231207_VOICE#86_やるか、やらないか

 
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主張

月刊消防 2023/03/01, p80

月刊消防「VOICE」

関直志(せきなおし)
塩谷広域行政組合消防本部
栃木県塩谷町出身
消防士拝命平成19年
救命士合格平成26年
趣味:薪活、登山、沢登り、川下り、キャンプ

やるか、やらないか

私は大学生時代に探検部に所属していました。そこには熱意ある先輩方がいて「探検は報告してこそ社会的価値があり、報告がないとただの自己満足にすぎない」と説教を受け、新入生の私には珍紛漢紛な話でした。

また探検部は学生探検連盟なるものを作り、各大学で交流を図っていました。その目的は探検活動の報告会と探検への隊員募集ですが、特に盛り上がるのは懇親会でした。そこには活動フィールドを海外に広げる猛者もいて、探検に対し更なる熱意が渦巻いていました。レベルの違いに委縮し、取り繕って「いつかこんな事がしたい」なんて言うものならば、「それは本当にやりたい事ではない。本当にやりたい事は、もうやっている事だ」と一蹴されました。詭弁のように感じつつも胸に響きました。そして更には「やるか、やらないか」と言ってきます。ガツンとやられました。その言葉は今でも胸に残っており、私の座右の銘となっています。

社会人になり探検は出来なくなりましたが、趣味として沢登りや川下り等を続けていると、同僚達からやってみたいと相談を受けました。興味はあるけどやっていない状況です。これは「やるか、やらないか」の話だと思いました。誰でも初めの一歩は躊躇するものですが、一回やって満足するか、さらに興味が増すかは、やってみないと分かりません。私は後者を期待しつつ、装備品も含めて全てサポートするからとりあえず行こうと誘っています。

仕事も「やるか、やらないか」に繋がるところがあると思います。救急救命士への道も、その選択の一つでした。救急救命東京研修所での熱量は凄いものでした。教官や教授だけでなく仲間からの刺激も多く、ITLSやメディカルラリーといった世界を知り、やりたいという気持ちのまま手を出し、足を踏み入れました。

外の世界に行く事は、お金も時間もかかりますが、貴重な知識や技術を学べます。出来る限り職場に還元してきましたが、新たな世界を知るほどにやりたい事も増えてきました。ただ、思うようにいかないのも現実です。そこで私は方法や手段を変えて、少しでも出来る事を探して『DIY』の精神を真似ています。自分で出来るところは自分でする。出来る事を探して創意工夫してきた事で、救急隊員シンポジウムでの発表にも繋がりました。そうして「やる」を選択してきた延長に、玉川進医師からご縁を頂きこの原稿があります。また、やりたい事をやってきたお陰で、楽しく充実した人生を過ごす事ができ、感謝の意に尽きません。

「やるか、やらないか」決断するのは、いつも自分です。難しい時もあります。それでも「やる」を選択した後には、経験値が増え、見えてくる世界が変わります。私はそれが楽しくて、大好きです。そして仲間や後輩達がやりたいと悩んでいる時は、一歩踏み出す勇気に繋げたいです。出来ない事を嘆くより、出来る未来を信じて進んで行こうと思います。
まだまだやりたい事が多い38歳、気持ちは少年。新世界への探検に胸を膨らまし、今日を楽しんでいます。

 

主張
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