近代消防2021/9/10 2021年10月号)p63-4
今さら聞けない資機材の使い方 (101-2)
Web会議システムを活用した遠隔指導
松崎刀磨、中本康文、岸田正臣、小林靖孟、貞森拓磨、松永真雄
広島市消防局警防部救急課救急救命士養成所
著者
氏名:松崎 刀磨
matsuzaki.JPG
よみがな:まつざき とうま
所属:広島市消防局警防部救急課救急救命士養成所
出身地:広島県廿日市市
消防士拝命年:平成22年
救命士合格年:平成27年
趣味:サウナ
目次
1.はじめに
新型コロナウイルス感染症の流行により、人の移動を伴い、3密環境の原因となる集合研修は難しくなりました。しかし、研修自体の必要性は変わることなく存在し、各救急隊員のレベルアップは必要不可欠です。そこで、この課題を解決するために、Web会議システムを活用した遠隔指導が、従来行ってきた直接指導と同等の効果が期待できるか検証を行いました。
2.対象と方法
当局の救急救命士6名を対象としてビデオ硬性挿管用喉頭鏡講習において検証を実施することにしました。受講者6名を2名ずつの3グループに分け、1グループに対しては、Web会議システムを活用した遠隔指導を行い、他の2グループに対しては従来型の直接指導を行いました。
遠隔指導においては、双方向の音声通話に加え、2台の固定カメラによる俯瞰映像と近距離映像そしてビデオ喉頭鏡映像の3つの映像を指導者がリアルタイムに確認、指導ができるよう構築し(001)、遠隔指導と直接指導の比較を行うこととしました。
配置のイメージを002に示します。左が受講者側で俯瞰映像、近距離映像、ビデオ喉頭鏡映像を映すカメラです。右側が指導者側で俯瞰映像、近距離映像、ビデオ喉頭鏡映像が1画面で確認できます。
001
構築したシステムの概要
002
配置イメージ
3.結果
Web会議システムを活用した、遠隔指導と直接指導の比較の検証により、5つの結果を得ることができました。
(1)複数カメラによる、十分な視野を確保(003)
3台のカメラを使用することで画像のように俯瞰映像、近距離映像、ビデオ喉頭鏡映像の3つの映像を確認できるため、遠隔指導にあたり十分な視覚情報を得ることができました。
(2)スムーズな非言語コミュニケーション
映像の解像度は良好であり、動画遅延もないため、受講者の手技をリアルタイムで確認できました。
(3)画面共有機能を用いた具体的な指導が可能(004)
Web会議システムの機能の一つである画面共有機能を使用することで、その場で気管挿管に関するプロトコルや教材、録画した動画を共有することで、指導に具体性を示すことができました。
(4)クリアな双方向の音声通話を確保(005)
音声通話は良好であり、受講者と指導者の音声によるコミュニケーションは十分とることができました。
受講者側の動画を流します。このように現場活動に即し、画像伝送システムを介した気管挿管オンライン指示を想定した実践的な講習も行うことができました(006)。
(5)ネット回線帯域状況の重要性
当局が保有する有線ケーブルを使用し、Web会議システムを使用したため遅延なく動画配信を行えましたが、他部局のインターネット使用が頻発する12時前後の回線帯域が一時的に狭くなり、画質が低下し動画遅延がみられることがわかりました。
003
複数カメラによる、十分な視野を確保
004
画面共有機能を用いた具体的な指導が可能
005
クリアな双方向の音声通話を確保
006
実践的な講習も行うことができる
4.考察
Web会議システムを活用した遠隔指導は簡便な設定のみで直接指導と同等の指導を行えることが確認できました。
今回の講習内容では3つの映像で必要な情報を収集することができましたが、その他の研修を行う場合は研修内容に応じて、カメラ位置を定常化する必要があると考えます。そうすることで、指導的立場にある者から手軽に効果的な研修を受けられる環境が構築でき、地理的格差や感染症対策等からの制約を排除し、集合研修を行えることが可能であると考えます。
今後、Web会議システムを活用することで研修の実施機会も増し、全ての救急隊員に等しく知識や技術を吸収する機会を提供できることが見込まれます(007)。
007
Web会議システムを活用することで全ての救急隊員に機会を提供できる
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