近代消防 2022/1/11 (2023/2月号) p110-11
いまさら聞けない資機材の使い方
全国救急隊員シンポジウムシリーズ
新型コロナ対応
A
トーマス・マスク:トーマスチューブホルダーでマスクを固定する
目次
はじめに
コロナ禍の人工呼吸では、バックバルブマスクのバルブとマスクの間に人工鼻を装着してエアゾルの拡散を防ぐこと行われます。しかし、傷病者を移動させる際にはマスクを保持することが出来ずエアロゾル防止とはなりませんでした。そこで、現状使用しているものでマスクを固定することはできないかと考え、普段チューブ固定に使用しているトーマスチューブホルダーでマスクを固定することにしました。
作り方
トーマスチューブホルダーにはバイドブロックの部分があり、そのままではマスク部分と密着することができません。バイドブロックの部分を切り取る必要があります。
(1)トーマスチューブホルダーの白いパーツ(001)を
外す(002)
(2)カッターの刃が赤くなるまで熱する(003)。
プラスチックが少ないステンレス製がオススメ
(3)冷めないうちにバイトブロック部分の切り取り作業(004)。2~3回で切れます。
(4)切り取り作業終了(005)
(5)外した白いパーツを取り付けます(006)
(6)マスクと人工鼻を装着すれば「トーマス・マスク」の完成です(007)。
最初は1つ作成するのに15分程度時間を要していましたが、当消防本部の技工士が2分程度で作成できるようになりました。
使用
さっそく人形に装着してみました(008)。トーマス・マスクには人工鼻が付いているためエアロゾル防止となっています。さらにトーマス・マスクは移動の際にマスクずれを生じることがありません。この状態でラリンゲルチューブ(LT)を挿入(009)してみると、普段から固定に使用しているトーマスチューブホルダーのため活動には支障ありませんでした。むしろ既にトーマスチューブホルダーが準備してあるため、LT挿入から固定がスムーズとなりました(010)。
008
人形に装着
009
LTを入れたところ
010
そのままLT固定に使える
現場での使用
利点と欠点を表1に示します。LTを挿入する前からトーマスチューブホルダーが存在することにより口腔内観察に遅れが生ることが主な欠点です。
現場活動でトーマス・マスクを使用してみました。マスク保持、エアロゾル防止だけではなく、LTを挿入する際には既にトーマスチューブホルダーが準備してあるため、固定作業が今まで以上にスムーズとなりました。それは、接触時には聞く、話すことが多く、手が空く時間にあらかじめトーマスチューブホルダーを準備できることが理由であると考えました。欠点と思われた口腔内観察の遅れに関しても、訓練や実証実験を重ね、トーマス・マスクの使用熟練が増したことによって口腔内観察の遅れを回避できるようになりました。
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表1
トーマス・マスクの利点と欠点
利点
・エアロゾル防止(特に搬送中に有効性がある)
・隊員のストレス軽減
・ラリンゲアルチューブにつなげることが可能
欠点
・口腔内観察に遅れが生じる。
・トーマスチューブホルダーの加工が必要
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