雑誌 健康教室 2023年4月号(2023/03/10発行号)p58-9
応急処置アップデート Q and A
『剥離骨折の見分け方』
目次
Q
走っていて転倒し、足首を捻って保健室に来室。自動運動・他動運動も全方向問題なく、圧痛や腫れもないのですが、足首のあたりがなんとなく痛むとのことで、冷却して様子をみました。下校後、保護者の判断で医療機関を受診したところ、剥離骨折でした。同じようなことが2件あり、落ち込みました。
1月号で骨折の見分け方をみましたが、ぜひ、剥離骨折の症状・診断・見分け方についても知りたいです。
A
剥離骨折を起こしやすい場所を覚えておき、その可能性を本人や保護者に伝えるだけで十分です。
解説
骨折については、健康教室2023年1月号で整形外科の先生が「レントゲンを撮らないとわからない」と述べられています。保健室で受傷直後に剥離骨折を発見するのは至難の技です。
(1)剥離骨折とは
筋肉・靭帯・腱が付着している部分の骨が付着物と一緒に剥がれてしまう骨折です(001)。医学用語としては裂離骨折と言われますが、一般的には剥離骨折と呼ばれます。好発部位は筋肉もしくは腱が骨に付着している場所としては踵・骨盤・膝関節・肘関節・指の小関節で、靭帯が付着している場所としては足関節があります(002)。指の場合は突き指と勘違いされて放置されることもあります。
Qで挙げられているのは、おそらく足関節外側側副靭帯(踵腓靭帯)の停止部での骨折でしょう(003)。子どもの骨は柔らかいため、靭帯が切れるのではなく骨が剥がれるものです。
(2)症状
部位によって異なり、痛みの程度も異なります。骨盤の剥離骨折では激痛となりますが、足関節では質問のようにほとんど痛くないこともあります。また骨本体には異常はないので、典型的な骨折で見られる介達痛も見られません。
打撲と異なり、痛みや腫れは長引きます。長引く痛みにより剥離骨折と診断されることが多くあります。
(3)疑うポイント(004)
・長引く痛みと腫れ
打撲や捻挫と異なり、1週間経っても痛みや腫れが引きません。
・好発部位
小児の足関節外側は好発部位です。ですが症状は軽い上に捻挫と共通していますので、靭帯損傷と区別は難しいでしょう。ですので、受傷直後に剥離骨折を疑うためには、好発部位を知っていることが必要です。
似たような骨折に疲労骨折があります。これは骨の一箇所に過度な負担が長時間かかった結果骨が折れるものです。こちらは行うスポーツによって好発部位は決まってきますので、指導者は覚えておくべきでしょう。
(4)診断と治療
病院では単純レントゲン撮影で骨折がないか調べます。骨のズレが小さい場合には単純撮影では把握困難のため、エコー検査やCT検査を追加して確認します。
治療は多くの場合は安静と固定で治癒しますが、骨が大きくずれている場合や早期の回復を望む場合には手術で骨片を固定します。
こんな事例がありました
中学生男子が、昼休みにバスケットをしていて、ボールが左手中指に強打し、突き指をしたとして保健室に来室。保冷材を渡ししばらく冷やしておくことと、次の授業終了後に再度様子を見せに来るように指導。再度様子を見た際には、痛み・腫れが、強くはないもののあることから、骨への影響も考えました。
学校ではよくありますが、救急処置の際には、「骨にも何らかの影響あるかも」くらいの判断しかしておらず、生徒にヒビとかも骨折なんだよ、と説明して処置しています。剥離骨折は、子どもも聞いたことがある場合が多いので、「ポッキリ折れてないけど剥離骨折って言うのだよ」と説明します。
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