月刊消防 2023/05/01, p85
月刊消防「VOICE」
「まだ、病院は決まらないのか?」、「いつになったら病院に向かうの?」こんな言葉を救急現場で傷病者や家族から言われたことはありませんか?高齢化社会が進み、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、医療現場が逼迫している中、救急出場の増加に伴い現場滞在時間が遅延することが少なくありません。
今後も出場件数が増加することが想定されている中、限りある救急資源を有効活用していくためには、可能な限りの現場活動時間の短縮が現在の課題となっています。
埼玉県では、医療機関収容所要時間短縮に向けた取り組みとしてタブレット端末の活用やスマートフォンアプリ機能の導入による救急搬送体制の強化や搬送困難事案受け入れ医療機関及び脳梗塞治療ネットワーク等の受入れ医療機関の整備を行っており、取り組みの効果は明らかとなっています。
当消防本部でも、令和3年4月から現場滞在時間短縮に向けた3つの取り組みを開始しました。
1つ目の取り組みは検証要領の改訂です。収容依頼開始まで一定時間要したものを署内検証の対象とし、現場活動時間短縮に意識を向けることにしました。現在では、収容依頼開始までの時間を短縮するため、プレアライバルコールの積極的な活用を実施しています。
また、署内事後事例検討会や管内二次医療機関との意見交換会などを開催し、救急活動の検討の場を設け、相互理解を深め、連携強化を目指しています。
2つ目の取り組みは、指導救命士の同乗実習です。客観的に評価を行い、問題点を抽出し、現場活動の共有化を目的としています。昨年度は、同乗実習の結果からプロトコール研修と接遇研修を行いました。
3つ目の取り組みは、通信指令業務研修です。救急要請時及び救急隊現場到着時の緊急度や重症度、各分野における判断の相違点を検討することで口頭指導を含めた救急業務の向上が目的です。
今後の展望として、現場活動時間を遅延させている原因を「見える化」することです。現場滞在時間を遅延させている原因や様々な問題点を抽出し、集計したデータを元に検証を行い、解決に向けた取り組みを開始したいと思っています。
高齢者の人口は2042年まで増加し続けます。消防職員に求められる期待は、今後より一層と大きくなると思います。多くの傷病者を早期に適切な医療機関に搬送し、社会復帰率向上を目指して、今後も傷病者や家族の声を大切にしたいと思います。
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