060401目で見るガイドライン2005 心臓マッサージと除細動

 
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基本手技



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060201目で見るガイドライン2005 心臓マッサージと除細動


手技

速報+日本版 アルゴリズム 気道確保と人工呼吸 心臓マッサージと除細動 小児・乳児 応急処置 訓練・口頭指導・一般への普及

最新救急事情

心マ:呼吸=30:2 現場についたらまずCPR 心マなくして蘇生なし 変わる救命講習 新しい応急処置 日本版救急蘇生ガイドライン


講師

亀山洋児

稚内地区消防事務組合 猿払支署

救急救命士


(1)心臓マッサージについて心臓マッサージの写真

心臓マッサージと工呼吸は30:2の割合で実施。(*1)

*1 従来の15:2の適応は二人で行う小児に対するCPRのみであり、成人の場合は一人法・二人法に関らず30:2で行う。心臓マッサージをする手の位置の写真

心臓マッサージをする手の位置は、傷病者の乳頭を結ぶ線の中心の胸骨の下半分である。その位置に一方の手の手根部を置き、もう一方の手を平行に重ね圧迫する(*2) 


肋骨をなぞる写真
*2 以前は肋骨縁をなぞって剣状突起を探し、その位置の一横指横を圧迫していたが、その方法は用いない。G2005では一貫して単純化を目指している                  心臓マッサージ圧迫している写真横から

心臓マッサージの押す深さは4-5cm、一分間に100回のリズムで押す。一回毎に完全に除圧してから再加圧する。心臓マッサージの加圧時間と減圧時間が等しくなるように行う。

*3 適切な心臓マッサージが行なわれれば、圧迫により心臓収縮時のピーク時動脈圧は60?80mmhgの血圧を拍出できる。CPR交替するところの写真

救助者が二人以上いる場合は、2分毎に(30:2を5サイクル毎)心臓マッサージを交替する。(*4)  

*4 救助者が心臓マッサージによる疲労を否定できるのは5分未満であり、疲労は不適切な圧迫回数や深度に結びつく可能性がある。なお、心臓マッサージの中断は最小限にすべきであり、心臓マッサージの交替は5秒以内に行なわれるように努力するべきである。気管挿管されたCPRの写真

高度な気道確保が実施されれば救助者が二人以上の場合は人工呼吸と心臓マッサージを同期させない。心臓マッサージは換気のために休止することなく絶え間ない心臓マッサージを行なう。(*5)  

*5 絶え間ない心臓マッサージは1分間に100回のリズムで行なう。心臓マッサージの中断は常に最小限にしなくてはならない。動物モデルでは中断が冠状動脈還流圧の低下に関与し、中断の延長は冠状動脈の平均還流圧低下と自発的な循環回復減少、生存率の低下と蘇生後心筋機能低下に関与している。(2)除細動について   前胸部叩打法の写真

心電図モニターで心停止を確認してもすぐに除細動器が使用できない場合は、1回だけ即座に前胸部叩打を行なっても良い(*6) 

*6 G2005では、5-40cmの高さから握り拳で前胸部を叩打すると有効な事が、いくつかの研究で示されている。また、頻脈性の不整脈も前胸部叩打法により停止することを示した観察研究もある。パッドの大きさ・位置の写真

除細動パッドは前胸部-側胸部の位置に置くべきである。その位置に貼れない場合は前後方向か心尖部と後方に置く方法もある。(*7) 

*7 乳房が大きい傷病者に対しては、左の電極パッドを左乳房の側方や尾側に置く方法もある。パッドの大きさは12cmのパッドを用いると8cmのパッドを用いた場合と比べ、除細動の成功率が高かった。4.3cmの可電極は心筋損傷を起こす能性があり有害かもしれない。除細動器を装着後もCPRの写真

発症から除細動実施までに4-5分を要した場合や発症目撃がない場合は除細動器を装着してもすぐに 解析を行なわず、2分間CPRを行なう。(*8)

*8 VF等の傷病者は発症直後は血中酸素濃度が充分なため早期除細動が有効であるが、発症後4?5分経過すると血中酸素濃度の低下等により除細動を実施してもリズムを取り戻す可能性が低いためCPRを2分間実施してから除細動を行なう。
除細動解析中の写真でJ数の説明と中断は最小限の説明

除細動は単相性であれば最初から最後まで360Jで実施。二相性であれば、150-200Jで実施。(*9) 

*9 単相性では除細動を行なうJ数を最初から最後まで変えない。二相性では2回目以降はJ数を上げても上げなくてもよい。除細動を行なう際のCPR中断についても前述の理由から最小限とし、除細動や気道確保による中断以外は10秒以内にする。CPRの写真で放電後即CPRの写真3連続放電しない

除細動を実施後はすぐにCPRを2分間実施。脈拍や波形の確認は行なわない(除細動実施後に心臓が反応して脈が戻るまでに37秒以上かかる。またCPRの中断を最小限にとどめる)(*10)

*10 G2000では初回は3回連続除細動を行なっていたが、G2005では除細動とCPRを交互に行なうこととなった。低電位心室細動の波形迷ったらCPR

心電図波形を判断する際に、波形がAsystoleか低電位のVFか判断に迷った場合は除細動を行なわずCPRを行なう。(*11) 

*11 低電位のVFは血中酸濃度の低下や心筋内のエネルギーの低下などの理由によりVFの振り幅(電位)が小さくなっており、除細動を実施しても反応して正常なリズムを取り戻す可能性は低い。

 G2005で発表された心臓マッサージと除細動に関する記述のうち、アルゴリズムに沿った形で説明できるものについては、以上のとおりである。なお、ここまでで紹介できなかった心臓マッサージと除細動に関する記述の要点を以下にまとめる。

AEDプログラム
 一般市民においてもAEDに対する訓練をうけることは、心停止傷病者の生存率を向上させるために推奨される。また、有効な対応計画が整備されているならば、心停止を目撃する可能性のある公共施設でAEDを使用することは有用であろう。その対応計画にはAED設置施設の職員に対し、ファーストレスポンダー(最初に心停止傷病者に対応する人)としての訓練や地域の救急医療システムとの連携、器材のメンテナンスなどが含まれるべきである。個人や家庭にAEDを配備する事は推奨も否定もしない。

AEDプログラムの最適化
 AEDプログラムは、AEDの機能(リズム解析と通電)、バッテリーやパッドの準備状況、実施者の行動、システム性能(通電に要した時間や結果)を最適化するべきである。(心臓マッサージや除細動について推奨される方法があっても、使用する除細動器の性能が伴わなければ推奨される方法を実践することはできず、最適化されるべきである。)

AEDのパッドと院内での使用について
 AEDの使用は院内での早期除細動を推進するうえで理にかなっている。また、粘着除細動パッドは安全で有効であり、手動除細動パドルの代替として使用できる。

心室細動に対する除細動実施エネルギーと二相性波形・単相性波形について
 複数の研究において、二相性波形による除細動は単相性波形と同等もしくは低いエネルギーでVFの停止については単相性波形と同等以上の効果があったという報告などから総合的にみて二相性波形は単相性波形に比べ、VFによる心停止において安全性・有効性ともに優れている。
 除細動の実施エネルギーについては、固定エネルギーと漸増エネルギーを比較した小規模研究が1つあるだけでどちらにも明らかな利点は見出せなかった。二相性波形による除細動についてはいずれの方法を用いてもVFの持続時間の長短にかかわらず安全で効果的にVFを停止させることができる。

除細動器データの収集等について
 心臓マッサージの圧迫回数や深さ、換気回数のデータ収集ができるように改良されたモニター付き除細動器は心停止後の処置手順や結果をモニターしたり、改善するのに役立つかもしれない。
 除細動を行なう際には火花が出るリスクを最小限にできるように警戒し、高濃度酸素の存在する状況下では除細動を行なわないことを遵守するべきである。

協力

  • 山本正典(歌登)
  • 川久保悟(歌登)
  • 炭谷貴博(中頓別)
  • 佐藤麻沙美(歌登国保)

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