月刊消防 2023/05/01, p61
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権威主義的な仕事のやり方をやめるだけで
どうやったら仕事に充実感が得られるか。消防士になってよかったって思ってくれるか。最近はこんなことばかり考えている。40歳くらいになれば、物の見方が180度変わってしまうというけれど、僕もそのようになってきたということなのか。
ふと、マグガレー著「企業の人間的側面」を手に取った。マグガレーは、マズローの欲求段階説をもとに、X理論とY理論を説明している。X理論とは、人は怠け者であり、管理者は独裁者として指示・管理すべきだという考え方だ。反対にY理論は、人は喜んでやりがいのある仕事を引き受け、達成感を感じたいし、未開発の力も備わっている。マネジャーは人を信頼するリーダーであるべき。という考え。マグガレーは、「良い会社」に変えるには、考え方をX理論からY理論に変えることが必要だと説明している。私は、もっともな考え方のような気もしたがどうも納得できなかった。現実に怠ける人もちゃんと存在するのだ。だから監視も必要ではないか。どうしたらマグガレーの言うように、Y理論のような環境を作れるのか・・と。
私の職場には、質問したらなんでも即答してくれる名物先輩がいる。その先輩にこのことを訪ねてみた。「それはな・・あれだ・・子育てと同じだ。」と、いつものようにぶっきらぼうに話し出す。”お前の子供が美味しそうにお菓子を食べている”この場面で親のお前は、「俺のお菓子を食べやがって。」とは思わないだろ?きっとニコニコしながらお菓子を食べる様子を伺っているに違いない。一方で子供はどうか。「このお菓子まずいんだよ。親のメンツもあるからニコニコした風を見せてやるか。」とはならない。お菓子をくれた親に感謝し、ハッピーな気持ちを感じていることだろう。つまり、どっちも嬉しい。つまりそのマズローが言いたいのは、このどっちも嬉しい状態を作れば良いと言うことだろ?自分も嬉しいし相手も嬉しい。なんなら嬉しさ2倍、3倍ということだ。お前は怠ける人がいるって言うけどさ。子供を管理とか監視とかありえないだろ。一緒に成長したいじゃん?笑。”
今回の質問にも先輩は即答してくれた。お菓子を通じて親と子の境界線が消え去り、同化して溶け合っている。このように組織も、「対立する考え方」から「お互いを支え合う考え方」に進化することができれば、個人と組織間の対立は消え、チームの利益が組織の利益になると言うことか。あなたがいるから僕が活きる。このように考えれば分かりやすいのではないか。僕がこの月刊消防の原稿を執筆するとき、編集者と二人で原稿を往復させる。より多くの人に雑誌が読まれることが、二人にとって大事なことだからだ。僕が編集者に、「執筆は僕の仕事だから干渉しないで!」「売れるように編集するのがあなたの仕事でしょ?」と言ったら、支え合いは何も生まれない。まずはコミュニケーションを円滑にし、編集者のことを信頼することだ。編集者がいないと僕の原稿が雑誌に載ることはない。編集者だって、執筆する僕がいないと仕事が進まない。僕がいるからあなたが活きる。あなたがいるから僕が活きる。
権威主義的な仕事のやり方をやめる。たったこれだけのことで、職場は働きやすくなるようである。
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