近代消防2021/9/10 2021年10月号)p63-4
今さら聞けない資機材の使い方 (101-1)
新型コロナウイルス対応専用救急車の運用
清水祐太
栃木市消防本部栃木市消防署
著者
氏名:清水 祐太(しみず ゆうた)
shimizu.JPG
所属:栃木市消防署 消防第1課
出身地:栃木県下都賀郡壬生町
消防士拝命年:平成18年
救命士合格年:平成18年
趣味:ロードバイク
目次
はじめに
新型コロナウイルス対応専用救急車の運用をはじめとする、当消防本部での感染防護の取組みを報告します。
1.専用救急車
令和2年1月から国内での新型コロナウイルス感染者が発生してきたことから、1月30日から救急予備車1台を新型コロナウイルス対応専用救急車(以下コロナ専用救急車)として運用を開始しました。装備は、平成21年に流行した新型インフルエンザを経験し、備蓄していた感染防護用フードを取付け(A_001)、患者室と運転席を隔離するため、自作のビニールシートを取付けました(A_002)。また汚染を極力避けるため、積載する資器材はAED、ベッドサイドモニター、ストレッチャー、O2ボンベ、観察バッグ、呼吸管理セットと必要最小限にとどめました。
帰署後の消毒時には、署内に待機する感染防護衣を装着した3名の職員が補助員として加わります。救急隊員は着用していた感染防護衣を脱衣後、うがい、手洗い、洗顔、着替えを行い、次の出動に備えます。補助員は救急車内の消毒(感染防護用フードの交換、次亜塩素酸ナトリウムによる清拭、オゾンくん蒸)を行います(A_003)。
A_001
感染防護用フード
A_002
自作のビニールシート
A_003
帰署後の消毒
2.専用資機材
感染者搬送バッグは、医療スタッフの二次感染を防止し、感染症患者を隔離搬送するために開発されたバッグです(A_004)。バッグ、送排気ユニットで構成されています。送排気ユニットは吸気フィルターを内蔵していて、乾電池で作動しバッグ内を陰圧に保ち、ウイルスを拡散させない構造になっています。しかし感染者搬送バッグは大きく救急車に常時積載するには不向きなため、患者(疑いを含む)発生時に搭載する(A_005)ことにしました。
現在感染防護用フードは入手が困難な状況となり、現在では入手可能なエマージェンシーシールドを使用しています。
A_004
感染者搬送バッグ
A_005
人が入ったところ
3.新型コロナウイルス感染症対策フロー
コロナ専用救急車運用開始に伴い、令和2年2月に新型コロナウイルス感染症対策フロー(以下、フロー)を作成しました。また、フロー作成当初は予測していなかった、要請患者の自宅待機など、状況は日々変化しており、最新の情勢に対応できるよう適宜フローを改定しております。現在のフローを示します(A_006)。
https://ops.tama.blue/wp-content/uploads/2022/04/A_006.pdf
A_006A_006
新型コロナウイルス感染症対策フロー
4.出動の現状
令和3年2月23日現時点でフローに基づいた出動件数は34件、そのうちPCR検査で陽性だったのは21件でした。
34件のうち感染者搬送バッグを使用したのは3件でした。この事案は67歳男性が腹痛を訴え、下痢・嘔吐がみられたため救急要請、救急隊の観察の結果37.8℃の発熱を認めたため、現場の救急隊からコロナ専用救急車の出動を要請、直近の分署救急隊が感染者搬送バッグを設定した分署救急車で出動したものです。後のPCR検査の結果は陰性でした。
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