230906救急隊員日誌(223) ひらめきはスキルである

 
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救急隊員日誌
月刊消防 2023/01/01, p49
 
 
 
空飛ぶクルマ
 
 
 

閃いた!


救急出動指令。「65歳男性、自宅で突然倒れて意識呼吸がありません。」と通信指令室から出動途上で無線を受けた。私は、救急隊長として、隊員へ酸素バック、半自動除細動器(除細動器)、特定行為バック、吸引機、布担架の資機材準備を指示し、酸素バックのバックバルブマスクの接続、特定行為バックのラリンゲアルチューブの準備及び点滴ラインの準備を指示した。現場到着時、特定行為の準備をしていたため、救急救命士指示要請後、早期に気道確保及び静脈路確保が実施できた。

私は救急隊長になって5年が経ったが、通報内容で心肺停止(CPA)事案の時は、救急車内で、バックマスクの準備と特定行為の準備を行っている。しかし、先日、消防本部警防課の救急担当から「特定行為の資機材の消耗が早く、搬送したCPAの件数以上に資機材が要求されている。予算が限られているので、使用方法を考えてほしい。」と指摘を受けた。救急担当の言っていることは理解できたものの、早期の特定行為実施のために救急活動していることから、言い争いになってしまった。

言い争いの原因は、通報内容がCPA事案であった場合に、明らかにに時間経過がある場合を除いてすべてにおいて特定行為の準備を救急車内で実施していたのだ。通報内容がCPAであった事案の内訳は、搬送したCPA事案が約4割、死後硬直などで不搬送となった事案約4割、通報内容はCPAであったが接触時CPAでなかった事案が約2割あるため、約6割の事案で、特定行為の準備していた資機材が消耗しているとのことであった。

この言い争いを聞いていた若手救急救命士から「使用しなかった特定行為の資機材は、消毒、清掃して救急訓練に使用する資機材として有効活用しましょう。資機材もたくさんあれば、その分たくさん訓練ができますよ。」と言ってきた。消防本部警防課の救急担当から言われた時、その発想が思い浮かばず言い争いとなってしまったが、若手救急救命士からのひらめきを、後日、救急担当に話をすることで納得してくれた。

「ひらめきはスキルである。」の著書、瀬田崇仁氏によると「ひらめきとは見事なアイデアや考えを魔法のように思いつくこと。そのひらめきは、決して魔法ではなく、スキルとして誰でも身につけていけるものである。」と言っている。

若手救急救命士のひらめきで救急訓練も楽しくなってきた。訓練用の資機材が増えたことで、様々な特定行為の訓練が実施できるようになった。この取り組みを始めてから、接触して器具を使用した気道確保までの時間とアドレナリン投与までの時間が約2分短縮できている。皆さん、通報内容でCPAが疑われる事案の時、出動途上の救急車内でどうされていますか。救急担当の予算のことも理解しつつ、今後も1秒にこだわった救急活動を行っていきたい。

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