160605ここだけの話。「朝には何かある」

 
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160605ここだけの話。「朝には何かある」

作)ウルトラマン

ここだけの話。「朝には何かある」

「人生は~、紙飛行機~?」

 今、放送中のNHK連続テレビ小説「あさが来た」のオープニングテーマが事務室奥にある食堂から聞こえてくると、もうすぐ今日の勤務も終わりだなあと思う。

 勤務交代は通常8時30分だが、私の消防署では8時15分までが出動の出番なので、厳密にいえば「あさが来た」が終わるまでは気が抜けないのだが、このテレビが始まるとホッとした気分になり、どこか気持ちが落ち着いて、ゆっくりとパソコンに向かい引き継ぎの準備をするのがいつもの風景である。

 それにしても、連続テレビ小説「あさが来た」はネーミングが見事である。

 明治の女性実業家である広岡浅子をモデルにした主人公「白岡あさ」の名前を、24時間勤務が明けて新しい一日が始まる「朝」に掛けている。時代が明治維新なので、「朝=新しい時代の到来」も意味しているのだろうが、私にとっては、勤務終わってお疲れさん!というメッセージの方が強い。

 今回は、朝ドラの話ではなく、「朝」の話である。

 ラジオ体操の歌は、「新しい朝が来た」という歌詞で始まる。確かに昨日と同じ朝を人類は一度も迎えたことはない。私の人生も同様に、朝は常に新しい一日の始まりをもたらしてきた。朝はどんな人にもやってくる。

 夜の暗闇を人生の苦難や試練と表現すると、朝は希望や好転に例えられ、太陽が顔を出す瞬間がそれを象徴している。

 一般的に夜は楽しむ時間である。飲み会は大概夜の居酒屋だし、面白いデレビ番組もほとんどが夜である。おいしい料理が出てくるのも夜である。消防署でも仕事から離れてバカな話をしたり、普段は怖い先輩がまるで中学生のようにはしゃぐのも夜だ。

 「歴史は夜作られる」というように、全国的な展開をみせた病院前外傷救護プログラムであるJPTECでさえも、広島のとある夜の居酒屋がスタートと聞く。そういうことに夜を使うことは多いに結構だ。

 だが、仕事の計画を練ったり、勉強をしたり、創作活動をするなら断然朝に限る。夜明け前の1時間は、昼間の3、4時間に匹敵するほど効果が良いことは、やっている人なら誰でも知っている。

 さらに、与えれた仕事をこなす日中は左脳と顕在意識がフル回転して現実の問題に対処しているが、目覚めてから1、2時間はぼーっとしているため、右脳と潜在意識が働きやすいらしい。

 実は、その時間に日中には一生懸命頭を捻っても出てこないようなアイデアや発想、ひらめきが難なく出てくる。いや、「降りてくる」という表現の方が適切か。運動時にひらめくことも多いらしい。勤務開けに眠くてぼーっとした頭でランニングをしていると、何かが降りてくる。

 縁あって、過去に何度かこの月刊消防に寄稿することがあったのだが、原稿はいつも夜明け前に仕上がる。日中はもっぱら論理的思考をする左脳を使って書く。途中で行き詰まると、どんなに試行錯誤しても文章が思い浮かばないので、そんな時は「朝の力」を信じてさっさと早寝する。すると、次の日の夜明け前にすらすらと文章が降りてくる。原稿だけでなく、救急講習の企画や勉強会のアイデアなど、そんなことを何度経験したか計り知れない。

 早朝の2、3時間は面白そうなテレビ番組もやっていないし、急な呼び出し以外は電話もかかってこない。集中力を発揮するゴールデンタイムなのである。

 ただ、朝には「もっと寝ていたい」という誘惑がある。消防職員の場合はこれから24時間勤務が待っているのでなおさらかも知れない。昔の人は、その誘惑に打ち勝つ為に「早起きは三文の得」といった。

 しかし、よくよく調べてみると、「三文」というのは今のお金に換算すると、90円くらいで、江戸時代でも対したお金ではなかったそうだ。つまらない芝居を「三文芝居」といい、二つ束ねても三文でしか売れない商品を「二束三文」といった。「三文判」は出来の悪い安いハンコのことで、対して価値のないものの代名詞だった。

 きっとこれらのことわざは、損得勘定の得ではなく、生き方を表す美徳の「徳」に近いのではないかと思う。

 「たったわずかな三文の小さな徳」でも、毎朝早起きを続けていると、やがて習慣となりその習慣が徳をつくるのではないか。またその習慣が思考を顕在意識から潜在意識へと換え、ひらめきを生み、鋭い判断力が養われる・・・みたいな。

 そうはいっても、やはり夜型人間の方が圧倒的に多い。でもまあそれはそれで良い。「朝の力」を知っていてもやらない人が大多数の方が、差別化が出来る。

 「朝には何かある」というのは、ここだけの話にしておこう。


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16.6.5/10:37 AM

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