170820_45歳からの医大生 最終回

 
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170820_45歳からの医大生 最終回

作)山いるか

春風駘蕩45歳の春。A医師をはじめ、様々な方々のおかげで無事に大学院生となり、長女と同じ快速電車で小1時間の道のりを通う。

賢明なる読者諸氏は過去のコラムをご記憶かも知れないが、山いるかはもともと革ジャンにリーゼントを好む親父ロッカーだった。しかし、大学院通学の頃には友人の目を気にする長女のために、髪を短髪にして清潔感100%の服装にリュックサックとスニーカー、完全に休日の良くできたお父さんである。

毎朝、生まれ育った街の駅を、高校時代とは反対方向に電車は進む。長女とはひとつ前の駅で、混雑する車内でハイタッチして下車し地下鉄に乗り込む。地下鉄で通学なんて未知との遭遇だが、幸い始発駅なので毎朝席に座ることができた。徐々に混みだす車内にヘッドフォンから漏れる最近の曲も、「これが世に言う迷惑行為か。」とひとりニヤニヤしながら人間観察。

気がつくと周りはスマホに釘付けで、談笑している女子高生もエッチな話題で盛り上がる男子高生もいない。スーツにネクタイの大人までスマホである。「都会だね。」とため息ついて、高校時代の電車通学を思い出してみても、弁当食べているか寝ているかの記憶しかないので、センチメンタルになんかなれないのだが、ふと向こう側の車窓に映る自分の姿を見て、白髪頭と下がった目尻にハッとして背筋を伸ばす。

大通公園の西の端で地下鉄を降り、リュックを右肩に振り上げ颯爽と地上に出る。札幌は都会だけど空気は凛としていて、毎朝、山いるかの学習意欲を刺激する。「たられば」は禁物だけど、中学校時代にこんな気持ちで勉強していたなら、もっと違う人生だったろうし、だから親って「勉強しなさい!」ってうるさいんだよなぁ〜といまさら妙に納得しながら、なにも言わないのに勉強している長女を誇らしく思いウルウルする。

桜が散って緑の季節から、札幌大通りはお祭りシーズンを迎える。それが終わると夏が訪れてビアガーデン。秋には大人気の食の祭典があり、雪が降る季節はイルミネーションと真冬には雪祭り。そして、また新しい春を迎える。

2度目の春を迎えた平成28年。山いるかは無事に修士課程を修了し、総代として壇上に上がり、修士課程を代表して学長から修了証を授与された。

18歳で世の中に失望し、世の中に支えられながら割りと好き勝手に生きてきたけど、幸い神様に見捨てられることなく、まだまだ学ぶことは多いし、人生の可能性もあるようだ。

「医学は修得するものではなく学び続けるものである。」と誰かが言っていた。かの福沢諭吉先生は「学問のススメ」で人としての道理を説いている。救急救命士法施行から25年の医学的な効果や意義を、医師主導ではなく我々が検証していかなくては救急救命士制度の発展はない。全国的に救急救命士学会も動き出しているし、修了して安堵している暇はないのだ。

いまはまだ、いつか来た道ではない道を歩き続ける、終わりなき旅の途中である。

おわり


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17.8.20/4:59 PM

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