240711救助の基本+α(89)入東Lader Rescue System「ラダーレスキューシステム」ラダーIII救助システム(建物3階からの救助システム) 入間東部地区事務組合 小川哲平

 
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基本手技

月刊消防 2023/12/01号 p24-7

入東Ladder Rescue System「ラダー・レスキュー・システム」~早期安静救助を目指して~

ラダーIII救助システム(建物3階からの救助システム)

目次


1考案経緯


建物3階において屋内からの搬出困難事案が発生した際、限られた状況下での救出が求められる現場があるかと思います。建物2階からの搬出困難事案であれば、消防救助技術の代表的な「はしご水平救助(二)」(以下、「水平(二)」という。)があります。しかし、この救助技術は三連はしごの高さに限界があり、3階からの救出時に選定できない場合があります。近年では3階建ての一般住宅も多く存在し、救助現場で建物3階からの搬出困難事案に直面することはないでしょうか。そこで私たちは、3階からの救出も水平(二)を応用することはできないだろうかと考え、訓練と考察を重ね、三連はしご、かぎ付きはしご及びロープレスキュー資機材を活用し、3階から要救助者を安静・安全に救出できるシステム、「ラダーⅢ救助システム」、(以下「LⅢシステム」という。)を考案しました。

 

2システム概要

 

⑴LⅢシステムの概略(写真2―1システムの全景)

 

システム全景

         

写真2-1 システム全景


⑵LⅢシステムが選択される救助現場

単刀直入に建物3階から要救助者を水平に保ち救出したい現場です。建物3階からの搬出困難事案においては、三連はしごを活用しても三連はしごの伸長量に制限があり有効な支点の高さがとれないなど、思うような救出ができないことはないでしょうか。上階等に支点を設けることができれば良いのですが、全ての現場はそうではありません。一方、本システムはウェビングテープを活用することで建物3階からの救出が可能になります。

 

⑶LⅢシステムの特徴


上記(2)で述べたように、三連はしごの伸長量の問題を解決することができ、約10mの高さまで救出可能になることが最大の特徴です。また本システムは、水平(二)を応用し考案した救助方法であり、小隊内で共有しやすい特徴があります。

 

3使用資機材(写真2-2使用資機材一覧)

 

三連はしごかぎ付きはしご
ウェビングテープ(イエロー×1、ブルー×1)
救助ロープ誘導ロープ小綱カラビナ×2トグル
クロスバーバスケットストレッチャー

↑使用資機材一覧

 

4システムのメリット・デメリット

 


⑴メリット


・上記「2-⑵」で述べたように、建物3階からの救出が可能となる救助方法
・使用資機材が少なく、システムの設定が容易で速い
・最低活動人員4名で救出可能

 

⑵デメリット(写真2-3はしご連結時の縮てい状況)

・はしごを連結させることにより、はしごの搬送、起てい、伸てい時等に注意が必要である。
(重さ約40kg、縮梯時、長さ約7.0m)

↑はしご連結時の縮てい状態

 

5活動の流れと設定詳細

 


⑴資機材の搬入


屋内が狭隘であれば、上階からバスケットストレッチャーを引き揚げる。この際、建物保護の観点から開口部に養生を実施する。

 

⑵地上での事前設定

ア三連はしごとかぎ付きはしごの連結


◎ここがポイント!


本システムは、はしごの連結部分が最重要ポイントです。連結部分の横ずれを限りなく防止し、より強固なものにするために結着箇所を上下二箇所にしました。連結部分の結着が緩いとかぎ付きはしごの横ずれが発生するため確実な結着が求められます。また、かぎ付きはしごを重ねる割合と支点とする横さんの選定が重要であり、シーソー現象を発生させない位置を考慮することが大切です。今回は写真2-4のように、連結部分の4マスに対し、三連はしご先端から上部支点までの出幅は3マスが限界と考え、4:3の比率で設定しました。

↑はしご連結部分詳細 下部

↑はしご連結部分詳細 上部


イ トグル結着(写真2-7トグル設定詳細)


かぎ付きはしごの最上段から三段目の横さんにトグルを結着する。結着方法は横さんとトグルに巻き結びをし、上段に余長処理を施す。

↑トグル設定詳細



ウ救助ロープ及び誘導ロープの設定

救助ロープはトグル結着部の横さん(写真2-7)に通した後、三連はしご最上段の裏横さんにカラビナを設定する。誘導ロープは救助ロープ同位置の裏横さんに直接結着する。

↑ 救助ロープ及び誘導ロープの設定全景)


この際の誘導ロープは前記4-⑵のデメリットを解消し、はしごの転倒防止等を図ることができる。なお、誘導ロープは後に活動障害となるので架てい時に容易に解除できる位置に結着する。


(↑ 救助ロープ及び誘導ロープの設定詳細)

 

⑶三連はしご起てい、伸てい、架てい

 


↑ はしご起てい状況


誘導ロープを活用し、はしごを起ていし架ていまで実施する。この際、誘導ロープを引きすぎてしまうと、三連はしごの掛け金を外してしまう等の恐れがあり、隊員間の連携が必要不可欠になります。

要救助者をバスケットストレッチャーに収容する。
必要に応じて、バスケットストレッチャーに誘導ロープを設定する。

⑸要救助者の救出


ア指揮者1名、担架保持員及びクロスバー保持員2名(兼務)、地上確保員1名を配置する。
イ指揮者の「救出始め。」の号令で、担架を上げるのと同時に確保員が救助ロープの余長を取り、確保し荷重をかけ、最終点検を行う。点検に異常が無ければ隊員2名はクロスバーを保持する。(写真2-11救出始め)

↑ 救出はじめ


ウ指揮者の「はしご離せ。」の号令で、クロスバーではしごを押し出すとともに、確保員と連携し
三連はしごを適当な位置まで離す。


エ三連はしごの安定状態を確認後、確保員はロープを緩め安静、安全に降下させて静かに担架を着地させ救出完了する。

↑救出中 上階状況

↑救出中 下部状況


 

 
 ■氏名
小川 哲平(おがわ てっぺい)
■所属
入間東部地区事務組合 西消防署 第2担当高度救助係
■出身地
埼玉県
■消防士拝命日
平成21年4月1日
■現職拝命日
平成24年10月1日
■趣味
映画鑑賞
■派遣等
レスキュー3ジャパン・テクニカルロープレスキューファーストレスポンダーコース修了

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