151105ビデオ喉頭鏡の評価

 
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151105ビデオ喉頭鏡の評価

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救急救命士が気管挿管の時に使うビデオ喉頭鏡。直接自分の目で見る喉頭鏡とは全く異なる、素晴らしい道具である。
今回はビデオ喉頭鏡の評価について報告する。ビデオ喉頭鏡にはいくつもの種類があるが、今回取り上げなかった論文も含めて評価は高い。

GlideScope

これはマッキントッシュ喉頭鏡とよく似た構造と操作性を持っている。喉頭鏡のブレードの先端にビデオカメラが付いていて、このカメラで声門を確認する。確認できたら専用スタイレットを入れた気管挿管チューブを口腔内に入れ、ビデオカメラの映像を頼りに気管内にチューブを進める。麻酔科医が毎日やっている気管挿管とほぼ同じ手順で挿管が出来るので戸惑いが少ない。一方で喉頭鏡とチューブを別々に入れるのは日本の救急隊が用いるビデオ喉頭鏡と比べると手間と時間の無駄に思える。

このGlideScopeについての評価がアメリカ・ピッツバーグから出ている1)。3831例の手術患者を対象にした研究である。従来型の喉頭鏡かGlideScopeを用いて、一回の試技で挿管に成功する割合を見た。こういう比較研究は患者背景を合致させる必要があるのだが、麻酔科医は挿管が難しそうな症例に好んでGlideScopeを使ってしまうため、患者背景が一致する症例は従来型群、GlideScope群とも313例ずつに留まった。これらの症例を比較すると、従来型の喉頭鏡だと1回の試技で挿管が成功するのは80.8%、これに対しGlideScopeでは93.6%が一回目の試技で挿管を成功させている。また従来型の喉頭鏡で挿管できなかった症例の99%は次にGlidScopeを用いることで挿管できた。喉頭鏡操作に伴う有害事象についても、従来型の喉頭鏡に比べGlideScopeは口腔内出血の割合が有意に少なかった。

同じような研究がもう1本出ている。ニューヨークのベスイスラエル病院の集中治療室からのものである2)。使っているのは同じGlideScopeで、従来型の喉頭鏡と比較している。挿管したのは呼吸器科もしくは集中治療室の医師である。初回の試技で無作為にGlideScopeもしくは従来型の喉頭鏡を与え、初回の試技で挿管に成功する率を求めた。その結果、成功率はGlideScopeで74%だったのに対し、従来型の喉頭鏡ではわずか40%であった。従来型喉頭鏡で挿管できなかった症例で2度目の試技にGlideScopeを用いたところ、82%がこの回で挿管できた。二つの喉頭鏡で有害事象に有意差はなかった。

初めの手術室の研究では従来の喉頭鏡でも8割以上が初回の試技で挿管を完了しているが、集中治療室では4割しか成功できていない。挿管を担当する医者の技量の差もあるだろうが、手術室は挿管にとっていかに恵まれた環境であるかも分かる。

C-MAC ビデオ喉頭鏡

こちらは関節鏡で大きなシェアを持っているStorz製。形はGlideScopeと似ている。また、GlideScopeと同様、初期型は金属製のハンドルに電気コードを取る付けることで画像を得ていたが、改良型は喉頭鏡の形をした透明なプラスチックの中に胃カメラのようなものを入れることで画像を得ている。プラスチックケースの大きさを変えることで患者の体格に対応できるし、一回ごとに捨てることもできる。

このビデオ喉頭鏡は救急現場での使用例が報告されている3)。初回の挿管は従来型の喉頭鏡で行い、それで挿管できなかった症例に対して、2回目の喉頭鏡として従来型かC-MACビデオ喉頭鏡が割り当てられた。5年間の研究期間中、1回の試技で挿管できなかった症例は460例あった。それらは2度目の試技に移っているのだが、398例(87%)は1度目と2度目は同じ救急隊員が挿管を試みている。結果として、2度目の試技でC-MACビデオ喉頭鏡を用いた82%は2度目で挿管を完了しており、同じ従来型を用いた場合は62%が完了しただけであった。救急現場でもビデオ喉頭鏡は強力な武器になることを示している。

医学生では

医学生が挿管する場合のビデオ喉頭鏡の有用性を検討した報告もある4)。ビデオ喉頭鏡の種類は書いていない。この報告では医学生相手のため患者はマランパチクラスIもしくはIIに限定している。この研究の前に学生たちは50名の患者に挿管してから研究に臨んでいる。結果は、クラスI もしくはIIという挿管の簡単な患者相手のため、初回の挿管成功率には差が出ていない。有意差が出ているのは挿管の所要時間で、ビデオ喉頭鏡が平均31.5秒要したのに対し、従来型の喉頭鏡では37.6秒と有意に時間が長かった。

優位は明らか

これ以外にも多数の論文がビデオ喉頭鏡の優位を示している。10年以上前に手術室を離れた身としては今の麻酔科医や救急医がうらやましい。以前からこのような喉頭鏡があれば、冷や汗をかく回数も、患者が苦しがる回数もずっと減っただろうと思う。

現場で挿管を試みる時も、ビデオ喉頭鏡を汎用して(たとえ心肺停止であろうとも)少ない苦痛で病院に運んであげて欲しいと思う。

文献
1)BMC Anesthesiology 2014;14:101
2)Crit Care Med 2015;43:636-41
3)Sakles JC: J Emerg Med 2014 Dec 11 Epub
4)J Anaesthesiol Clin Pharmacol l2014;30:488-91


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15.11.5/3:29 PM

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