230829今さら聞けない資機材の使い方 116 救護所運営訓練の簡易化 塩谷広域行政組合消防本部 関 直志

 
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基本手技


近代消防 2022/12/11 (2023/1月号) p86-9


プロフィール
関直志(せきなおし)
塩谷広域行政組合消防本部
消防士拝命平成19年
救命士合格平成26年
趣味:薪活、登山、沢登り、川下り、キャンプ


救急隊員シンポジウムシリーズ

救護所運営訓練の簡易化

関直志

栃木県、塩谷広域行政組合消防本部

目次

思いつくまで

当消防本部では多数傷病者対応演習という訓練を年に1回実施しております。訓練実施者約50名、運営担当や傷病者役を含めると約90名の職員が、非番者や週休者メインで訓練を実施しています(001, 002)。

そんななか私も訓練の先着救急隊長役に抜擢されました。外部講習会にも参加し、多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(MCLS)でもインストラクターを10回程度は経験しているということで、救護所リーダーやってやろうじゃないか!という意気込みで訓練に臨みました。

しかし結果は無残なものでした。活動方針は伝わらず、情報整理もできず、うろちょろしていただけだったと思います。

訓練を終えて、私は勉強して分かった気になっていただけだと、もっと出来ると思っていましたが、訓練は実際にやってみないと分からないと痛感しました。

そんな訓練の経験値ですが、先着救急隊役は3名です。さらにその隊長役はたったの1人です。救護所リーダーという経験値を得られたのは私だけでした。強烈に思ったことは、この訓練経験値の貴重さ!失敗を含めてみんなと共有したいということです。考えれば、年に一度の訓練では当組合45名の救命士全員が救護所リーダーを経験するのに、45年もかかってしまいます。

もっと訓練がしたい。訓練回数を増やしたい。そう思いました。でもそう簡単にできないのが実情です。まず人数が必要です。当務でやるには人数が足りません。しかし非番となると、時間外勤務手当が発生してしまいます。訓練への運営準備や、訓練本番の準備も大変です。さらに事故車両や使用資機材も大量に必要です。

ではどうしたら?ということで訓練を簡略化しました!

 

 

001

訓練の風景。本署の敷地内。事故車両を用意しての訓練

 

002

設置された救護所

用意するもの

傷病者役は人からラミネートシートに変えました。事故車両は、事務所のデスクや仮眠室に変えました。救護所は車庫や食堂に設置しました。訓練への準備品を003に示します。EXCELで作ったトリアージタグ、車両のナンバリングシート、傷病者情報ラミネートシート、傷病者一覧表と、主にこれだけです。

 

     

003

準備品一覧

ラミネートシート

傷病者情報ラミネートシート表面と裏面で構成されています(004)。活動隊はそのフェーズで必要な情報だけをとっていくように使用します。表側の上半分には主にSTARTトリアージで得られる情報が記載されています。左側に活動隊のセリフ、右側に傷病者の回答セリフが記載されています。「救急隊です歩けますか?うつろな表情をしています(005)。「呼吸みますね。呼吸数24回。脈拍見ますね。120回冷汗湿潤あり。この傷病者、循環の異常で赤です。」といった具合になります。表側下半分には人定情報が記載されています(006)。裏面には、生理学的・解剖学的(PAT法)トリアージにて得られる情報が記載されています。頭部、顔面部から、下肢、上肢までの情報が記載されています(007)。

 

004

傷病者情報ラミネートシート表面と裏面

 

005

表側の上半分には主にSTARTトリアージで得られる情報が記載されている

 

006

表側下半分には人定情報が記載されている

 

007

裏面には、頭部、顔面部から、下肢、上肢までの情報が記載されている

訓練の様子

事務所のデスクを事故車両に見立てます(008)。事務所のデスク上にランダムに傷病者ラミネートシートを置いていきます(009)。活動隊は傷病者ラミネートシートの情報をもとに、トリアージを実施してタグを記入していきます(010)。

次に事務所内で傷病者が集積されてきて、PAT法トリアージをしているフェーズです(011)。集積された情報をもとに一覧表を作成します(012)。

こちらは訓練の仮眠室バージョンです。仮眠室を事故車両に見立て、ナンバリングしている様子です(013)。仮眠室内にランダムに傷病者ラミネートシートを配置しております(014)。仮眠室なので、運転席や助手席などの設定もできます(015)。傷病者ラミネートシートの情報をもとに、トリアージとタグの記入をしていきます(016)。

指揮所と一時集積所の様子を017に示します。

 

008

事務所のデスクを事故車両に見立てる

 

009

事務所のデスク上にランダムに傷病者ラミネートシートを置く

 

 

010

傷病者ラミネートシートの情報をもとにトリアージタグに記入する

 

011

事務所内で傷病者が集積された段階でPAT法トリアージを行う

 

 

012

集積された情報をもとに一覧表を作成する

 

013

仮眠室を事故車両に見立てナンバリングしている様子

 

014

仮眠室内にランダムに傷病者ラミネートシートを配置

 

 

015

運転席や助手席などの設定もできる

 

016

傷病者ラミネートシートの情報をもとにトリアージタグを記入

 

 

017

指揮所と一時集積所の様子

考察

簡易的でも訓練できました。運営人数の節約ができました。訓練への準備時間と、訓練時間、撤収時間も短縮できました。また当務中に当務隊のみで訓練ができました。

訓練後の隊員の声を018に示します。

個人的な感想としては、多数傷病者事案の最大のボトルネックが救護所運営であると思います。その訓練がたくさん経験でき、また救命士みんなが救護所リーダーを体験できたことが大きいと思います。また当務隊で課題を共有できたことで、救命士以外にも当事者意識が強く生まれました。議論も活発になり、当務隊で共通認識をもって現場に臨めるようになりました。最後に訓練の大切さや、繰り返し訓練すること、工夫して訓練することの大切さを再認識しました。

018

訓練後の隊員の声

 

 

 

 

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