200909まだまだ気を抜けない 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) (旭川医療センター病理診断科 玉川 進)

 
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近代消防 2020/7月号, p65-67

まだまだ気を抜けない 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) (旭川医療センター病理診断科 玉川 進)

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新型コロナウイルスは患者数は減少傾向ですが患者発生は続いています。近代消防2020年5月号ではこのウイルスの基礎的な知識をお伝えしました。今月は、現場での注意点を中心にお送りします。

目次

前回の記事から2ヶ月経っての変更点

1.感染可能期間の新設

「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロ ナウイルス感染症を疑う症状(以下参照)を呈した 2 日前から隔離開始までの間、とする。 」(001)

 

 

001

感染可能期間が症状出現の2日前からに変更された

2020年4月20日に新設されました。潜伏期間でも感染能力があることが示されたことになります。アメリカ疾病予防管理センターCDCでは発症の1-3日前に他人に感染させた7例を報告しています。1-3日の中間で2日になったのでしょう。

2.濃厚接触者の定義変更(国立感染症研究所ほか)

2020年4月20日変更。現在の定義は下記の通り。「患者(確定例)」の感染可能期間が発症2日前からになったことに注意しましょう。

——————–

「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。

・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者

・その他:手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。

——————-

濃厚接触と判断する目安が「2メートル以内の接触」から「1メートル以内かつ15分以上の接触」に変更されています(002)。WHOの定義に合わせたものです。1メートルはWHOの感染防止項目に出ており、それだけ近いと感染者の咳や飛沫が健常者に付着するためとしています。15分の理由については探しても見つかりませんでした。

002

濃厚接触者の定義変更。「2メートル」から「1mかつ15分以上」になった

逆に、1メートルを超えていたら感染しない、1メートル未満でも15分未満なら感染しないという保証はありません。

救急隊員がマスクや手袋といった普段の格好をして患者に接する分には濃厚接触者には該当しません(003)。

 

003

救急隊員の普通の格好、メガネとマスクと手袋をしていればどんなに近くても濃厚接触者に該当しない

3.環境汚染についての知見

乗員乗客3711名で患者数712名を数えたダイアモンドプリンセス号での環境調査の結果が発表されました。検出頻度が高かったのは浴室内トイレ床13か所(39%)、枕11か所(34%)、電話機8か所(24%)、TVリモコン(21%)、机(8%)などでした(004)。非感染者の部屋からはウイルスは検出されませんでした。共有部分97箇所の検討では廊下排気口から1か所のみ検出しました。空気検体からはウイルスは検出されませんでした。

 

 

004

患者が滞在した場合にウイルスが付着する場所。

このことから、感染者もしくは感染疑い患者がいたトイレ(特にドアノブ、トイレットペーパーホルダー、水栓レバー、 便座)を毎日消毒することが推奨されています(005)。トイレ以外の床と靴裏については汚染部分以外は特別な消毒は不要とされています。

 

005

トイレを重点的に消毒すること。特にドアノブ、トイレットペーパーホルダー、水栓レバー、 便座を重点的に。

4.帰国者・接触者相談センターへの相談の目安

5月6日に相談の目安が変更されました。今までは、相談するためには37.5℃4日間が必須条件と受け止められていた(医師である私もそう思っていました)ことから、これを廃止し、息苦しさ・だるさ・高熱といった症状を目安とするようになりました。一方、嗅覚障害や味覚障害については採用は見送られています。

これにより119番通報だけで新型コロナ感染を判断するのはさらに難しくなりました。新型コロナで救急車を呼ぶのは高熱もしくは呼吸器症状、まれに心不全症状です。少しでも怪しければ感染疑いとするしかなさそうです。

自宅待機と健康観察

1.自宅待機

保健所から自宅に留まるよう要請されることを自宅待機と言います。待機期間は感染者では適当な機関に収容されるまで、濃厚接触者では2週間です。新型コロナの潜伏期間が最大14日と考えられているのが2週間の根拠です。

上に示した通り、仮に搬送した患者が新型コロナ患者であっても救急隊員が濃厚接触者となることは通常ありません。しかし飛沫物や吐物が粘膜に触れた場合は濃厚接触者となります。

保健所から自宅待機を命じられた場合は原則として2週間の自宅待機となります。

自宅待機では以下が求められます。

・不要・不急の外出は避ける

・外出時や人に会う時にはマスクを着用し、手洗いを励行する

・症状が出た場合は帰国者・接触者相談センターに連絡する

家族と同居している濃厚接触者は以下の8項目を守るよう厚生労働省は求めています(006)。食器に関しては記載がありませんが、可能な限り使い捨てのものを使用した方が良いでしょう。

・家族と別の部屋で過ごし、食事もそこでする

・世話をする人は一人に限定する

・全員が常時マスクをする

・こまめに手を洗う

・定期的な換気

・共用部の消毒

・衣類やタオルなどは手袋をして洗剤で洗い完全に乾かす

・ゴミは密閉して捨てる

 

006

自宅待機の注意点。厚生労働省からの引用

2.)健康観察

担当省によって定義が異なります。

厚生労働省は、濃厚接触者を対象に、発熱や呼吸器症状を観察することを健康観察としています。2週間の自宅待機を伴いますので強制力があります。

文部科学省は、新型コロナに感染する可能性のある人、特に大学病院に勤務する人たちが、平時から検温や呼吸器症状の有無をチェックすることを健康観察としています。自宅待機とは異なり、仕事を続けることができます。

医学的見地から

1.再流行について

日本の総力を挙げての新型コロナ封じ込めに加え、もともと夏に弱いコロナウイルスの性質も相まって、新型コロナ感染患者数は着実に減少してきています。執筆時点で、特別警戒地域である北海道も、感染者の発生はほぼ札幌市内だけになってきました。

ですが新型コロナウイルスが消滅したわけではありません。ワクチンが広く接種されるようになるまでは流行が続くでしょう。先例にスペイン風邪があります。1918年に始まったこのインフルエンザによって、人口2300万人の日本人のうち38万人が死亡したとされます。このスペイン風邪は3回のピークがあり、1年半猛威を振るって終息しました。今回の新型コロナウイルスは最初のピークは2月から3月にかけて武漢発症のウイルス、第2のピークが4月で上海で変異しヨーロッパ経由で日本に入ってきたウイルスが原因とされています(007)。今年の冬にまた感染者の増加を示す可能性は十分にあります。

 

007

続く流行。上がスペイン風邪。下が今回の新型コロナウイルス。東京都保険安全研究センターホームページから引用

2.気管挿管について

留萌消防に尋ねたところ、特定行為などに対する新型コロナに関連した通達はないとのこと。一方、医師に対しては国や関連学会からたくさんの通達が来ています。最もコロナ飛沫をあびやすい気管挿管については、麻酔科学会から通達が出ています(008)。

・ビデオ喉頭鏡を使う

・直ちにカフに空気を入れる

・換気確認は聴診禁止。カプノグラム(呼気炭酸ガスモニター)波形で行う。

救急現場で気管挿管が「絶対」必要な症例はありませんし挿管して予後が改善されることもありません。流行期には挿管はやめましょう。

 

 

 

009

麻酔科学会が示した気管挿管の注意点

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