健康教室2019年5月号p62-3
応急処置アップデート(14)
尿糖
ポイント
- 1.糖尿病と腎性糖尿の二つがある
- 2.糖尿病の早期発見に重要
学童検尿3回目は尿糖です。検尿していて、最も驚かされるのがこの尿糖です。糖以外の項目はなんとなく色が変わったかなという程度なのですが、尿糖の場合はテステープを尿につけた途端に濃い青に変化します。
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大量に糖が尿に混じる場合は間違いなく糖尿病です。糖尿病は日本人において寿命を縮める最大の因子です。また適切に治療されなければ失明・下肢の壊死(下肢切断)・腎不全を引き起こし、その人の人生に多大な影響を及ぼします。早期に発見することで、ごく普通の学校生活を送ることができるようになります。
1.尿糖が出る仕組み
血液中の糖は腎臓の糸球体を通るとき、糖は一定の割合で原尿に混じって尿細管に入ってしまいます。尿細管では原尿に混じった糖を再吸収し血液に戻します。そのため通常であれば糖は尿には出てきません(図1)。
ここで血液中の糖が高くなると、糸球体で濾過され原尿に混じる糖の量が増加します。尿細管が糖を吸収できる量には限界があるため、原尿に混じっている糖の量が増えれば限界を超えた分が再吸収されずに尿として排出されます(図2)。
具体的には血糖がだいたい170mg/dLを越えると尿に糖が混じるようになります。限界を超えた場合の血糖値と尿糖値は比例します(図3)。
2.尿糖が出る原因
ろ過する腎臓に問題がある場合と、血糖が高くて腎臓が処理しきれない場合の二つがあります。
(1)腎臓の機能が劣っている
生まれつき腎臓尿細管における糖の再吸収能力が劣っている場合です。血糖値が正常範囲なのに糖が尿に出てきます(図4)。遺伝的背景が認められます。特に処置は必要なく、経過観察します。
(2)血糖が高い
尿糖の元となる血液中の血糖値が高い場合です。糖尿病の場合は適切な治療が必要です。
3.糖尿病と診断するための検査
検尿で糖が出る場合、出てくる糖の量が少ない(プラス1程度)なら日を置いて再検査をします。2回目も糖が出るようなら病院受診を勧めます。出てくる糖の量が多い場合は、私はすぐ専門医に紹介しています。
日本小児内分泌学会で定めている診断基準を表1に示します。学校検尿は朝一番の空腹の時に尿を取っているので、その時点で糖が出るならかなりの高血糖であることが予想されます。
4.糖尿病の種類
糖尿病には2つのタイプがあります。
(1) 1型糖尿病
小児糖尿病といえば多くはこれを指しています。インスリンの分泌が極度に減少・廃絶するために起こります(図5)。原因としてはウイルスなど感染をきっかけとした自己免疫性疾患が考えられています。他の児童生徒たちと同じ行動・同じ食生活をしながらインスリンを注射します。
(2)2型糖尿病
成人型糖尿病とも言われます。血糖値の上昇にインスリン分泌がついていけない(図6)ことと、筋肉などでインスリンへが反応しづらくなることが原因です。肥満体型で、遺伝の関与が認められます。肥満と生活習慣を是正することが第一で、それでも血糖値が高いようなら投薬(内服薬から)を開始します。
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