210307_VOICE#58_命を救う士(サムライ)として

 
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主張

月刊消防 2020/11/1, p55

「命を救う士(サムライ)として」

彦根市消防本部 消防士長 左近上 卓
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 あるきっかけで、玉川先生と連絡をとらせてもらうようになり、貴重な執筆のお話を頂きました。「好きに書いてください」と。(笑)自由テーマほど難しいものはありませんが、今回は私が座右の銘にしている「ピンチはチャンス」という言葉から学んだこと、そして救急救命士として自分が発信していきたいことをお話しさせていただきます。
 皆さんには座右の銘はありますか。私は、消防士になる前、幼い頃からサッカー一筋の生活を送っており、高校時代には全国大会で優勝するなど、なかなか経験することのできない嬉しい経験もしましたが、それよりも引退を考える程の大怪我を経験して学んだことが、今の自分にとって欠かせない人生の糧となっています。今まで当たり前にしてきたことができなくなる悔しさ、目標に向かってチャレンジすることすらできない悲しさ、心はどん底まで落ちていました。そんな時、母からかけられた「ピンチはチャンス」という言葉が、今の私の座右の銘となっています。
 ダメな時こそ自分を見つめ直し、新たに視野を広げるチャンス、捉え方次第で今まで以上に成長することができるのです。救急救命士の署内選考で落ちた時も、研修所での成績が芳しくなかった時も、いつもこの言葉を思い出し乗り越える活力にしてきました。この言葉があったからこそ、現実を素直に受け入れ、前向きに捉えられたことで、現在、救急救命士として活動できている自分がいると思います。消防はいろいろな面で悩むことも多いと思いますが、この学びから悩んでいる後輩たちに、「ピンチはチャンスやぞ」と、私が母から勇気をもらったように、声をかけてあげたいと思います。

 そして、私が発信していきたいことは、救急救命士の「魅力」です。アンパンマンのように誰よりも早く助けを求める人の所へ行き、処置や判断で救命に携わることができること、これが何よりも救急救命士の魅力です。近年は処置も拡大し、今まで以上に高度な判断や手技が求められるようになり、苦慮する機会が増えました。しかし、裏を返せば、プレホスピタルの重大さが世間に広く認知され、医師から任される処置や判断の範囲が広がったことで、救える命が増えたことも事実です。

 心肺停止から救命できたこと、救急搬送した少年から「僕も将来はお兄さんのような救急救命士になりたいな」と言われたこと。これらはどんな疲労も忘れさせる私の活力となり、この仕事の魅力だと感じました。また、救命の輪の第一走者である一般市民に救命講習等を通じて熱意を持って指導することで、救命に携われる人材を育成できることも忘れてはならない魅力の一つです。
 しかし、これらは救急救命士として当たり前のことかもしれません。皆さんは、ノブレス・オブリージュという考え方をご存知ですか?(調べてみてください)私は、この考え方をこの資格にあてはめて、仕事以外の場であっても率先して救命活動に携わることを全うしなければいけないと肝に銘じて毎日を過ごしています。

 ピンチはチャンス、救急救命士の魅力、いずれも熱い思いをなくしては語れません。この思いを文章にする貴重な機会をいただき、改めて熱い思いを呼び起こされました。この熱意のバトンを後輩たちにも繋いでいき、そして命を救う士(サムライ)として、私は一人でも多くの笑顔を守れるよう日々精進していきたいと思います。

名前:左近上卓(さこんじょうすぐる)
sakonjou.JPG
所属:彦根市消防本部消防署本署第1部
出身:滋賀県彦根市(ひこにゃんの町)
消防士拝命:平成22年
救命士合格:平成30年
趣味:サッカー、コーヒー

主張
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