case33:脳動静脈奇形

 
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case33:脳動静脈奇形

35歳男性
2年前から顔面神経痛(三叉神経痛)で通院しており、その際に脳動静脈奇形を指摘されていた。
宴会の席で突然意識消失と嘔吐があったため出場を依頼した。
現症:意識はJCSでI-2。しきりに頭痛を訴えており、時折嘔吐する。顔色不良。血圧160/110、心拍数120/分。SpO2 98%. 心電図モニターではII誘導でSTの低下を認めた。


Q1:考えられる疾患は
Q2:処置の要点は


A1:くも膜下出血。動静脈奇形によるもの
A2:出血の再発を防ぐために急な体位交換は避ける。坐位にして頭部を持ち上げると脳圧が下がるため楽になる場合があるが、本人の楽な姿勢を第一に選択する


解説

MRI(写真1)で示すように小脳橋角部に巨大な動静脈奇形があり、これがくも膜下出血の原因である。

脳動静脈奇形はくも膜下出血出血の1割程度を占めるとされ、20-40歳の若い人の出血の原因として重要視されている。動静脈奇形とは動脈と静脈が編み目のような奇形血管によって繋がっているもので、それらは通常の血管のようなしっかりした構造を持っていないために簡単に破けて出血を起こす。また大きな血管の塊が拍動するために、血管塊のある場所によってけいれんを起こしたり神経痛を起こしたりと、様々な症状を呈する。治療は異常な血管塊を外科的に取り出すことが最良だが、その場所が運動神経の中枢であったり、脳の深い場所であったり、巨大であったりする場合には外科的な手術は難しく、ガンマナイフや塞栓術で対応せざるを得ない。

この患者の場合には、顔面神経痛の診断の際に巨大な脳動静脈奇形が発見された。顔面神経痛は薬によりコントロールできたこと、奇形が大きく一回の入院では済まないことから様子を見ているうちにくも膜下出血を起こしてしまった。今回のエピソードの後、脳動静脈奇形の塞栓術を3回受けたがまだ奇形を完全に塞ぐまでには至っておらず、治療方法を再検討している。

なお、II誘導でのSTの低下は交感神経の緊張によるものとされ、病的意義はない。

写真1

頭部MRI。四角で囲んだ部分が脳動静脈奇形である。ミミズのような奇形血管が確認できる。


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