200905応急処置アップデート the movie (4) 熱中症

 
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基本手技

雑誌 健康教室 2020年7月号p50-51

応急処置アップデート the movie

(4)

熱中症

 

熱中症患者は暑くなり始めに多発します。この原稿が出る頃にも新型コロナが猛威を振るっているでしょうが、熱中症にも気をつけましょう。


目次

THE MOVIE

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1

熱中症が疑われたならすぐ涼しい場所で休ませます。

2

水が飲めるようなら好きなものを飲ませて休ませます。

3

水が飲めない、飲んでも吐く、意識障害があるならすぐ救急車を呼びます。

4

救急車が来る間も積極的に冷却します。まだ受け答えができるなら、保冷剤を動脈に置き、皮膚に水を掛けつつあおぐことで体表温度を下げます。

5

受け答えができないなら水道水を掛け続けて急速な冷却を行います。どれだけ早く体温を下げれたかで患者の予後が決まります。


熱中症のアップデート

1.致死的熱中症には体表面冷却は効かない

左ページでは保冷剤を使った冷却法を示していますが、これは軽度から中等度の、まだ受け答えができる段階だけで有効で、意識がおかしい(受け答えが変な場合も含む)場合にはもっと急速に体温を下げなければなりません。

過去の症例報告をまとめた論文では1)、高体温時に保冷剤を使う方法は勧められないとしています。最も良いのは氷水の風呂に漬けること。次に水をじゃんじゃん掛けることです。高体温が長く続くほど臓器障害・重症度・死亡率が高くなるため2)、患児が高体温なら躊躇なく水を掛けましょう。それが患児を救う唯一の方法です。

2.血管が焼けて死ぬ

ではなぜ熱中症で死亡するのか。インフルエンザでも体温は40℃くらいに上がるのに、普通はそのまま治癒します。この違いはどこから来るのでしょうか。

簡単に書くと、あまりの熱のために血管が低温やけどを起こすためです。血管の内側は血管内皮細胞が覆っています。この細胞は血液をサラサラにする物質を持っています。血管内皮細胞が熱にさらされると細胞が死にます。サラサラ細胞がなくなりますのでそこで血が固まり血栓ができます。また悪いことに細胞が死ぬ時には炎症を加速させる物質が細胞から放出され、全身に炎症が広がっていきます3)。ヒトが死亡する体温は42℃とされていますしインフルエンザ患者を診察しても40℃が上限のようなので、40℃を超えると血管が焼け始めるのだと思われます。

小児の熱中症死亡7例を解剖した結果では、漿膜(臓器を覆っている薄い膜)に出血が見られ、肺には血液が溜まっていました4)。別の報告では脳と肺の浮腫(異常に水が溜まること)、顕微鏡では至る所に小出血が見られました5)。

3.水温33℃で遊泳禁止

水の中でも熱中症になります。室外のプールが危ないようです。論文6)では、水泳選手に違った温度のプールで決まった時間を泳いでもらい、その後直腸温か食道温を測定しています。その結果、水温が26℃を超えると体温は上昇していました。水はエンジンの冷却水の役割を果たしていますが、水温が高くなると体の冷却機能が低下し、体温が体に篭るのが体温上昇の原因です。筆者らは体温上昇の割合から、水温が33℃を超えた場合には遊泳禁止にすべきとしています

文献

1)J Emerg Med 2016;50:607-16

2)Prehosp Emerg Care 2018;22:392-7

3)Biochem Biophys Res Commun 2018;506:626-31

4)Eur J Pediatr 2016;175:1249-52

5)Srp Arh Celok Lek 2014:142:360-4

6)Wilderness Environ Med 2013;24:362-5

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