3日間で仕上げてくれ」
「えっ、3日間ですか?」
「無理だったら、他に人を当たってみるけど、どうする?」
葛藤があった。雑誌へ投稿する文章なんて書いたことないので、どのくらいの時間が掛かるかわからない。途中で書けませんなんて迷惑がかかるからそんな事できないし。でもこんなチャンスなんてそうないし。どうしよう?
迷った挙句、
「自分でよければ、やってみます」
書いてみることにした。

 △○についての資料をかき集めて、早速文章を書き始める。普段、文章なんて書くことがほとんどないので、なかなか筆が進まない。時間だけがどんどん過ぎていく。3日間で仕上げなければならないというのが、かなりのプレッシャーだった。行き詰まって、無理だったら早めに断らないと迷惑が掛かってしまうと、かなり弱気になっていた。文章を書き続けるか、あきらめて他の人に代わってもらうか、自分の中で迷いながら文章を書いた。
 依頼を受けた次の日、仕事が休みだったので、朝からまる1日文章を書いていた。集中力がなくなり能率が上がらない。書いた文章を読み返してみても、何が言いたいのかわからない。
 行き詰まったので、依頼してくれた医師に書いた文章を読んでもらった。帰ってきた言葉は
「こんな文章じゃ駄目だね」
の一言。予想はしていたが、かなりショックであった。
「課題を与えるから。×と□と○について書き加えてみて。今日はもう遅いので寝なさい」
とアドバイスをもらい、この日は寝ることにした。

 次の日、大事なことを忘れていた。それは、次男の入学準備の買い物であった。この日を逃すと入学式まで出かけることが出来ない。地元では売っていないものなので、出かけて買うしかなく、仕方なく家族で出かけることになった。なんてついてないんだろう、かなり落ち込みながら170キロ離れたA市へ車を走らせた。でも、やるしかない。移動している車の中、昨日もらった課題のことを頭の中で整理しながら運転した。でも、かなり不安。

 無事A市に到着し早速デパートへ行った。妻は買い物、子供と自分はゲームセンターへ直行した。子供にゲームで遊ばせておいて、自分は休憩用のテーブルと椅子のところで、運転中頭の中で整理した課題をメモ帳に書いていった。周りの人は不思議そうな顔している中、約1時間子供と妻を放ったらかしにし文章を書いた。意外に集中出来て、目標とする文字数をはるかに超える文章を書くことができた。
「これならなんとかなるだろう」
ちょっと休憩。すると、妻は買い物を終え、子供はゲームに飽きて自分のところへ集まってきた。意外に妻と子供は、時間の制限を受けずに買い物・ゲームが出来たので満足していた。自分もある程度文章が書けたので、みんな満足できた。

 帰宅してから、メモ帳に書いた文章をパソコンに入力、文章を何度も読み返し、妻に読んでもらったり、変なところを直し昨日の書いた文章とは全然違うものが出来上がった。早速この文章を依頼してくれた医師にまた読んでもらった。
「だいぶよくなったよ。これならなんとかなるね。後は、こっちでなんとかするからまかせておいて。ありがとう。」
ほぼ諦めていたのでこの一言、すごくうれしかった。

 その後、雑誌社からFAXでゲラが届き最終チェックをして、めでたく掲載されることになった。

 このことで感じたことは、『チャンスがあったら、駄目元でやってみる』やればなんとかなるものだ。『短時間でも諦めずやってみる』『集中してやれば出来る』。まさか、ゲームセンターで文章を書くとは思わなかった。それと『人との繋がりの大切さ』。偶然に参加した研修会で知り合った医師からの依頼。人との繋がりを持っていたからこその貴重な経験だった。


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