雑誌 健康教室 2023年2月号p48-9
応急処置アップデート Q and A
目次
Q
球技大会や体育大会時に、足がつったと訴える生徒がきます。
(1)どのように対処するのがより良いのか、
(2)また回復しない場合はどの時点で病院へ行くように伝えるのか、また
(3)足がつったのか肉離れなのかなど見極めの参考になること
があれば知りたいです。
中学校の先生からのQ
A
足がつった時の対処は健康教室2022年5月号の本連載で解説しています。
今回は肉離れを中心に解説します。
解説
1.肉離れの原因(001)
関節を動かすためには関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が必要です。片方が他方の力に負けて筋肉が断裂するのが肉離れです。
2.こむら返りと肉離れ(002)
足のつり(こむら返り)はふくらはぎの不随意の収縮を指し、力が入ったままの状態になります。また強い痛みを伴います。収縮が治れば症状は消失し後遺症もありません。
肉離れは骨格筋の断裂です。骨格筋の強い収縮に筋肉自体がついて行けなくなり、筋線維が突然切れるものです。人によっては「ブチ!」「バシ!」感覚があります。発症直後から強い痛みを感じ、筋肉に力が入らなくなります。受傷部分は皮膚の凹みや皮下出血を見ることもあります1)。
3.肉離れの疫学
好発部位はふくらはぎ、太ももの前面、ハムストリングス(太ももの背面)です(003)。運動の種類によっては腕や腹筋でも肉離れを起こすこともあります。
肉離れは(1)年齢が上がるほど起こしやすい(2)過去に起こした人はまた起こす可能性が高い、ことが分かっています。身長、体重、性別、左右については発生の危険因子ではありません2)。他の研究では、左右下肢の筋力のアンバランス、柔軟性低下、筋疲労が発症に関わっているとしています3)。
重症度は、ストレッチの強さと痛みで判断します4)(004)。
4.応急処置
PRICE(P:protection(保護。患部を守る)、R: rest(安静)、I:icing(冷却)、C:compression(圧迫)、E:elevation(挙上))を行います。
5.リハビリ
肉離れが厄介なのは、一度起こすとその患者の1/3が1年以内に再び肉離れを起こし、しかも前回よりも重症になることです5)。もし受傷した児童生徒がスポーツ選手だったら、専門家の指導を受けながらリハビリすることをお勧めします。
こんなことがありました
球技大会や体育大会時は、いつもよりはりきって動く生徒が多く、けがが予想されるので、事前に水分補給や筋肉をほぐすことなどを伝えます。体育の授業後の様子などで心配な生徒にはピンポイントで話をします。実際に筋肉に触らせてもらうこともあります…。でも、やっぱりけがをします。
体育大会や球技大会で、ハムストリングス(太ももの背中側)を押さえて走れなくなったら、まず肉離れを疑います。肉離れかどうかを確認する方法は、(ハムの場合)膝の方からゆっくり両手人差し指の側面で触っていき、痛む個所を確かめます。ピンポイントで痛みがあれば肉離れを疑い、冷やして圧迫包帯で処置します。足がつるのは、大縄跳びなどの場面が多いです。まずは、痛みがある部位の筋肉の硬さを確認し、がちがちに固まっていたり、足の指がうまく動かせない場合はつっていると仮定して、その部分をゆっくり伸ばしていきます。痛みが残ることがあるのは、ある程度しかたがないとして、数日しても痛みが引かなければ病院受診をすすめることにしています。
引用文献
1) J Orthop Sports Phys Ther 2010 Feb; 40(2):67-81
2)Br J Sports Med 2017 Aug:51(16):1189-94
3)Sports Med 2012 Mar 1; 42(3)209-26
4)http://jossm.or.jp/series/flie/005.pdf
5)J Orthop Sports Phys Ther 2021 Feb; 40(2);67-81
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