120602実践ガイドライン2010(7)AED

 
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実践ガイドライン2010

第7回

AED

イラストで覚える救命処置と応急手当

2012/6/15近代消防社から発売

税込み315円

講師

渡辺光司 わたなべこうじ

watanabe.jpg

所属:稚内(わっかない)地区消防事務組合消防署猿払(さるふつ)支署

出身:北海道宗谷(そうや)郡猿払村(さるふつむら)
消防士拝命:平成6年4月
趣味読書・映画鑑賞・ランニング・登山・温泉

はじめに

2010年10月に発表されたAHAガイドライン2010をガイドライン2005と比較して、変更点について解説していく連載シリーズです。

私が担当させていただくのはAED(自動体外式除細動器)についてです。AEDは、心臓が致死的不整脈である心室細動(VF)無脈性心室頻拍(pulselessVT)により痙攣して全身に血液を流すポンプ機能を失った心臓に対して、電気ショックを行い正常なリズムに戻すための医療機器です。

2004年7月より医療従事者ではない一般市民でも使用できるようになり、病院や診療所、救急車はもちろんのこと、空港、駅、学校、公共施設など多く人が集まるところを中心に設置されていますので、目にする機会も増えていると感じます。

心停止や窒息という生命の危機的状況に陥った傷病者を、救命し社会復帰に導くためには「救命の連鎖」と呼ばれる4つの要素が必要です。

4つの要素とは…
(1)心停止の予防
(2)早期認識と通報
(3)一次救命処置(CPRとAED)
(4)二次救命処置と心拍再開後の集中治療

上記4つの要素項目で一次救命処置(BLS)の中に位置づけられているのがAEDです。

AEDについての大きな変更点は、小児用パッドの年齢上限が7~8歳であったものが未就学児(おおよそ6歳)に変更したことと、医療用埋め込み器具がある場合は以前は2-3cm離すとしていたものが「避けて貼付する」となったことがあります。アメリカなどでは乳児(1歳未満)にもAEDが使えますが、我が国においては未承認のため使用できませんのでご注意ください。

ガイドライン2005と変更点があまりないので知識の再確認の意味を込めて解説していきます。

解説

1. 小児の年齢上限の変更

ガイドライン2005の7~8歳をガイドライン2010では未就学児(おおよそ6歳)に変更しています。

7~8歳は小学校1年生から3年生までに相当するので、パッドの装着に関して混乱を防ぐ意味を込め、また現場活動の効率化を考慮して小児用パッドの年齢上限を未就学児(おおよそ6歳)と変更しているのです。

2. AEDの電源タイプは

AEDのタイプは製造するメーカーにより多少違いはありますが、一般市民でも容易に操作できる仕様になっています。

AED本体の上の蓋を開くことにより電源の入るタイプ、また電源ボタンを押すことにより電源の入るタイプとがあります。

AED本体の電源が入ることにより、音声が流れますで、その音声の指示に従って操作を実施します。

3. AEDを装着するタイミング

AEDを装着するタイミングは、病院内や救急隊以外ではすぐに装着できる場所にAEDがないのでCPRを開始し、AEDが到着したら速やかに装着します。

4. AEDのパッド装着前の確認

有効な電気ショックを実施するために以下に示すことを行ってください。

・上半身がぬれている場合はタオルなどで拭き取る(図1)。
・水たまりに患者の身体が入っている場合は移動する。
・雨の降っている屋外の場合は屋内に移動する。
→濡れている場合は漏電と同じ状況となり有効な電気ショックが行えない。

・体毛(胸毛)などは処理する(図2)。

・薬などが塗られている場合は拭き取り、貼られている場合は取り外す(図3)。
→体毛や薬を処理しないとパッドを装着しても密着できないので正確に解析ができない。

・アクセサリー(ネックレス等)は取り外す(図4)。
→貴金属などのアクセサリーを身につけていると漏電と同じ状況となり貴金属を身につけている部位の皮膚が火傷のような痕をつくることとなる。

・磁力の多く発生する場所、特にパチンコ店などでは正常にAEDが作動しない可能性があるので屋外等に移動する。
→磁力の多く発生する場所では誤作動を生じやすい。

5. パッドの装着部位

 パッドの装着部位は、右前胸部と左側胸部です(図5)。

 容認できる他の部位としては前胸部(図6)と背面(図7)です。

成人では2つのパッドの距離が近すぎると心臓に電気が伝わりません。また女性では乳房にバッドを装着すると電気抵抗が増加します。したがってパッドの距離を保つこと。女性の場合は乳房を避けて装着することが大切です。

未就学の小児に対しては、エネルギー減衰機能付きの小児用パッドを用いまず。小児用パッドを用意することができない場合は、成人用パッドで代用できます。小児に成人用パッドを代用する場合、身体が小さいのでパッドが重なり合わないように注意します。必要に応じて前胸部と背面の装着も考えましょう。

6. 電気ショックとCPRの再開

 AEDのパッドを装着すると電気ショックが必要か自動的に解析が開始されます。AEDが解析をしている時は、患者に触れないようにします(写真8)。

これは患者に触れることによって正確な解析結果を得られないためだからです。電気ショックが必要な場合は、音声メッセージに従い、ショックボタンを押して、電気ショックを行います。電気ショック後は脈拍の確認をすることなく、すぐに胸骨圧迫からのCPRを再開します。これは電気ショック後に心拍動が回復することはまれであり、心臓が正常なリズムとなる患者は25~40パーセントにすぎないためです。

その後はCPRを継続し、2分毎にAEDが自動的に電気ショックが必要か解析をする。したがってCPRを2分間実施⇒AEDによる自動解析⇒必要であれば電気ショックの連続となります。

解析した結果、電気ショックが必要のない場合は、胸骨圧迫からのCPRの再開となります。CPRを2分間実施⇒AEDによる自動解析⇒CPRを2分間実施の連続となります。

7. 特別な状況:植込み型除細動器(ICD)・ペースメーカー

 前胸部にICDやペースメーカーを植え込まれている傷病者に対する電気ショックは、パッドがICDやペースメーカーの本体部分に重ならないように貼ります(写真9)。

最後に

2004年7月から一般市民もAEDを使用することが、できるようになってから7年が経過しました。世間に多く普及して見られるきっかけとなったのが愛知万博であったと記憶しています。万博が終わった後に会場に設置していたAEDを無償で譲渡しますという報道を見た時は、100個以上あるAEDの行先はどこなんだろうと思ったほどです。

駅やスポーツ施設など多く見られるようになったAEDですが、AEDを使える人を増やすことが改めて大事だと考えています。そのためにも普通救命講習の受講者を増やしていくことが大切ですね。


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12.6.8/10:59 PM

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