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201018救急隊員日誌(194) 消防士とパイロットと宇宙飛行士

月刊消防2020/7/1, p67
月に行きたい
「消防士とパイロットと宇宙飛行士」

消防職員にはどのような能力が求められるのか考えた時に、意外と専用の本は少ないことに気づいた。世の中に出回っているノウハウ本は、例えば「メモの力を伸ばす」「社員を定時に帰す方法」などといったビジネス全般に通じるものがほとんどで、消防士に特化したような本は意外に少ない。

売られていない本は買うことができないので、他のジャンルから消防士に参考になりそうな業種の本を選んでみることにする。まずは航空業界から小林宏之著「航空安全とパイロットの危機管理」。

なぜ航空業界を選んだかというと、リスクマネジメントの最たる業種だからだ。乗り物に乗って、目的地まで到達するという点も共通だ。災害現場で消防士が預かる命は、被災者や隊員たちを含めても数十人のことが多いが、ジャンボジェットになると一度に預かる命の数は500人を超える。生還して当たり前、落ちたら全滅の世界。だから危機管理能力が半端ないのである。一件一件の事故はヒヤリハットも含めて徹底的に分析。「安全対策はヒューマンエラー対策が鍵を握る」として、人間はどのような時にエラーを起こし、航空業界ではどのような対応を取っているのかがこの本では紹介されている。これは我々消防士業務にも重要なスキルだ。航空業界から安全対策を学ばない手はないだろう。

せっかく飛行機に足を伸ばしたのだから、宇宙まで行ってみよう。さらに遠くまで行く業界なら新たな発見があるはずだ。大鐘良一、小原健右著「宇宙飛行士選抜試験」には、宇宙飛行士にはどのような資質が求められるのかが事細かく解説されている。

募集要項を見ると「自然科学系の大学を卒業し実務経験が3年以上あって、英語が話せること」・・・既にハードルが高い。私では書類選考すら通らない。そこに1000人の応募があるらしく、宇宙飛行士になれるのは書類選考を含めた4回の試験でふるいにかけられたった1〜2人+補欠数人という数字だ。宇宙飛行士を選抜する試験基準が面白い。「どんなに苦しい局面でも決してあきらめず、他人を思いやり、その言葉と言動で人を動かす力があるか。」なんとここは消防士と大差はないではないか。それにしても宇宙に行くということは人類代表であるということ。きっと凡人には理解できない問題や難解な試験があるかと思っていたが、試されていたのは人間力というのには驚いた。この本は、宇宙飛行士受験者の行動や発言を試験官の視点から分析している。繰り返すが消防士に求められる資質は宇宙飛行士と大差はない。この業界にも消防士が抱える課題への活路を見出すヒントが隠されているかもしれない。

消防業界の本が少ないことに不満を漏らした私だが、他の業界からも十分に学ぶことができそうである。パイロットにはどんな資質が必要か読み返してみたところ、“①健康であること ②常識人であること ③新しいことに順応する力 ④諦めない精神”だそうだ。こちらも宇宙飛行士と変わらず、大切なのはやはり人間力だった。

「私の消防人生40年」というような自叙伝がもっとあったらいいのにな。きっと普段経験しないような現場の話や失敗談もあって面白いと思う。これが全国の消防学校や救命士教育機関の教材の一つになれば、きっと安定した発行部数も望めるのではないだろうか(笑)。消防を卒業した先輩方々、もう一踏ん張りどうぞよろしくお願いします。


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