プレホスピタルケア 2020年10月号p14-16
連載タイトル「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」
担当
北海道留萌(るもい)消防組合小平(おびら)消防署
第4回
呼吸
目次
〇はじめに
今回「あなたは大丈夫?バイタルサインの基礎とTips」の第4回を担当させていただきます、留萌消防組合小平消防署の山崎貴亮と申します。第4回は「呼吸」について執筆させていただきます。
〇呼吸の観察
呼吸は重要なバイタルサインの1つであり、年齢によって正常値に差があるため、各年齢層の正常値を知っておく必要があります。また、呼吸数・呼吸音・呼吸パターンなど観察しなければならない点が数多くあり、「目」と「耳」を使用して、異常の有無を判断しなければなりません。
〇呼吸数
呼吸数とは、1分間の呼吸回数を表し成人では14~20回/分、新生児では40~60回/分が正常値とされております。成人では30回/分以上が頻呼吸と考えられており、10回/分未満の呼吸数低下は重篤な病態を示唆しています。呼吸数を確認する方法として呼吸音を聞いて数えるほかに、胸部・腹部の動きや酸素マスクの曇りを見て数える方法などがあります(写真1・2)。最近では新型コロナウィルス流行に伴い、感染疑いの傷病者にはサージカルマスクや酸素マスクを装着し、極力口元には近づかないよう呼吸の観察をしています。
(写真1)胸の動きを感じて呼吸を観察する方法
(写真2)マスクの曇りで呼吸を観察する方法
※左曇りなし
右曇りあり
〇呼吸音
呼吸音の観察は聴診器を用いて行い、呼吸音の異常や肺雑音が無いかを聴診します。呼吸音の異常や肺雑音が聴取された場合はある特定の疾患を疑うことができます(表1)。また、聴診器を使用しなくとも呼吸に伴って「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と聞こえる喘鳴や舌根沈下により起こるいびき呼吸を聴取することが出来ますので、聞き逃さないよう注意が必要となります。
〇聴診のポイント
•呼吸音の聴診には高調音の聴取に適しているダイヤフラム面を用いて行い、肋間にしっかりと密着するようにします(写真3)。
•ダイヤフラム面が冷たい場合(特に冬)は、手のひらで温めてから密着させます。
•聴診は上から下にむかって行い、左右交互に行うのが原則となっています(写真4)。
•傷病者の状態が許せば背部の聴診も行います(写真5)。
•上気道の狭窄を疑う場合は前頸部(写真4の①と②)、呼吸音の左右差をみるときは両腋窩部(写真4の⑦と⑧)を聴診すると呼吸音を聴取しやすくなります。
•肺雑音が微弱で聞き取りづらい場合は傷病者に息を吸ってもらった後、強く息を吐いてもらうことで聞こえやすくなります(強制呼気)。
(写真3)ダイヤフラム面を用いて行い、肋間にしっかりと密着するようにする
(写真4)上から下へ。左右交互に聴診する
(写真5)背部も聴診することが望ましい
〇呼吸パターン
呼吸パターンとは、呼吸回数・深さ・リズムがある一定のパターンで行われることです。特定の疾患がある場合には普段とは違う異常な呼吸パターンを行うことがあります(表2)。また、起坐呼吸のように普段とは違う呼吸を行うことがあり、特に心停止前後にみられる「下顎呼吸」「鼻翼呼吸」「あえぎ呼吸」などは「死戦期呼吸」といい、いずれも生命に危険が差し迫っている状態となるため、注意して観察しましょう。
〇最後に
今回、呼吸について執筆できたことで、呼吸というバイタルサインの重要性を再確認することができ、読んでいただいた方の力に少しでもなれればと思い執筆させていただきました。このような機会をいただけたことを心から感謝したいと思います。
(表1)呼吸異常の内容と主な原因
(表2)異常な呼吸パターンと主な原因
次回は「意識」です
著 者
氏名:山崎 貴亮(ヤマザキ タカアキ)
年齢:29歳
所属:留萌消防組合小平消防署
出身:留萌郡小平町
趣味:野球・フットサル
消防士拝命:平成21年4月
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