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HTMLにまとめて下さいました粥川正彦氏に感謝いたします
目次
救急隊員のための基礎講座 番外編
昏睡事例
玉川先生が月刊消防で載せる予定であったがスペースがなくて載せられなかった原稿です。
事例1:低血糖発作
低血糖発作。65歳女性。経口糖尿病薬投与中。朝食、昼食ともいつもと変わらない様子だった。夕食の準備をしている最中、突然意識消失し台所に倒れ込んだ。救急車で来院。呼べば目を開けるが、会話はできなかった(JCS20)。血糖を測ったところ40mg/dLであり、ただちに50%ブドウ糖40mLを静注した。患者は2分後に意識を取り戻した。その後ブドウ糖液を点滴した。患者の話では、「今までに発作を起こしたことはない。医者からあめ玉をなめろとは言われていたが、今回は空腹感やイライラ感はなく突然意識が遠のいた。最近違う薬に変わったわけではない」とのこと。太ってもいいから食事を作りながらつまみ食いをすることを勧めた。
事例2:ケトアシドーシス性昏睡
ケトアシドーシス性昏睡。12歳男子。暑い夏の日に、スポーツをしていた。その後も屋根裏部屋に閉じこもり、あまり出てこなかったらしい。呼んでも部屋から出てこないので家族が覗いたところ、意識消失した男子を発見した。来院時、痛覚刺激にわずかに腕を動かす程度(JCS200)。それも1時間後には動かなくなった。血糖は450mg/dL、ケトン体強陽性。ただちにインシュリン投与と輸液を開始した。CTでは脳浮腫が確認された。脳の浮腫は日を追ってひどくなり、1週間後には脳回(脳のひだ)が全く見えなくなった。その後男子は脳死と診断された。
昏睡が糖尿病の初発症状であった。もともと潜在的には糖尿病を持っていたのだろうが、脱水を契機に発症したものである。家族もよそよそしい感じで、家族がちゃんと気を付けていれば少なくとも死ぬことはなかっただろう。
事例3:高浸透圧性昏睡
高浸透圧性昏睡は、長い期間をかけて意識が変容していくことが多い。50歳女性。配偶者は死亡。義母と二人暮らし。2年前から糖尿病の診断で投薬を受けていたが、血糖のコントロールは不良で、紹介入院による生活指導を勧められていた。1カ月前に同居している義母が体調を崩した。2週間前から患者は義母によそよそしくなり、1週間前から義母に「あんたがいるから私は病気になるんだ」「死んでしまえ」などと暴言を吐くようになった。常に落ちつきがなく、夜も家庭内をうろついた。それでも食事は作っていたものの、息子が里帰りした受診当日には料理も作らず文句ばかり言っているので、息子が近所に相談し、病院に電話をしてきた。近所の人も数日前から何となく変だ思っていたらしい。はじめは「変なので入院させて欲しい」との話だったので、てっきり老人の社会的入院だと思った。
息子の車で来院。意識はあるが軽い失見当識を認めた(JCS2)。血糖は425mg/dLで、ケトン体は認めなかった。ただちにインシュリンの持続投与と輸液を開始し、翌日には意識は清明となった。患者はおとなしい感じの人で、入院前3日間のことは全く覚えていなかった。暴言については、機嫌が悪かったと答えた。
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