2002/05/10(Vol.109)号「最終回」

 
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2002/05/10(Vol.109)号「最終回」

2002/05/10(Vol.109)号「最終回」

●麻酔科のお話

 最終回〜痛みのない生活を送るために

 半年にわたって連載してきた「麻酔科の話」も今回が最終回になります。そ
 こでこれまでのまとめとして、痛みのない生活を送るためにはどうしたらい
 いか述べてみたいと思います。
 
 私たち麻酔科が診る痛みはほとんどが老化によるものです。患者さんを診察
 していると、死ぬまでつき合わなければならない痛みが2/3はあるような
 気がします。レントゲン写真では骨が変形していたり関節がすり減っていた
 りして、若いときの労働の激しさを見る思いがします。若いときのことを嘆
 いても時間は戻ってきません。今できることを考えてください。

 肥満の人は、体重を減らすことを考えてください。長くかかって貯めた脂肪
 ですから簡単には減らないでしょうが、1kg痩せれば1kg分痛みがなく
 なります。これは下半身の痛みには特に有効で、高血圧や糖尿病にも効果が
 あります。腰の曲がってきた人は、無理に伸ばそうとせず、腰が曲がっても
 生活に不自由がない方法を考えてください。歳を取ると背骨が狭くなり、程
 度の差こそあれ腰は曲がってきます。それを無理に伸ばそうとすると背骨の
 神経が伸ばされて足が痛くなりますし、転んで骨を折る危険も高くなります。
 歩いてもつまずかないように杖を持つとか台車を押して歩くようにすれば、
 転ぶ危険がずっと減ります。適度な運動は必要です。痛いから歩かないので
 はなく、痛くても後に響かない程度の運動は必要です。運動を避けると筋肉
 が衰え歩けなくなるばかりではなく、肥満に拍車がかかってさらに痛みを悪
 化させます。これは膝でも肩でも同様です。

 痛みがひどいときには安静にしましょう。無理して動いても他人は評価して
 くれないものです。それより早く痛みを減らしてきちっと仕事に復帰した方
 がいい仕事ができます。痛み止めは我慢する必要はありません。未だに体に
 悪いからと言って痛みをこらえている人が大勢いますが、それは間違いです。
 痛くて仕事に差し支えるようなら朝一錠の、夜痛みで目が覚めるようなら寝
 る前一錠の痛み止めを飲みましょう。それだけで今までの生活が変わります。
 薬で胃が荒れるようなら坐薬もありますし、胸に貼るテープも開発されてい
 ます。麻酔科は痛みを止めるのに注射を使いますが、注射は病院に来ないと
 できない特殊な方法です。痛み止めを上手に使い自分で自分を管理しましょ
 う。

 最後に、今までと症状が変わったときには何でも医者に相談してください。
 だらだらと続く症状にも、重大な病気が隠されていることがあります。素人
 判断せず専門家の判断を仰ぐことが、痛みのない生活に限らず病気にならな
 いためにも大切なことです。

 長いことおつき合いいただいてありがとうございました。またの記事を楽し
 みにしていて下さい。

玉川 進(たまかわ すすむ)

旭川医科大学第一病理学講座


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