case32:心内膜炎

 
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case32:心内膜炎

7歳女児

主訴:熱発、意識障害

現病歴:昨日抜歯術を受けた。本日朝より倦怠感あり、昼からは40℃を超える高熱とともに錯乱状態になったので救急出場を依頼した。

既往歴:心房中隔欠損症で生下時より経過観察中。外科手術は受けていない。

観察結果:自室で家族に付き添われて仰臥していた。意識レベルJCS1桁だがつじつまの合わないことを口走る。顔面は紅潮、悪寒があり震えている。体温40.5℃、呼吸数30回/分。血圧測定せず。脈拍130回(触診)。SpO2 98%。車内観察での胸部聴診で連続性の心雑音を聴取。


Q1:考えられる疾患は
Q2:観察と搬送時の要点は


A1:感染性心内膜炎。症状だけ見るとSpO2は正常だが肺炎の可能性もあるし、扁桃炎でも喉の痛みは別にして考えやすい。

A2:感染症+心不全と考える。感染症からはバイタルサインのチェック、特に体温、意識レベル。保温をすること。心不全からは体位の保持。


解説

感染性心内膜炎は逆流性先天性心疾患や人工弁置換術を受けた患者に発生する重篤な感染症である。性状ならば心臓内で整流となる血液の流れが、穴からの血液の吹き出しや人工弁による波動により乱流となり、そこになんらかの細菌が感染して感染血が局所にとどまるため心内膜に感染が波及する。症状の多くは初発感染創である弁膜に由来し、弁がうまく閉まらないことによる心雑音と心拍出量低下が心不全の本態である。また心臓内で血栓が容易に作られ全身に散布されることで、脳梗塞や失明の危険もある。

誘因は抜歯や簡単な外科手術、外傷が多い。抜歯により口腔内の常在菌が血液に入り、それが心臓に達することによって心内膜炎となる。心内膜炎は症状が重篤で難治、かつ弁膜が高度に破損した場合には緊急に弁置換をしなければ死亡する可能性もある。そのため逆流性先天性心疾患の患児は抜歯後に必ず抗生物質を服用するように指導される。
患児は出生時から心房中隔欠損症として経過観察をされていた。日常生活に制限はなく、普通に小学校に通っていた。怪我や抜歯後の抗生物質の内服については厳しく指導されていたのにも関わらず、今回は抜歯後に痛みが全くなかったことや両親が仕事で忙しかったことから抗生物質の服用を忘れていたらしい。幸いにも抗生物質の大量投与にて症状は消失した。

図1
感染する前の患児の胸部レントゲン写真。心房中隔欠損に特徴的な左第2弓の突出が見られる。

図2
感染する前の患児の心電図。V2誘導で右脚ブロックが見られる。


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