近代消防 2019年10月号 p68-72
今さら聞けない資機材の使い方 77 自動心肺蘇生器(CLOVER3000) ( 唐津市消防本部消防署救急第一係 原口良介 )
いまさら聞けない資機材の使い方76
自動心肺蘇生器(Clover 3000)
000
表紙写真
目次
1.はじめに
こんにちは。唐津市消防本部の原口良介と申します。
私が住む唐津という街は佐賀県の北西に位置し、人口は約12万人、海と山と川に囲まれた自然豊かな土地柄で新鮮な食の宝庫です。特に「呼子のいか」は絶品です。九州に来た際は是非お立ち寄りください。
2.CLOVER3000について
さて、今回紹介する資機材は当消防本部で活用している自動心肺蘇生器(株)コーケンメディカル製「CLOVER3000」です。
まずは、その仕様と各部名称、特徴から紹介したいと思います。
(1)構成(001;近代消防の方でコーケンメディカルに絵の使用許可を取ってください)
1)CLOVER3000本体
2)ターポリン担架(収納バック兼用)
3)供給ガスセット(酸素ボンベ+キャリーバッグ)
(2)特徴
1)日本人の体型を考慮した設計で、大柄な方から小柄な高齢者まで確実な胸骨圧迫が可能。(002)
002
日本人の体型に合うサイズ
2)活動環境の条件が悪い場合においても、胸骨圧迫を中断することのない搬送が可能 。(003)
003
搬送中でも胸骨圧迫を継続
3)胸骨圧迫+人工呼吸のオールインワンシステムで絶え間ない酸素化血液循環が可能。(004)
004
胸骨圧迫+人工呼吸のオールインワンシステム
(3)仕様(表1)
表1
仕様
(4)各部名称(005-012)
005
CLOVER3000本体
006(005とほとんど同じなので005と006のどちらかを使ってください)
CLOVER3000本体インサート写真。背面部ガスインレット拡大
007
ターポリン担架
008
ボンベキャリーバッグ
009
メイン操作パネル
010
サブ操作パネル
011
本体と担架を持ったところ
012
ボンベキャリーバッグを担いだところ
3.取扱い手順
次に、当消防本部で活用している取扱い手順について紹介します。
1)ターポリン担架の展開
ターポリン担架をバックボード上に展開します(013, 014)。
バッグボードを傷病者の横に設定できる場合は、バッグボードにガイドラインがあるので、胸骨圧迫の位置に合わせて展開しておくと、 傷病者の移動がスムーズになります。
013
傷病者の左側に位置する
014
胸骨圧迫の位置に合わせる
2)アーチアセンブリの離脱 (015)
アーチアセンブリロック解除ボタン(左/右)を同時に操作して 胸厚メモリを最大に移動しておきます。
バーチカルロッドリリースボタン(左/右)を同時に操作してバッグボードから取り外しておきます。
取り外したアーチアセンブリは、活動の支障にならない場所に置いておきます。
015
アーチアセンブリを取り外す
3)駆動ガスホースの取り付け(016)
駆動ガスインレットと酸素ボンベに、駆動ガスホースを取り付けます。
酸素ボンベの弁を解放し、本装置にガス(酸素)を供給します。
016
駆動ガスホースの取り付け
4)バックボードへの収容(017)
頭部側の合図で傷病者をバッグボードに乗せます。
傷病者用のショルダーベルト(左/右2本)をしっかり広げておく事で、傷病者に装着する際の活動を円滑に行うことができます。
017
傷病者をバッグボードに乗せる
5)アーチアセンブリの再装着(018)
アーチアセンブリをバッグボードに再びセットして固定します。
この時、胸骨圧迫者の腕の間を上手く通して胸骨圧迫の支障にならない様に取り付けます。
018
アーチアセンブリを取り付ける
6)本装置の起動、設定モードの確認(019)
本体の電源をオンにして起動させます。表示画面にて設定モードの確認をします。
(当消防本部では初期設定を、同期モード、CPRサイクルON、換気量400ml/回にしています。)
019
電源を入れ設定モードを確認する
7)胸骨圧迫位置の確認(020,021)
レーザー放射スイッチを操作して、胸骨圧迫位置が適切かを確認します。もしずれている場合は傷病者を移動させて正しい位置にします。
020
レーザー放射スイッチ
021
胸骨圧迫位置が適切かを確認
8)胸骨圧迫パッドの取り付け(022)
アーチアセンブリロック解除ボタン(左/右)を同時に操作して 下方向にスライドさせて、傷病者の胸に胸部圧迫パッドが軽く接触するように調節します。
胸厚メモリ位置が左右均等になる様にセットします。
022
胸骨圧迫パッドを取り付け位置を調節する
9)胸骨圧迫開始(023)
位置に問題なければ、圧迫START/STOPスイッチを操作して胸骨圧迫を開始します。
023
圧迫START/STOPスイッチで胸骨圧迫を開始する
10)圧迫深度調節ツマミの操作(024,025)
圧迫深度調節ツマミを操作して、胸骨圧迫パッドの圧迫深度を調節します。
024
圧迫深度調節ツマミを操作する
025
胸骨圧迫パッドの圧迫深度が変わる
11)人工呼吸開始(026)
給気口にLコネクター呼吸チューブー呼吸弁ーフェイスマスクを取りつけます。
気道確保後、フェイスマスクを装着し、人工呼吸を開始します。
026
フェイスマスクを装着し人工呼吸を開始
12)傷病者の固定(027)
ショルダベルト(傷病者用)、下肢・腰部固定ベルト、上肢固定ベルトを使用して傷病者を固定します。
さらに、傷病者の下肢を収納袋に入れて保護します。
027
ベルトで傷病者を固定する
13)傷病者の搬送(028)
すべての設定が完了し、ターポリン担架上で傷病者と本装置とが安全に固定されてることを確認したら、ターポリン担架に付属する「持ち手」を持ち、頭部側の合図で持ち上げます。
028
搬送開始
14)車内収容~病院到着(029)
車内収容後、救急車積載の酸素ボンベに切り替えて、病院まで搬送します。
揺れる救急車内においても、安定した胸骨圧迫が実現可能となります。
029
揺れる救急車内でも安定した胸骨圧迫が可能
4.おわりに
いかがでしたか 。
今回紹介したCLOVER3000のみならず、自動心肺蘇生器を上手く活用する事が出来れば、活動環境が悪い条件下においても、胸骨圧迫の質低下や中断を防ぐことが出来ます。
しかし、あくまで心肺蘇生の基本である「胸骨圧迫と人工呼吸」(030)を正しく行う事が大前提であり、 本装置の操作によって起こりうる胸骨圧迫の中断時間や、現場離脱までの時間が長くなる事は好ましくありません。 資機材の保守点検を怠らず、日々勉学や訓練に励むことが重要だといえます。
最後に、今回このような執筆の機会を与えてくださいました玉川先生をはじめ、後押ししてくれた先輩、協力してくださった全ての方々に心から感謝いたします。
最後まで読んでいただきまして、誠にありがとうございました。
030
あくまで心肺蘇生の基本は「胸骨圧迫と人工呼吸」
5.著者
Haraguchi.JPG
名前:原口亮介(はらぐちりょうすけ)
所属:唐津市消防本部消防署救急第一係
拝命:平成21年4月
救命士運用:令和元年7月
趣味:カメラ、動画編集
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