玉川進:Visual News 小規模消防におけるトリアージ訓練。プレホスピタル・ケア 2007;20(5):グラビア 4-5

 
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Visual News 小規模消防におけるトリアージ訓練

旭川医科大学病理学講座腫瘍病理分野

玉川 進

 北海道の自主勉強会である「興部進歩の会OPS」では小規模消防でトリアージ訓練を行っている。

トリアージの重要性については今では全ての消防職員が理解しているはずだ。だが一体トリアージとはどこを見て何をするのだろうか。雑誌で見る訓練は東京ドームであったり中核病院であったり。トリアージの重要性は分かっていても、「人手もないし、方法も分からないし、いざやるとなると大げさになるから、いつか合同訓練の通知が来た時に考えるか」となるのは自然の流れであろう。こうした疑問や感想を一掃し、トリアージとはただ「目の前の傷病者を観察すること」であることを身をもって理解してもらうことが訓練の目的である。

行動目標は次の3つである。
1 全身観察を行い、傷病者の重症度、緊急度を評価できる。
2 緊急度に応じてトリアージできる。
3 トリアージタッグへの記載、処理ができる。


説明をするコーディネーターの大島基靖
搬送トリアージ開始前に指揮をする幹事の草薙勇
第一回目:留萌管内苫前町(図1、2) 勉強会実施の半年前には札幌消防の大島基靖をコーディネーターに決定し、勉強会幹事である草薙勇との間で綿密な計画を練った。なお大島はこれ以降全ての訓練を指揮している。参加者は50名であった。潤沢な時間も相まって、START法から搬送病院の決定まで、消防職員が行うであろうトリアージの全てを体験できた充実した勉強会であった。

課題としては全身観察に比べてSTART法の習得が劣っていることであった。


トリアージポストでのトリアージ。説明は幹事の今井義幸
現場を想定した総合トリアージ。6人の傷病者を二つの班でトリアージしていくもの
第二回:北見市常呂町(図3、4) 今井義幸幹事の元に34名が参加した。この勉強会では3人で1グループとし、指導者は二つのグループを一緒に見てアドバイスを行うことにした。内容は第一回目とほぼ同じである。見学を極力廃し、全ての時間汗をかき続けるように計画した。スタート法は事前に暗記してもらったが忘れる参加者が多かった。全身観察には時間を割きトリアージの基本を理解してもらうように努め、これは成功したように思える。

だが参加した医師からトリアージタック記載の不備を多く指摘されたことは次回への課題となった。


説明する古谷裕一幹事
全身観察をする看護師とタックに記載する保健師
第三回:宗谷管内中頓別町(図5、6) 古谷裕一幹事の元に26名が参加した。今までの2回と異なるのは、医師が5名、看護師が11名と医療従事者の方が多いことである。この会では特にトリアージタックの記載漏れがないよう、時間を設けてタックの記載練習をした。スタート法は暗記せずにフローチャートを見ながら実施した。その後は第2回と同じく誰一人として見学時間がないよう全身観察の訓練に費やした。医療従事者が多いことでトリアージはかつてないほどスムーズに進んだ

一方現場を知らない参加者が多いことから、化粧を施した模擬患者で現場を疑似体験してもらう必要も感じた。

一連の勉強会で私たちは「トリアージ=観察」であることを強調してきた。また床に誰かを寝かせるだけで訓練は可能であることも示した。全身観察と聞けばJPTECを受講していない消防職員は後込みするかもしれない。しかしJPTECに無縁な看護師でも自分で手順を決めることによって隙のない全身観察をしている。看護師たちにとってはトリアージは普段の仕事の延長に過ぎないようである。それに対して消防職員は必ずどこかで手が止まる。看護師並みにトリアージをこなすためには、目の前の一例一例を大切にすること、それに不断の訓練が必要だろう。

自主勉強会は所属を越えて優秀な人材から教えを請い互いに学ぶ場として優れている。トリアージ訓練に限らずこれからも各地で勉強会を開催する予定である。


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07.10.6/5:09 PM





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