200601救急隊員日誌(191) あなたが空しく生きた今日は

 
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救急隊員日誌
月刊消防2020/4/1
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「あなたが空しく生きた今日は」

同僚の彼は、勤務中にも関わらずぼーっとしている。救急指令は頻繁に聞こえるが、火災指令はそうそう聞こえない。ドクターヘリの場外支援をしたり、救急隊の支援活動で出動することはあるけれど、やっぱり火災出動したいな・・。いやいや、市民にとっては平和が一番。火災がないなんてすばらしいことじゃないか・・。でもせっかく消防士になったのだから、活躍の場は火災現場だろ・・。放水したいな。いやいやでもやっぱりそんなこといっちゃいけない。いちばん油がのっている彼はどうやら迷走中である。

「そんな嘆く時間があったら訓練でも計画したら?」と話しかけると、「やる気にならない」のだそう。おいおい、そうやって君は嘆きながら一日の勤務を終えるつもりなのかい?その時間、できれば僕に分けてくれないかな。


 

お母さんは、病室で叶えられる夢もきっとなら何でも叶えてあげようと心に決める

お母さんは、病室で叶えられる夢なら何でも叶えてあげようと心に決める

 

ある少年は、急性白血病だった。年齢が二けたに達しないまま、彼は天国に旅立ってしまった。物心がついたときから病院で生活している彼には、やりたいことがたくさんあった。「退院したら家族みんなで焼肉が食べたいな」「遊園地ってどんなに楽しいところなんだろう。」退院できる見込みもない彼が楽しそうに話すのを見て、お母さんは、病室を離れてはトイレでいつも泣いていたのだそうだ。その夢は叶えることができない夢なんだと。

しかしお母さんは、病室で叶えられる夢なら何でも叶えてあげようと心に決める。息子に聞いてみると、「クレヨンでもっと絵が書きたい」「トランプがしたい」というので、次の日にさっそく買い与えた。その日は一日中お絵かきとトランプであそんだ彼はとてもうれしそうだった。次は何をしたい?と聞くと、「ピザが食べたい」というので、さっそく近くのピザ屋さんを調べて買いに行った。こうやってお母さんは毎日毎日やりたいことを聞いて、その夢を一つでも多く叶えようとした。

何日か経って、息子は「明日はお母さんのアルバムを持ってきて」といった。自分が外に出られないから、お母さんが子供の時はどんなだったかが知りたかったらしい。お母さんは実家に戻りアルバムを見つけた。これを息子に見せながら、どんな思いで話をしようかワクワクしていた時、息子が急変した連絡が入り、そのまま亡くなってしまう。

お母さんは講演会で各地を回る。伝えたいのは、「あなたが空しく生きた今日は、昨日死んでいったものがあれほど生きたいと願っていた明日。」というメッセージ。人が怠けているのをみると、「その時間をどうか私の息子に分けてほしい。」と今でも思うのだそうだ。この一説は、韓国のベストセラー小説「カシコギ」の一説なのだが、もはや正論すぎて何も言葉が出ない。


 

皆さんにも、やる気の出ない同僚にも、どうかこのお母さんと少年のメッセージを心に刻んでほしい。この言葉を思い出すたびに、自身のギアをひとつ上げることができるのではないかと私は思っている。
さあ新年度である。天国の少年に恥ずかしくない生き方ができたと胸を張って言えるよう。一致団結して頑張ってみようではないか。

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