230821応急処置アップデート Q and A 10 『顔面の腫れ』

 
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救急の周辺

 雑誌 健康教室 2023年1月号50-1

応急処置アップデート Q and A

唇の腫れ

目次

Q

先日、口を打撲した児童がおり、上唇がくちばしの様な形に腫れあがり、下唇が隠れるほどだったので大変驚きました。

意識は清明で目の見え方にも変化なく、歯のぐらつきなもなく、口腔内の出血は収まったので冷やしながら様子をみていましたが、対応に悩んだ事例でした。

唇を打撲したことによる腫れはこんなにも大きくなるものなのでしょうか。また、このような場合、どのような点を観察し、対応をするとよいのでしょうか。

―小学校の先生からのQ

A

1.唇は容易に腫れます。血管が多いこと、組織の結合が緩いこと、表面の皮膚が薄いことが原因です。

2.止血後に、腫れが唇だけなのか、喉などの気道も腫れているか確認しましょう。処置は冷やすことくらいしかありません。アレルギーで唇が腫れる場合には窒息する可能性がありますので目を離さないように。

解説

1.唇の構造(001)

 

 

唇の表面は皮膚の他の部分と異なり赤く見えます。またよく伸び縮みします。

両方とも同じ重層扁平上皮で覆われているのですが、唇は角化層がとても薄いこと、皮脂腺が少ないこと、汗腺がないこと、真皮には脂肪が少なく毛細血管が非常に多いことから、血管が透けて赤く見えます。

真皮にはコラーゲンを主成分とする膠原線維(こうげんせんい)があり、これが皮膚を硬く破れづらくしています。唇は食べたり喋ったりするときに伸び縮みしやすいよう、膠原線維があまりありません。美容整形で唇を厚くするためにコラーゲンを注入すると唇は硬くなります。

外力がかかると、(1)血管が多い→内部の出血やリンパ管からのリンパ液漏出がすぐ起きる、(2)組織の結合が緩い→血液などが簡単に広がる、(3)皮膚が薄い→簡単に膨らむことから、唇は大きく腫れます。

2.観察項目と処置(002)

 

(1)出血

唇や口腔内の出血点を確認し、ガーゼで圧迫止血をします。唇は大きく切れていたり歯で貫いたりしても止血で困った経験はありません。唇には複雑に筋肉が走っていてこの筋肉が収縮することで止血されるのだと思います。

(2)傷の状態

裂けて開いているような傷は病院へ行って縫ってもらいます。歯科、形成外科、耳鼻科が該当します。歯科は歯だけではなく、唇や舌を含めた口の中全体を専門としていますし、一緒にぶつけた歯も見てもらえますのでお勧めです。

唇は血流に富むことから、よほど大きな傷でない限り見た目もわからないほど綺麗に治ります。

(3)口腔内の状態

歯の状態は必ず見ます。グラグラしているようなら歯科を受診させます。

(4)鼻と目

鼻出血の有無、鼻梁の変形(鼻骨骨折)の有無を確認します。視力や視野の異常がないかも確認しましょう。

3.アレルギーで唇が腫れたとき(003)

 

果物などの食物アレルギーでも唇が大きく腫れるときがあります。通常は唇だけ、ひどいと舌までですが、咽頭・喉頭まで腫れることもあります。この場合は窒息する可能性があるので救急車を呼びましょう。息がしづらい、声が枯れる、呼吸に伴いヒューヒュー聞こえるなど、喘息やアナフィラキシーと同じ 症状を呈します。

こんなことがありました

中学3年の男子生徒が昼休みに体育館でボール遊びをしていたところ、足を滑らせ転倒しました。右顔面を床に強打し、痛みを訴え保健室に来室しました。

来室時は、右顔面の頬骨あたりに皮下出血、腫れ、圧痛が見受けられました。手足のしびれも若干あり、神経損傷や骨折の可能性も考えられるので、保護者に来ていただき、氷嚢で冷やしながら、医療機関を受診しました。

結果、右顔面挫傷と診断され、幸い後遺症も無く、2週間ほどで治癒しました

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