190709応急処置アップデート(16)熱傷

 
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基本手技

健康教室2019年7月号p56-7

応急処置アップデート

16 熱傷

目次

ポイント

  • 1.すぐ冷やす
  • 2.化学熱傷は洗う
  • 3.水疱以上はすぐ病院へ

 

熱傷は防ぐことのできる外傷です。しかし学校の中で火を使うことは多く、小さな熱傷なら結構な頻度で発生しています。この項では熱による熱傷について記載します。化学薬品や電気による熱傷は後段で説明します。

1.処置は冷やすこと

(1)20℃程度の水で20分間(図1)

 

熱傷の広さと深さに関係なく最初にやることは冷やすことです。冷却によって痛みが和らぐとともに、熱によって細胞が死んでいくのを防ぐ効果があります。冷やす時間の目安は20分です。冷やす温度は室温の20℃から25℃程度が最も良いとされていますので、お湯も出る混合水栓や風呂のシャワーで水温を調整しながら患部を冷やします。

水温が低すぎれば細胞死の範囲を広げる可能性があり、また長時間の冷却に耐えられなくなります。

(2)衣服の上から水をかける(図2)

 

衣服の上からお湯がかかった場合は衣服の上から水をかけます。脱がせるのに時間がかかってはそれだけ傷が深くなりますし、服に皮膚が付着して服と一緒に剥がれてしまうことがあるからです。十分に冷却した後に、軽度の熱傷なら慎重に服を脱がせます。水疱ができていそうなら服を切断して水疱を保護します。

(3)指輪は取る(図3)

指輪をしている指にやけどをした場合は指輪をすぐ取りましょう。どんな軽いやけどでもそのあと指が腫れてきます。腫れが強い場合は指輪の部分で血の流れが止まり、最悪の場合は指輪から先が壊死します。病院では指輪を切断し抜去します。

(4)色素沈着に注意(図4)

 

赤くなっただけで水疱ができなくても治癒過程で色素沈着しやすくなります。紫外線は避けましょう。

2.病院へ行く基準

基本的に全ての熱傷は病院の受診対象です。学校で児童生徒が受傷したのでしたらなおさらです。熱傷の範囲が狭く、しかも赤くなっただけであってもすぐ保護者に連絡を取りましょう。熱傷は受傷直後にはその深さは確定しておらず、冷却の程度や感染でさらに重症化する可能性があるため、最初に保護者に報告し現状を伝えることがその後のトラブルを防ぐために有効だからです。

3.熱傷の分類(図5)

 

熱傷はI度からIII度まで分類がされています。何もせず治るのはI度熱傷だけです。水疱ができるII度の浅い熱傷の場合も範囲が小さければそのままの治癒が期待できますが、抗炎症剤や抗生物質を併用したほうが早く綺麗に治ります。

病院では熱傷の広さと深さをみて治療方法を決定します。手のひらを体の1%の広さとしたときに手のひらの15枚分(15%)以上の水疱形成か2枚分以上のIII度熱傷では入院加療となります。

 



 

4.化学熱傷

 

化学熱傷(図6)は酸やアルカリなどと皮膚が接触して皮膚損傷を負うものです。発見したらすぐに37℃のぬるま湯で患部を洗い流します。塩酸などの酸は皮膚タンパクを凝固させるため発見後に進行することは少ないのですが、水酸化ナトリウムなどのアルカリは皮膚を溶かし発見後もどんどん傷が深くなっていくため、少なくとも30分の洗浄が必要です。

また多いのが灯油などの有機溶媒です。痛みが少なく、気がつくと皮膚が剥けていることがあります。これも温水で長時間洗い流します。

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