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200828救助の基本+α(47)山岳救助 真庭市消防本部真庭消防署 植田雅也・北川雄己

月刊消防2020/6/1, p37-43

救助の基本+α

題名:山岳救助

1.はじめに

真庭市消防本部は、岡山県の北部、鳥取県境に位置する山間地域にあり、東西約30km、南北約50kmの広がりを見せ、総面積約895㎢の真庭市及び真庭郡新庄村の1市1村を管轄しています。当本部は1本部1消防署4分署で構成されており、職員数98名で市民の安全安心なまちづくりに取り組んでいるところです(001)。

真庭市は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)の達成に向け、優れた取組を行う都市として全国29都市の「SDGs未来都市」に指定され、その取組自体も先導的なものとして全国10事業の「自治体SDGsモデル事業」にも選定されています。当本部でもその一環として、「消防めしがつなげる持続可能なまちづくり」をテーマに、消防士が作る賄い飯(消防めし)を通じて楽しみながら防災啓発要素を組み込んだイベント「消防士の台所 in 真庭」を開催したところ、遠くは熊本県、神奈川県からの参加もあり、市内外から約1,000人の方に参加いただきました(002,003)(詳細は月刊消防2020年2月1日号p〇〇をご覧ください)。

また本市は、高速道路が東西南北に交差しており、インターチェンジ5か所、ジャンクションが2か所あるなど自動車交通が充実していることから、大山隠岐国立公園の一部である蒜山三座をはじめとした標高1,000m級の山々に多くの登山者が訪れています。当本部救助隊の特色としては、夏山シーズンにはロープレスキューを主体とした山岳救助訓練、冬山シーズンにはスノーシューを使用して雪中での遭難捜索訓練、救出搬送訓練等、各シーズンの山岳救助事案を想定した山中訓練を実施して知識を深め、「安全・確実・迅速」をモットーに少数で効率的な救助ができるよう訓練を重ねています。さらに、岡山県消防航空隊、岡山市消防局航空隊とヘリコプターで要救助者をピックアップする等の想定訓練を毎年実施しており、日頃より綿密な連携が可能となっています。

今回は季節により変化する山に対応するための山岳救助方法を投稿させていただきます。

001

真庭市の位置

002

消防士が作る焼きそば

003

救助の展示も行いました

2.山岳救助資器材の紹介

山岳救助は、長時間の活動になるため、資器材は最低限必要なものを選定し準備しています。

山岳救助資器材一覧(004)

・スケッドストレッチャー

・背負子

・ザック1

カラビナ×5プーリー付きカラビナ×2アイディー×1センダー×1

ウェービング3.6m・6m各1テープスリング120cm×2プルージックコード×1

ガムテープ×1ドンゴロス×1

・ザック2

50mザイルロープカラビナ×5プーリー付きカラビナ×2プーリー×2

アイディー×1センダー×1ウェービング4.5m・7.5m各1

テープスリング120cm×2プルージックコード×1ポーMサイズ×1発煙筒×4

虫よけスプレー×1

・ザック3

50mザイルロープカラビナ×5プーリー付きカラビナ×1プーリー×2

センダー×2ウェービング3.6m・6m・7.5m各1テープスリング120cm×1

プルージックコード×1保温シート×1虫よけスプレー×1

・ザック4

要求助者用ヘルメット×1毛布×1ゴーグル×1安全帯×1のこぎり×1ナタ×1

※冬季は、土のう袋、折り畳み式シャベル、スノーシュー、ストック、ゾンデ棒を追加する。

004

山岳救助資器材の紹介


3.装備(夏(005)、冬(006))

005

夏季の装備

006

冬季の装備

4.支点の作成方法

当本部の山岳救助では、ザイルロープ、ウェービング、テープスリングを主に使用し支点を作成します。支点構築方法は様々ですが、ラップ3プル2のように支点に対してラウンドする場合、立ち木の太さに対してどのくらいの長さのロープ(テープ)が必要か判断が求められます。また、立ち木は樹皮があることで摩擦抵抗が強く、足らないロープを送り込むことは困難で、再設定に時間を要します。そこで我々は、次の写真のように工夫をしています。

また、冬季の積雪を利用した支点作成を紹介します。

(1)ラップ3プル2作成(長さの調整方法)

007

立ち木の半周分の長さを測る

008

半周分の長さを折り返し立ち木1周分にする

009

1周分を折り返し2周分にする

010

さらに折り返し3周分にする

011

3周分折り返した位置から巻き始める

012

巻き始めの位置からロープ(テープ)をずらさないことがポイント

013

完成。幹が太い立ち木ほど有効

(2)積雪を利用した支点の作成方法

土のう袋に雪を詰め、テープスリングで徳利(とっくり)結びを作成します。

014

土のう袋に半分程度雪を詰める

015

ひばり結びで結着する

016

土のう袋の口を折り返し4~5周巻きつけ、折り返した隙間に端末を抜いて絞めこむ

017

端末にカラビナをつけ完成

まず、法面から約1m離れ平坦で安全な場所に深さ約30cmの穴を掘り、底の雪を更に踏み固めます。土のう袋を降下方向に口を向けて埋めます。穴と土のう袋の間にできたスペースに雪を詰め、さらに雪を被せ上から踏み固めて作成します(018)。

傾斜面の降下に使用した結果、強度は十分でした。また、雪質によって深さを変更する必要があります。粉雪なら深く、湿雪なら多少浅くても構いません。複数の支点を作成して分散させることでより安全性が高まります。

また、土のう袋がない場合は、レジ袋等のビニール袋でも代用が可能ですが、一人が降下する加重に耐えられるものもあれば、取っ手部分がちぎれてしまうものもあります。ビニール袋は安価で軽く大量に持ち運べ、材質がやわらかいので取り扱いが容易ですが、支点としての強度は袋によって様々なので、注意が必要です。

018

土のう袋を埋めて支点を作成する方法。

019

掘った穴に土のう袋を入れる

020

確保員はロープを確保しながら、支点の上に立ち、支点の抜け防止を実施

021

傾斜面での2人荷重は支点として使用可能。ストックを使用し、ロープの沈み込みを防止している。ロープが通る場所に溝を掘って、土のう袋の浮き上がりを防止する方法もある

5.雪山活動(雪崩埋没者の救出)

雪崩での救助活動は、積雪の状態をチェックしたり、雪崩の状態と発生場所の地形に注目したり、入山後の気象に注意します。通過場所だけではなく、斜面の上方にも注意を払わなければなりません。

また、雪崩埋没者の生存率は15分で93%、45分で26%と時間を追う毎に生存率は低くなっていきます。しかしながら2~3時間後に発見され生存を確認後救出された事案もあります。従って、要救助者発見まで生存の可能性を追い、その要救助者が低体温症に陥っていることを前提に活動を行わなければなりません。

そのために我々は、安全、確実、迅速に捜索活動を行うために操法を考案し、雪上訓練で実践していますので紹介します。

(1)ゾンデーレン操法(9人法)

https://ops.tama.blue/wp-content/uploads/2020/08/022.pdf

022

022

ゾンデーレン操法(9人法)概要

《ゾンデ隊》

折り畳み式の検索棒を移動しながら雪面に刺す・抜くを繰り返し、検索する。異変・異物に当たる等疑わしい時は速やかに挙手する。

《シャベル隊》

ゾンデ捜索にて異変を感じ、また異物に当たるなどの疑わしい箇所をゾンデ隊から情報を引き継ぎ、掘削していく。ピンポイントではなく、ポイント周辺から徐々に行う要救助者発見と同時に露出した部分から保温を実施する。

《安全管理》

現場全体が見える範囲で、安全な位置を常に配慮する。活動場所周辺だけでなく上方にも注意を払い、雪崩等の二次災害の発生に備える。異変を感じたら警笛等により危険を周知し退避を促す。

《指揮者》

現場を確認し、情報と照合させ各隊に周知する。活動範囲を起点、遭難点、消失点、デブリ*堆積・終息点から判断し重点箇所を特定し、捜索活動の指示を行う。

*デブリ・・・雪崩によって堆積した雪

023

検索棒を雪中に刺し検索実施

024

要救助者発見。ゾンデ隊・シャベル隊にて救出

6.岡山県防災航空隊と岡山市消防局航空隊との合同訓練

当本部では、夏季と冬季に消防ヘリと合同訓練を実施しています。管内の山での事故を想定し、ヘリコプターと無線交信、ヘリコプターの誘導及び地上の安全管理をメインで訓練を実施しています。

(1)ヘリコプター誘導の要領

1GPS機器を使用して測定した座標を無線でヘリコプターに伝える。

2ヘリコプターの機体を地上隊が確認したら、機首を12時としてヘリコプターから何時方向に地上隊がいるか伝える。

3ヘリコプターが接近したら、発煙筒(夏季は白色使用、冬季は雪がある場合は赤色を使用)又はライト照射、立ち木を揺らすなどの方法で正確な場所をヘリコプターに知らせる。

025

防災ヘリから見た発煙筒(白)の状況

026

合同訓練の様子

7.終わりに

近年、台風や局地的な豪雨等により水害や土砂災害が頻発しています。「晴れの国」と言われている岡山県においても豪雨により甚大な被害が発生しました。

幸いにも、当本部管内は近年の豪雨による水害または土砂崩れでの死傷者は出てはいませんが、山間の地域であり土砂崩れはいつ起きてもおかしくありません。不安定な場所において自分の身を守り、そして仲間の安全を確保しつつ要救助者を助けるためには山岳救助の知識・技術を十分に熟知する必要があります。

当本部は職員数100人未満の小さな組織ですが、その中で限られた資器材・人員でどのように救助を行っていくべきか日々訓練を重ね、検証を繰り返すことで洗練された救助方法を作り上げています。今回は、この寄稿が少しでも皆さんの役に立つことになれば幸いです。

各本部で山岳救助の資器材、技術、考え方は様々だと思います。しかし、目的は一つです。

全国の消防が『ONE TEAM』となって災害に立ち向かいましょう。

027

真庭消防署救助隊

プロフィール

028

名前:北川雄己(きたがわゆうき)

所属:真庭消防署

消防士拝命:平成20年4月1日

趣味:釣り、ゴルフ

029

名前:植田雅也(うえだまさや)

所属:真庭消防署

消防士拝命:平成20年4月1日

趣味:綱引き、野球、映画鑑賞

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