240804応急処置アップデート Q and A 14 『腕に金具が食い込んだ』

 
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救急の周辺

雑誌 健康教室 2023年5月号(2023/04/10発行号)p62-3

応急処置アップデート Q and A

『腕に金具が食い込んだ』

目次

Q

小1の男子児童が休憩時間に鬼ごっこをしていました。鬼に追いかけられて、逃げるときに防球ネットのネットをつかんで、支柱を軸にして体を回転させるように方向転換しました。その際、支柱にある、ネットを固定するための金具に右前腕部の皮膚が食い込んでしまいました。

食い込んだ皮膚は外すことができない状態で、他の児童が職員室に助けを呼びに来たため、職員が駆けつけたところ、開放性の創傷で、しかも金具に食い込んだままだったため、止血することもできませんでした。そのため、児童を脇から支えて立たせた状態で、救急車が来るまで励ますことしかできませんでした。

幸い大量の出血もなく、本児の意識もしっかりしていたため、救急隊に引き渡すことができましたが、傷口が外気に触れたままでよかったのかどうか、さらに大量の出血があったり、外傷性ショックで意識を失ったりして倒れてしまったらどうすればよかったのか、教えていただきたいです。

小学校の先生からのQ

A

食い込んでいる異物は無理に外さず、救急隊や救助隊が来るまでそのままを維持します。

解説

1.異物が刺さり込んでいるときの原則

杭や刃物などが体に刺さっている場合は、抜いてはいけません。異物が破れた血管などを圧迫して止血している可能性があるからです。刺さっているものが動かないように外から固定して、そのまま病院へ運びます(001)。文章からはどれくらいの大きさのものが刺さりこんだのかわかりませんが、大きい金具なら支柱から外せるなら外して、金具を皮膚につけたまま病院へ行きます。

今回の症例は患児の聞き分けが良くそのままでいたので良かった。患児が暴れると傷が広がり出血も多くなります。

  

2.異物の脇から出血している場合

物が刺さっている場合はその脇から出血することがあっても量はそれほど多くはありませんので、穿刺部周囲を軽く圧迫するだけで十分です(004)。傷口が外気に開放されていても短時間なら問題になりませんが、長時間だったり傷の面積が広い場合には、湿潤療法のようにラップ材を巻いた上で圧迫すれば創面保護になります(005)。

3.意識を失なった場合(006)

痛みや血を見たりして気が遠くなることはたまにあります。体重がかかって皮膚が裂けることのないように体を支えつつ救急車を待ちます。大量の出血があるとすれば、刃物などが体に刺さって大きな血管が傷つく内出血になります。急激にショック状態になりますので、人を集め、AEDを用意して事態に備えます。心肺停止になった時には、できる範囲で心肺蘇生を行います。

養護の先生の症例

 私は新卒で小規模校に配属されました。驚く方も多いと思いますが、日本の端の養護教諭を配置できるかギリギリの小規模校では、外傷での来室は年間数えるほどしかありません。期限の切れた未開封の滅菌ガーゼなどをいつの日かに備えて、買い替えるような日々を送っています。

 経験を積む機会が少なく、相談相手もいない今の学校では、判断に迷うことばかりです。

(1)中2生女子:腹痛で来室し、お腹の左上が痛いと訴えてきたため、対応に迷いました。本人は温めると楽になると言ってカイロを当てていましたが、炎症等の腹痛の場合、この対応ではまずかったと反省しました。病院受診し、受診し、結局原因不明です。

(2)中1男子:体育のソフトボールで、ピッチャーのボールが首(のど)に当たりました。その時少し痛みを訴えましたが、そのまま最後まで参加しました。昼の時間にのどの中が痛いと痛みを訴え、湿布をはり対応した。腫れ、変色、のどの内部の赤み、腫れは見当たらなかったのですが、首・喉の外科の対応として正しかったのでしょうか。

 また、児童生徒数が基準に満たず、養護教諭が配置できない学校もちらほらと見受けられます。そのような学校では、一般教諭が保健の分掌を持ち、児童生徒の来室対応を行っています。児童生徒数が少ないと、外傷による来室人数もとても少なくなりますが、大きなケガや事故が起こらないとは限りません。そこで、養護教諭はもちろんのこと、一般教諭の方でも実践できるような、出血時の処置の基本的事項を教えていただきたいです。

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