症例7

 
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症例

症例7

71歳男性。屋根に上って雪下ろしをしていたところ雪と一緒に地面に落下した。屋根の雪が落ちたことに気づいた妻がすぐ警察に連絡、救急隊到着時には警察と近所の住民が雪を掘って患者を捜していた。10分患者を発見した。意識レベルJCS100、瞳孔散大、呼吸12回/分、心拍数40回/分、血圧測定不能、体温測定不能。

Q1
観察は
Q2
行うべき処置は


患者は搬送途中の意識レベルJCS30, 右上下肢と左胸部の圧痛を訴えていた。

Q3
可能性のある外傷は


A1
バイタルサインのチェックをおこなう。一般の体温計では35℃以下の体温は測定不可能なので、気温を計る温度計を用いてだいたいの温度を測る。この症例ではいつ心停止が起こってもおかしくない状況であるので、頸部動脈触診と胸部視診によりバイタルサインを持続的にモニターする。

A2

屋根から落ちて雪に埋まるのは北国ではよくある事故である。死因は胸部圧迫による窒息が多い。車内収容は急がなくてはならないが、かといって乱暴に扱うことは慎まなければならない。気道確保や頸椎保護は当然である。
体温が低いことを確かめたら、CPRしながら適切な加温操作を開始する。救急車の暖房を入れ、周りを暖かくする。患者の衣服が濡れていたら脱がすか切断したうえ、乾いた暖かい毛布でくるむ。意識があるのなら毛布でくるむだけで体温は上がってくる。30℃付近では温度調節機能は低下し、25℃では消失する。そのため、電気毛布や風呂に漬けるなどの積極的な加温が必要である。加温の全経過を通して心室細動の危険性がある。特に33℃付近で不整脈が出現しやすい。心電図をモニターしつつ、心室細動に備えて除細動の用意をする。
低体温状態でも完全回復する可能性があるのであきらめてはいけない。静脈確保をしたら、できるだけ温かい輸液(できれば40℃)を急速投与する。

A3
外傷は土砂に埋まるのと同様にさまざまのパターンが考えられる。
この事例のレントゲン写真を示す。

Fig1. 左第5-8肋骨骨折・左気胸(仰臥位撮影)。肋骨骨折は椎体付着部と腋窩の2カ所で折れており、frail chestとなっていた。縦隔はやや右に寄っている。胸腔ドレナージにて気胸に対処した。肋骨骨折に対してはバストバンドで外固定を行った。

Fig2. 左橈骨遠位端骨折。

Fig 3. 下腿骨・腓骨骨折。

Fig 4. 橈骨骨折に対してギブスシーネによる整復・固定を行った。

Fig 5. しかし骨折は整復されなかったため外固定術を行った。

Fig 6. 下腿骨は髄内釘による内固定を、腓骨はキルシュナーによる骨接合術を行っている。


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