190220 今さら聞けない資機材の使い方(70)結紮の基礎

 
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基本手技

近代消防 2019年3月号 p114-8

今さら聞けない資機材の使い方
結紮の基礎

はじめまして、島根県大田市消防本部大田消防署三瓶出張所の山根貴朗と申します。よろしくお願いいたします。
島根県大田市は、島根県のほぼ中央部に位置し、日本海に面する面積435.71㎢、人口約3万5000人の地域です。世界遺産の石見銀山遺跡や国立公園三瓶山、温泉津温泉、仁摩サンドミュージアム等特色ある観光資源を有しており、年間100万人以上の観光客が訪れています。
近年カーンマントルロープを導入している救助隊も多いですが、救助隊ではない隊員からは「取り扱ったことがないから使用できない」といった声を耳にします。そこで今回は消防士の基本である三つ打ちロープを使用した基本結索について記載したいと思います。

目次

 1、結索の基本

ロープは結索をすることにより役立つ道具です。あらゆる場面で目的にあった結索が早く正確に出来なければなりません。結索の基本は次の通りです。
・目的に合った結索の選択
・早く、正確に、きれいに結ぶ。
・作業後にロープを容易に解くことが出来る。
この基本は、3つ打ちロープだけでなく近年よく使われているカーンマントルロープでも言えます。

 2、結索の要素

結索はいくつかの要素があり、それらを組み合わせることにより結索を作成します。

・曲げ(バイト) 写真1

・輪 (ループ) 写真2

・結び(ヒッチ・ノット) 写真3

・一巻(ターン) 写真4

・二巻(ラウンドターン) 写真5

 

 

3、結索の種類

 

結索は、その目的・働き・形から次のように分類されます。

分類 結索の名称 用途

結合(ベンド)
本結び
ひとえつなぎ
ふたえつなぎ
ロープの両端又は2本のロープを結ぶ。
結節(ノット) ひと結び
とめ結び

8の字結び(写真6)

節結び(写真7)

フューラー結び(写真8)

ちょう結び(写真9)

 

二重もやい結び

三重もやい結び

半結び

ロープの端又は中間に結ぶこぶ、結び輪をつくる。
結着(ヒッチ)

巻結び(半結びなし)(写真10)

もやい結び

コイル巻きもやい結び(写真11)

ふた回りふた結び(写真12)

錨結び(写真13)

プルージック結び

ロープを他の物に縛り付ける。

 

4、結索の確認

結索をしたときは必ず出来具合を確認します。

・結索の整理(ドレスアップ)

不用意にロープが交差している場合や流れが悪い場合(写真14)はきれいに整え(写真15)、同時にきちんと締めて緩みを取り除きます。
ロープの流れが悪いと強度が低下するため、きれいに整えることにより本来の強度を保つことができます。

・端末の処理

結索時は、ロープの結索性能の大小にかかわらず、解け防止の結索を作ることが原則です。
結索の解け防止に使う結索は半結びが基本ですが、その他にひと結び(写真16)・とめ結び(写真17)もあります。端末処理として何を結ぶのかは、それぞれの所属ごとの判断によります。

・引張りチェック

結索の整理、端末処理が終わったらロープに力をかけて結索が解けないかチェックします(写真18)。

写真14 ロープが交差している

写真15 整えたところ

写真16 ひと結び

写真17 とめ結び

写真18 引っ張って結紮が解けないか確認する

 

 

5、基本結索の使用目的

 

結索の種類での表にも用途として記載していますが、基本結索の中でも使用頻度の特に高いものをもう少し詳しく説明をしていきます。

 

・本結び(写真19)…同じ太さのロープを結び合わせる。

・ひとえ(写真20)、

ふたえつなぎ(写真21)…太さや材質の異なったロープをつなぎ合わせる。ふたえつなぎの方が抜けにくい

・ちょう結び…ロープの中間に輪をつくるときに用いる。人力で展張する場合などに使う。結び目にトグルを差し込むと力がかかっても締まらず、解きやすい。

 

・二重もやい結び(写真22)…ロープ展張時にチルホールのフックに掛ける輪として使用したり、要救助者の吊り下げ、吊り上げに使う縛帯(身体結索)として使用。

・三重もやい結び(写真23)…輪を三つ作る結びで、要救助者の吊り下げ、吊り上げに使用。

・巻結び(半結びあり)(写真24)…ロープを展張したり、垂らす時に支持物に結びつける結びとして多用。物の吊上げ等にも使用。

 

・もやい結び…結びやすく荷重が掛かっている時は解けず、荷重を取り除くと容易
に解ける結索。

・ふた回りふた結び…ロープを地物に係留する時に使用。

・プルージック結び…結び目に力が加わると結び目が起き上がり、移動しなくなる結び。登はんのロープ、ブリッジ線の補助確保として使用。

6、手技

結索の基本的な作成手順については各種教本等に記載されている為ここではあまり教本等に記載されていない作成手順を紹介します。

・プルージック結び

・対象物にロープを二巻します(写真25)。

端末側から3本目のロープを緩め(写真26)

折り返した部分及び先程緩めた部分から端末側の2本を

引き抜き(写真27、28)

締めて緩みを取り除き完成です。(写真29)

 

・もやい結び

・ループを作ります(写真30)。

バイトを作りループの中に写真のように通します(写真31)。

端末を先程作ったバイトに通し(写真32)、

バイトから端末が抜けない様に保持し、メイン側を引いて(写真33)

締めて緩みを取り除き端末の処理を完成です。(写真34)

 

7、おわりに

基本結索は消防士としての基本です。自分は出来るから大丈夫といって反復訓練をおろそかにしているといざ現場で使用する際、出来なかったり、作成するのに時間が掛かったりしてしまいます。日頃から訓練を行い結索の精度や作成の速度を高めることにより、迅速な救出につながります。今回の基本結索に限らず、全ての資器材等において諸元性能をきちんと理解した上で取り扱わなければ重大な事故に繋がりかねません。全ての現場において自信を持って活動ができるように訓練に励みましょう。

 

筆者

山根 貴朗(ヤマネ タカアキ)

島根県大田市消防本部大田消防署三瓶出張所

 

平成17年4月1日 消防士拝命

出身 島根県大田市

趣味 野球・ゲーム

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