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衣類の上からの血圧の測定について〜タオル等を利用したコントロールスタディー



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AEMLデータページから引っ越してきました

HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします


研究論文

衣類の上からの血圧の測定について〜タオル等を利用したコントロールスタディー

旭川市消防本部北消防署永山出張所:著者連絡先:〒079−8412北海道旭川市永山2条17丁目
   鈴木晶・児島広勝・杉浦康裕
旭川厚生病院麻酔料
   玉川進

 はじめに

 血圧測定は、救急現場において傷病者の循環動態を把握し重症度を判断する重要な指標の一つである。そのため救急現場から医師引き継ぎまでの間、継続的に測定を行い経時的変化を把握することが重要である。

 冬など傷病者は防寒のために厚手のコートをはじめ、衣類を重ね着している場合が多い。血圧測定時には衣類を脱がすため時間を要し、また体位変換を行うため傷病者に苦痛を与えたり、さらには血圧測定自体が困難な例もあった。また、やむを得なく衣類の上からマンシェットを巻き血圧測定を行った場合でも、病院内で測定した数値と比較し差異が認められた症例も経験している。

 斉藤ら1)は衣類の上からの血圧測定の有用性を報告している。しかし彼らの研究は衣類がばらばらで例数も少なく、再現性に欠けると言わざるを得ない。今回私たちは3種類の布製品を条件を変えて用い、その上にマンシェットを巻き測定した結果について検討した。

対象と方法 本研究は旭川厚生病院において、救急救命士生涯実習時に行った。 医師から説明を受け同意した一般病棟入院患者10名と健常者4名の計14名に対し測定した
(表1)。
   表1 測定対象者背景
   人数
   男:女
   年 齢
   平均(最低〜最高)
    14
   10:4
    55(34〜78)

 血圧計は救急現場で使用しているアネロイド式ポケットタイプ(マンシェット幅13cm)を用い聴診法で測定した。体位は仰臥位とし、5分間安静ののちに測定を開始した。

 はじめに裸腕上腕部に直接マンシェットを巻き、血圧を測定した。次に上腕部にストッキネット(メリヤス編みチューブ包帯)を3枚重ね、その上からマンシェットを巻いて測定した。さらにタオルは1枚、2枚、3枚、4枚を重ねそれぞれを測定し、最後にボアシーツを巻いて測定した(図1・2)。またストッキネット、タオル、ボアシーツのそれぞれの厚さをノギスで測定し(図3)、さらに一般的な衣類の厚さも同様に測定し比較検討した。

 統計処理は裸腕の測定数値に対する布の上からの測定数値をpaired t testを用いて比較し、P<0.05を有意差ありとした。また累積度数分布法により裸腕の測定数値の95%信頼区間を求め、その区間と布の上からの測定数値を比較した。

結果 それぞれの条件での測定数値を図4、5に示 す。腕に布を巻くと測定数値は有意に高くなり その変化は布の厚さに比例した。しかしボアシ ーツの場合はタオル3枚の場合よりも厚さは薄 いのに(表2)、測定数値は一番上昇した。ま た、測定不能例も1例あった。裸腕の測定数値 の95%信頼区間にはタオル3枚までの平均値 が入っていた(図6、7)。

考察 血圧測定時の留意事項は、1傷病者の腕の太さに適したマンシェットを選定すること2裸腕に巻くこと3シャツ等のまくり上げにより上腕動脈が圧迫されると正確な測定ができないので、原則として脱衣のうえマンシェットを巻くこととされている2)。また、マンシェットをゆるく巻いたり幅の狭いマンシェットを使用すると血圧測定値は高くなるとされている3)。

 衣類の上からマンシェットを巻くということは、肌とマンシェットの間にクッションとなるものを介在することとなりマンシェットをゆるく巻いた状態と同様になる。また、腕周も太くなり幅の狭いマンシェットを使用した状態と同様になり、血圧が高く測定されたものと思われた。

 最高血圧、最低血圧ともストッキネット以外は裸腕より有意に測定数値が高くなった。しかし、タオル3枚の場合までは平均値が95%信頼区間に入っており、最大限3枚の場合までは臨床上許容できる測定結果が得られる。また、今回の測定結果のうち最高血圧の平均値で比較した場合、タオル3枚の測定数値から約4%(約5mmHg)割り引くことにより裸腕での測定数値が推定できる。このことから実際に着衣した状態を想定し布の厚さだけから比較してみると、ポロシャツ、トレーナー、スタジアム・ジャンパーの組合わせでは厚さは2.9mmとなり(表3)、タオル3枚の場合より薄く、割り引く数値も少なくなり信頼できる測定結果が得られることになる。

 しかし、ボアシーツの場合は厚さは同じ2.9mmであるが、数値の上昇が大きく95%信頼区間に入っていない。このことは、含気性に富みクッション性が高い素材の性質によるものと考えられた。タオル3枚の場合と同様に最高血圧の平均値で比較した場合、ボアシーツの場合の測定数値から約10%(約13mmHg)を割り引くことにより裸腕での測定数値が推定できる可能性がある。しかし、数値の上昇が大きいことや測定困難例もあったことから、実際の現場での測定や数値の推定には信頼性に疑問が残る。ボアシーツと同様の性質・素材を持つ裏ボア付きコートやダウンジャケット、毛糸手編みセーター等を着用している場合は信頼できる数値が得られなかったり、測定困難となる可能性が高いと言える。このような場合でもすべての衣類を脱がせる必要はなく、これらのコート類だけを脱がせることによって許容できる測定数値が得られる。

結論衣の上からの血圧測定は、1タオル3枚と同程度の厚さと材質であれば測定数値は裸腕と近似し、その差は約4%である。厚手の防寒コートを着ている場合はコートだけを脱がせて測定する。【文献】
1)斉藤広幸,加賀谷克則,円山啓司衣類の上からの血圧測定の可能性.プレホスピタル・ケア1995;8(2):34−36.
2)救急技術研究会:救急資器材の取扱要領.東京消防庁救急部.改訂救急資器材取扱マニュアル.東京法令出版,東京,1994,PP42−44.
3)安田和弘,大谷篤,吉田竜介:観察.安田和弘.ステップアップ救急救命士国家試験対策.へるす出版,東京,1995,P82.


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06.10.8/11:33 AM

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